四十八話 【黄金の天秤の力】

 アイアンゴーレムのスピードはストーンゴーレムの比じゃない。

 もちろん体も強固になっている為、攻撃力も上がっている。

 パワーじゃ部が悪い。 スピードも俺と同等……、なら、武器のリーチを使って……。


 金属と金属がぶつかる音と火花が散る。


「硬い!」


 剣が弾かれ殴り飛ばされる。

 転がりながら態勢を立て直し、立ち上がるも、アイアンゴーレムの追撃に防御するのが精一杯だ。

 そして俺とアイアンゴーレムの攻防がしばらく続く。

 俺がしぶといからか、ガスパはイライラしているようだ。


「早く倒さんか! 貴様も早く倒されろ!」


 そんな野次に三人はまたガスパに物を投げて文句言ってる見たいだな。


 しばらくアイアンゴーレムと戦っていると、攻撃のリズムが見えて来た。

 壁や地面を殴った時、一瞬止まるのだ。

 あれを倒すにはそこを狙うしかない。


 そこで俺はアイアンゴーレムの攻撃を誘う。

 アイアンゴーレムの前で態勢を低くし、左手のストレートを躱す。 すかさず俺の顔めがけて攻撃してくる右手をギリギリで躱し、地面に当たると一瞬動きが止まった。


「ここだっ!」


 俺はアイアンゴーレムの顔に剣を突き立て、力一杯押し込み頭部を貫いた。

 そしてアイアンゴーレムは崩れて行く。


「んぎぎぎ……、……いいだろう……、ワシもこの先は見た事が無いが、見せてやろうではないか!」


 おいおい、まだ先があるのかよ! もう俺、魔力も殆ど尽きかけだぞ!


「さあ! 黄金の天秤よ!! 大金庫のジルを全て持って行くがいい!!」


 黄金の天秤はガスパのポケットからジルを吸い尽くしたが、ゴーレムは動かない。


「な、なぜじゃ! 何故動かん!」


 ガスパを倒すならいまだ!

 俺はガスパに剣を振るうが、ガスパは逃げ回り始めた。


「ひ! ひぃ〜〜! 天秤よ! 奴を倒せるだけのワシの財産を好きなだけ持っていけーー!!」


 その言葉に黄金の天秤が反応し、ガスパが身につけている服、宝石全て皿に吸い込み、俺の剣は僅かにガスパに届かず、バリアに塞がれた。

 バリアが張られたって事は……、ゴーレムが復活したか!?

 砕けたゴーレムの場所に竜巻が発生している。


「そ、それはだめじゃーー!!」


 黄金の天秤はガスパからまだ何かを吸い取っているようだ。


「そ、それは奴隷供の! そっちは権利の! ワシの財産がああああ〜〜!!」


 ガスパから殆ど吸い取ったようで、竜巻がおさまり、砂塵の中からゴーレムの姿が現れ始めた。

 その姿は今までとまるで違う。

 一つ目で口があり、腕は二本、全身には棘がある。 一番違うのは下半身に足が無く蛇のようになっている。

 そしてデカい!! 十メートルはあるだろう。


「ひょっ……ひょひょ……、よい……、もうよい! 奴を殺せ! 奴隷なぞいなくなっても、勝てばそこの娘がワシの物となるのじゃ! 体で稼がせれば直ぐに元など取れる! さあ! ゴーレムよ! ワシのために奴を殺すのじゃあああーー!!」


 ゴーレムは口を開くと、口から光線を飛ばして来た。

 光線を躱して懐に入り剣で切る。

 刀身に感じるゴーレムの体は、さっきのアイアンゴーレムより硬い。

 まるでリーナの大盾だ!

 こいつもしかしてアイアンからミスリルに変わったのか!?


 ゴーレムは下半身が蛇のようにウネウネと動いて攻撃してくる為に、攻撃も守りもやりづらい。

 何度か吹き飛ばされ、離れれば光線を飛ばし、背中に回れば棘付きの尻尾で攻撃してくるなんとも戦いづらい。


 尻尾をぐるっと回して攻撃してきた時、飛んで躱すが尻尾に付いている棘が飛び出し、俺の体を数箇所突き刺して行く。

 その棘一本一本の太さはエイルの腕程ある。

 腕をクロスにして顔や体には刺さっていない。

 着地し、棘を抜こうと考えていたら、光線が俺の腹に大穴を開けて貫いていった……。


「ケンジ!!」

「ケンジさん!!」

「ご主人様!!」


 意識が薄れて行く中で皆んなの声が聞こえる……。

 そうだ……、俺は……、負けられない……、負けちゃダメなんだ…………。

 俺は意識を失った……。

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