第8話

ピロピロ、とスマホの着信音で目が覚めた。


夕食後、ベッドでごろごろするのが日課な私は

そのまま寝落ちしてしまう事が多々あって。


「んー・・・」


今日も例外ではなく、

つけっぱなしの電気が眩しくて目が開けない。


「・・あら。」


音だけを頼りにスマホを探り当てて画面を見れば、

そこに表示されていたのはさっちゃん、の文字で。


さっちゃんから電話なんて珍しい。

どうかしたのかな。


『もしもーし。』

『・・もしかして寝てた?』

『違うよ断じて寝るつもりはなかったんだよ、ただなんか自然に目がね、閉じてきてね、』

『はいはい寝落ちてたんでしょ。』

『・・その通りです。』

『課題は?』

『・・やったよ、漢字練習だよね。』

『そんな課題出てないわよ、小学生か。』


もちろんやっているわけがない。


ちらりと時計を見れば現在は20時30分過ぎ。

よかったよかった、今日は傷が浅い。

電話かけてくれてありがとうさっちゃん。


まだ外にいるのだろうか、さっちゃんの声には時々風の音が混じって。



・・・なんだろう。なんか。


『・・さっちゃん。』

『なに?』

『なんかあった?』


私の問いに電話の向こうでさっちゃんが黙る。


なんかあった、というのは電話をかけてきた理由もそうだけど、

心なしかさっちゃんの声色がいつもと違う感じがして。


少し、震えているような。


『・・結依、お願いがあるの。』


少しためらってから、

声のトーンを下げてそう言ったさっちゃん。


『なに?』

『・・明日全部話すからさ、とりあえずしばらく電話つないでてくれない?』

『全然いいよそんなの。』


そう言ったさっちゃんはやはり少し変で。


心配になるけど、明日話すと言ってくれてるんだから

今無理に聞くこともないだろう。


『ありがとう。』

『可愛い可愛いさっちゃんのお願いなら結依ちゃん何でも聞いちゃうよふふふ。』

『・・きも。』

『ガチのトーンで言うのやめてくれない?』


ははっ、と電話越しにさっちゃんが笑う。


それから数十分電話を続け、その後お風呂に入った私は

課題をやることなく(おい)寝てしまうのであった。

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