第4話「覚醒」

「やめろ!ミランダにも、アリスにも手を出すな!お前は僕を殺せれば、満足なんだろ!?」

「やめて!そんなのソラらしくない!」

 真っ青になって呼びかけるアリス。

「そうよ!そんなことをしたら。私、一生あのことを話さないわよっっ!?」


 デリーズ達を睨むミランダ。

 それを聞いてビクッと肩を震わせ、こめかみに青筋を走らせるデリーズ。

「一生だと?そんな事はさせない。貴様が話さなければ、小僧を今すぐ血祭りにあげるだけだ!!」


 ソラの喉元にナイフを当てた。

「くそっ、バカヤロー!やるなら、やれよ!」

 ソラは震えながら言う。


 アリスも顔面蒼白になり、ブルブルと震えていた。

「やめて!ソラは関係ないじゃないっ。何であんたみたいな賊に殺されなければ、ならないの!?」

 ドクン、ドクン!


 アリスの胸に組み込まれている。生命回路が、早鐘を打つ。

 ――嫌だ!ソラが、アタシの前からいなくなるなんて、絶対に嫌だ!!!――

 その刹那、アリスの身体が光り輝いた。鳥かごが、こっぱみじんに吹き飛ぶ。


 それに、驚愕するソラ、ミランダ。デリーズ達。

「なっ、何だ!?あの非力なAIがやったのか?ちくしょう。だから、なんだって言うんだ!このまま、目障りな小僧を殺してやる!」

 デリーズは、ソラを刺し殺そうとした。

「駄目――っ!!」


 アリスは、決死の覚悟でデリーズの前に立ちふさがった。

「「アリス――!!」」

 真っ青になるソラとミランダ。だが。

 ガチンッ!

 金属音が鳴り響き、瞬く間にアリスは、白銀に輝く片手銃に変形した。

 何と、ナイフが通らずにソラの目の前で止まっている。


『うそ?アタシ変形してる』

「アリスが、銃に変形した!?」


 ソラも驚愕している。


 ――これはなに?でも、これならソラの力になれる!――

『よーし。ソラ!アタシを使って、こいつと戦うのよ』

「でも、僕銃が苦手だし!」

 ソラが怖気づいている。


『そんなことを言ってる、場合なの?!あんたは、アタシがサポートするわ。さあ、早くっ!』

「分かった!」


 ソラは、アリスが変形した片手銃。“シルバー・ハート”を構えた。

 銃という武器は、重さがあるのにこれはまるで、羽根のように重さがなく。軽々と持てる。


「軽い。これなら僕にも、扱えるかもしれない」

 ミランダは、今のアリスの姿を見ながら、母の言葉を思い出していた。

(フェアリー・ハートを、組み込まれているAIが、この世界にはいるわ。)

「もしかして……」

 のどまで出かかったが、あえて言葉を飲み込んだ。


 ソラはまず、ミランダを羽交い絞めにしている。子分に素早く足払いを掛けて、ミランダを救った。

「ありがとう!ソラ、アリス」

 ミランダは希望を込めて、ソラとアリスに礼を伝えた。

「ミランダ、どこかに隠れているんだ!」

「ええ!」

 ミランダは、急いで物陰に隠れた。


 ソラはミランダの所に手下が行かないように全て、体術で倒してしまった。


「くそっ、小僧!」

「マイキー来い!!」

「へいっ、デリーズ賊長!!」


 マイキーは、瞬く間に黒光りした銃に変形した。

「ハッハーッ!貴様を今日こそ、仕留めてやる!!」

 デリーズは、挑発的に笑い銃を構えた。

 ソラも銃を構えたが、人の命を奪う未知の武器に震えが止まらない。


 アリスは、そんなソラを見て自分が支えなければと、強く感じた。

 アリスの記憶回路に記憶されていた。ガンマンの能力が、アリスの中に流れて来る。

 それは、アリスを作ったソラの父親ゼルマンが自分の死期を悟って、後のソラのために遺したものだった。

 ――ソラ、俺がいなくなっても強く、育ってくれ。アリス、ソラを頼むぞ――


 アリスの回路にゼルマンの声と、ソラへの深い愛情が流れて来る。

「ゼルマン博士……!」

 アリスの瞳から涙が溢れた。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ◆人物紹介◆

 ゼルマン=クロックス

 ソラの父親、偉大なガンマンでアリスを作った博士だったが。

 盗賊に絡まれて殺された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る