軍人の矜持〜休暇中に飲んだくれていると敵国の将軍に遭遇した話〜
白雲八鈴
第1話 戦場の死
血と砂埃が混じる匂いに、金属がぶつかる甲高い音。鼓舞するように発する声が響いている。
ここは戦場だ。この戦いで勝てば戦争は終わる。世界は平和を取り戻す。皆がその思いでこの戦いに挑んだ。
ただ、私だけが後悔していた。なぜ、私はここにいるのだろうと。
「ゴホッ」
口からせり上がった物を吐き出す。赤い血だ。地面に落ちていく血を追っていくと、腹に刺さった剣に目がいってしまう。
「あんた、やっぱり良い女だな」
私の腹に剣を突き刺した相手からの言葉だ。その人物に視線を向ける。
全身フルプレートアーマーで身を包んでいるが、右胸からは剣が生えており、兜は半分破壊され、銀髪と私を見る金の目が顕わになっていた。剣に右胸を突き刺されても堂々と立つ姿は正に戦神と言っていいだろう。
「お前もいい男だよ」
私はそう言いながら短剣を抜き、とどめを刺すべく、戦神と恐れられた偉丈夫に向かっていく。私はここで死を迎えるだろう。
心残りがあるとすれば……
だが、戦神と剣を交えて死んでいくのも悪くない。私が見た最後の光景は笑いながら死んでいく男の顔だった。
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