第11話 いざっ!魔物退治、謎の集団

 何やかんやあって、みんなが落ち着きを取り戻したところで再び魔物退治をするために森の中を進んでいたのだ。


 実は、今に至る間に二足歩行の犬のような魔物『コボルト』8匹と額に一角を持つウサギの魔物『アルミラージ』10匹の群れに遭遇しそれぞれ倒したのだった。


 どっちとも素早さがあるため、倒すのにはとても苦労を



 ―――しなかった。



 なぜかというと、カレンとクレアさんと戦ったときのをしたからだ。


 氷魔法を使えるレフィーナさんとセリカさんが主体となってこの作戦を実行し簡単に魔物退治をすることができたのだ。


 そんあことがあって、今の僕たちのパーティーは調子に乗っている……一部いちぶだけ。


「魔物退治って、すごく怖いのかなぁって思ってたんだけど意外と簡単なんだね!」

「そ、そうだな、思ったよりも簡単だな」

「あ、あぁ、順調に退治できている」


 キャロルさんの発言にコリー君とダニー君が同調する。すると、アルバ君が「はぁ…」と困ったように息を漏らす。


「お前たち、この先も安全だと油断していると危険な目に遭うぞ。気を引き締めろ」

「「「はい……」」」


 アルバ君の説教に三人が反省する。そんな光景を見ていた僕たちは微笑した。


 そうして魔物を探しながら森の中を歩いていると、奥の方から「……たす………れ……」とはっきりと聞こえないが、そんな声が聞こえて来た。



「行くぞっ!お前たち!」



 アルバ君がすぐに、その声に反応して先に走り出した。僕たちもアルバ君を追いかけるように後を追う。


「助けてくれっ!誰かっ!助けてくれっ!」


 僕たちが声のする方へ進むと、馬車を引いている行商人のおじさんが見えた。


「どうしたんですかっ!」


 行商人のおじさんがアルバ君の大声に気づき、こちらに来る。


「あぁ、助けてくれっ!黒装束の変なやつらに、追いかけられてるんだっ!助けてくれっ!!」


 涙目の行商人のおじさんが焦りながら、僕たちに状況を伝えてくれた。


「落ち着いて下さい。この先にいる魔物は俺たちが倒したので、そのまま進んでください。さぁ、早く!」

「わ、わかった、ありがとう君たち。はっ!」


 行商人のおじさんが馬車を引き、ここから去っていく。


 僕たちがそれを見ていると、こちらに向かって走ってくる足音が複数聞こえて来た。


「来るぞっ。みんな、備えろ」


 アルバ君がそう言うと、僕は剣を抜き、他のみんなも応戦の準備をした。


 そしてすぐに、黒装束を着た8人が僕たちの前に現れ、一斉に立ち止まった。


 何なんだ、この人たちは?


