初恋に身を焦がす ~おまえの夫は私の妻を愛していると王様から告げられ、夫婦交換を命じられました~

真白燈

1、嫉妬深い妻

 ヴェロニカは嫉妬深い。


「あなた。今日茶会に出席したそうね?」


 帰ってきた夫を問い詰めれば、最初の頃は狼狽えていた彼も今や落ち着いた様子で

「よくわかったな」と答えた。


「陛下に誘われたんだ。断り切れずにな……って、うわっ」


 つかつかと近寄り、襟を掴んで強引に匂いを嗅ぐ。香水の匂いがして、やっぱりとヴェロニカは顔を顰めた。


「服も脱いで」

「何もしていない」

「だめ。脱いで」


 自分の目で見ねば安心できなかった。夫はやれやれとため息をつき、「部屋に行こう」と促した。本当は今この場でひん剥きたかったが、夫の裸を使用人の目に晒すのも嫌だったので渋々我慢する。


「早く行きましょ」


 逃げないように夫の腕に手をかけ連行するヴェロニカに「はいはい」と彼も大人しく連行される。疑われているというのに怒りもせず、かといって困惑した様子も見せず、慣れた様子である。


 主人に仕えるメイドや従僕たちも、夫妻の様子を気にかける素振りは一切見せない。


 彼や他の使用人たちにとって、ヴェロニカの振る舞いはもはや何気ない日常の一場面として認識されていた。


「本当に、俺の奥方は嫉妬深い」


 否定はしない。


 ヴェロニカは夫を愛している。もし夫が別の女と関係を持ったと知れば、その女を殺してやるくらいには深く、激しく愛している。

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