 身に付けている黒装束は、顔も身体も隠している。武器を持っているのか性別もわからない。


 みんなも僕と同様で、この人たちは何なんだという顔をしていた。


「お前たちは何者なんだ。なぜ、行商人を追いかけていた」

「……」


 アルバ君の質問に、黒装束の人たちは答えず無言だった。


 しかし突然、8人のうち、5人の黒装束が武器を持ち、僕たちを襲って来た。


「コリーっ!ダリ―っ!」

「「任せろー!!」」


 アルバ君の大きな指示が森中に響き渡る。


 前にいるコリー君とダニー君が一斉に振りかかる刃を抑える。


 しかし、5人のうち3人だけが、コリー君とダニー君に攻撃をした。



 ―――一斉いっせいに斬りかかったのはフェイントだったんだ。



 フェイントに気づいた僕とセリカさんが一人ずつ相手を止めようとする。


「はぁあっ!!」

「せいっ」


 僕は攻撃を避けて剣のポメルで相手の首を叩き気絶させる。


 一方、セリカさんは風魔法と槍を組み合わせた攻撃で相手を吹き飛ばすが、受け身を取られてしまう。


「強いな、ムシキくんは」

「恩恵のおかげだよ。さぁ、コリー君とダニー君を助けよう」


 僕とセリカさんがコリー君とダニー君に加勢する。


「そいっ」

「はぁあっ!!」


 コリー君とダニー君が抑えている黒装束3人に攻撃するが避けられる。


 さらに、黒装束3人が避けた先のところにセリカさんが吹き飛ばしたもう一人の黒装束がそこへ加わった。


「て、手ごわいな」

「あ、あぁ、何とか耐えたが、すごい攻撃だった」


 コリー君とダニー君が敵に称賛を送る。


「私のウインドスピアも受け流していたからね」

「あぁ、セリカの攻撃が通用しないとは……相当強いぞ」


 コリー君たちと同様、アベル君とセリカさんも称賛を送る。


「ど、どうしよ!私たち……!」

「落ち着いて!キャロルちゃん」


 敵の強さに慌てるキャロルさんを落ち着かせるエルナさん。


 ……エルナさんの大きい声って、初めて聞いた。


「ムシキさん……」

「うん、強いね。彼ら」


 黒装束たちの強さに不安になるレフィーナさん。


 そして、彼らの強さを肯定している僕。


 僕もみんなと同様に強い集団だと感じた。素早いし、攻撃も強い、何より訓練された統一感のある動きだ。


 だけど、決して勝てない相手ではない、この5人の黒装束には確実に勝てる。



 ……しかし問題は、後ろで僕たちの戦いを傍観している3人の黒装束…いや、ややこしいので、だ。



 先ほどまで戦っていた黒装束よりも、後ろにいる真・黒装束の方が


 ……何となく、雰囲気が、僕の本能がそう訴えている。


 この状況を打開するためには、黒装束のことをみんなに任せて、真・黒装束のことを僕が何とかすれば勝機が見えてくるかもしれない。


「みんな!奥にいる3人のことは僕が何とかするから!後はお願い!」


 僕は剣を鞘に納め、真・黒装束のところへ向かう。


「ムシキさん!」

「大丈夫!必ず戻ってくるから!」


 少しだけ後ろを振り返り、笑顔で僕は答える。


 それより今は、あの真・黒装束を何とかしないと。


 僕は真・黒装束の目の前に一足で間合いを詰め、そのうち二人を掴み遠くに投げる。



「仲間がどっかに行っちゃたよ?さぁ一緒に……探そ?」



 僕は貼り付けた笑顔で、残った真・黒装束にそう言って投げ放った方向に向かう。


 向かっている途中、僕は後ろを見ると、真・黒装束がいるか確認する。


 ……うん、よかった。ちゃんと付いてきている。


 何とか分断に成功した。


 一先ずの目標は達成したし、真・黒装束が【神雷アイギス】を使う必要があるほどの実力者だとしても、ここからならバレる可能性は低い安心して使える。


 そう考えながら向かっていると、僕が投げた二人の真・黒装束が女の子座りをしながら頬に両手を当て、としているようだった。


 えっ、どういうこと?


 いやいや、それよりもこの状況を分析しないと。


 あの二人は女の子座りをしている、頬に手を当てている。



 そんな仕草をするのは―――ただ一つ。



「女の子だっ!!」

「正解です」

「うわぁああ!!」


 僕が考えに考え抜いた推理を言うと突然、耳元で囁かれた。僕は腰を抜かし後ろへ倒れる。


「ふふ…可愛らしいお方です」


 そう呟き倒れている僕の横を通り過ぎる真・黒装束。


 その人は未だうっとりとしている二人のところへ歩いて行った。


 すると、真・黒装束が二人の頭に拳骨で殴った。


 殴られた二人は、痛そうに殴られてところを手でさすっている。


 そんな二人に、殴った真・黒装束が耳元で何かを言っているようだ。



 僕を倒すための作戦会議かな。



 それが終わると、女の子座りをしていた二人が立ち上がり三人が僕に体を向ける。


 そして、真・黒装束は剣を持ったので僕も剣を構える。


「さぁ、いつでもいいよ」

「「「……」」」



 無視された。



 さっきは話してくれたのに……ちょっぴり……悲しい…………。


 まぁたしかに、剣は話すためじゃない、戦うためにある。


 そのことを再確認していると、一斉に斬りかかってくる。


「ほいっ」


 三人が真上から振り下ろした剣を僕は剣を横にして防ぐ。


 三人だと厳しいなぁ、耐えられるかなぁと考えていると……。



「「「はぁ…はぁ…」」」



 三人のが聞こえる。


 どういうことだ?戦いは始まったばかりなのに。


 そう思っていると、三人がさらに体重を乗せて来た。



「「「はぁ……!はぁ……!」」」



 体重を乗せて来たせいで、余計に荒い息遣いが聞こえる。


 ……というよりも、すでに顔全体に吐息がかかっている。


 黒装束で顔を覆っているのに、どんな呼吸をしているのだろうこの人たちは。


 そんなことを思っていると、さらに体重を乗せて来た。


「うぐぐぐっ」


 さすがに耐えられなくなってきた。


 それよりも、物凄く力が強くなっている。どこからそんな力が……。


 そう思った瞬間――答えが分かった。



「「「!!」」」



 そう、この三人が異常に強くなったのには……。



「僕のせいかぁあああ!!」



 ―――僕と顔を近づけたからである。

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