三十九話 【暗殺者】
アームダレスのお姫様を探す為、大富豪のお屋敷にいるかも知れないとの事で、入り込む為の魔生獣討伐は失敗したかと思ったが、何故か招待状を貰ったので武術大会に参加する名目でお屋敷に侵入する事になった。
「このまま真っ直ぐ行けば大富豪さんのお屋敷ですね」
ルルアに案内されながら街道を進む。
「大富豪かあ……、毎日ご馳走なんだろうなあ……」
いいなあとか言いながらエイルは歩いている。
「まったく、エイルさんは食べる事ばかりですね……、ルルアを見習って下さい」
レアはエイルがお腹を抑えているのを見て、ため息をついている。
俺は武術大会の事で頭がいっぱいだ。
帝都の宿で皆んなと相談した結果、お屋敷でお姫様と侍女を助ければ良いので、武術大会で勝つ必要は無い。
二人を見つけ出して、大会からこっそり抜け出してアームダレスに戻れば依頼は完了だ。
「ここだよな?」
さっきから壁がずっと続いているが、やっと入口の門が見えて来た。
門には門番が二人立っている。
「なんだ貴様らは?」
「ガスパ様のお屋敷になんの様だ?」
門の前に到着した途端に門番に呼び止められてしまった。
「招待されたので来ました」
「招待だと?」
「お前らがか?」
二人の門番は俺と後ろにいる三人を見て笑い出した。
「はっはっは! こんな子供と女連れで招待されただと?」
「ありえんだろ? 何か証拠はあるのか?」
こいつらいつまで笑ってんだ? 失礼だろ!?
「これです」
俺は招待状を門番に見せる。
「どれどれ…………、これは…………」
「し、失礼しました。 どうぞ中へ」
招待状を見せた途端、態度が一変した。
「ひっろーーい!!」
「お屋敷も大きいです!」
「なかなか良い住まいですが、部下の教育はなっていない様ですね」
エイルは門番に「ベーっ!」って舌を出して中に入ると、三人はそれぞれの感想を述べている。
俺もちょっとこの広さは憧れる。
そして門のから屋敷までは専用の竜車で移動とか、どんだけだよ。
竜車に乗り、屋敷が近づいてくるとその大きさが見える。
この家は宮殿かなにかか?
三人も空いた口が塞がらないようだ。
こんなデカいとは思ってなかったからな。
竜車が屋敷の入口に到着すると、執事服を身に纏い、片眼鏡と言う出立ち。いかにもな執事が出迎えてくれる。
「ようこそおいで下さいました。 どうぞこちらに」
そして案内で歩く姿も隙がない。
この人デキるな。
「こちらの部屋をお使い下さいませ」
俺と三人は別々で隣同士の部屋に案内される。
「大会までは後三日ございます。 それまでは部屋でお待ち下さいませ。 外に出るのも自由ですが、大会開催時にいなければ失格となりますのでご注意を」
「その大会はどこでやるんですか?」
「それは当日ご案内致します」
そして執事は軽く挨拶するとスッといなくなるように何処かに行ってしまった。
部屋の中は広々としていて、とても一人で過ごすサイズではない。
ベッドは豪華だし、風呂、トイレ付き。
豪華なホテルのようだ。
隣の部屋からエイルとルルアのはしゃぐ声が聞こえてくる。
隣りは楽しそうだな。
ちょっと顔出してみるか。 部屋は自由に出れるみたいだからな。
自分の部屋を出て隣りの部屋の扉を開けようとするが開かない。
何度もガチャガチャとするが開かない。
「エイル! レア! ルルア!」
扉越しに声をかけると中からも声が聞こえる。
「ケンジ!」
「ケンジさん!」
「ご主人様!」
「皆んな大丈夫か!?」
「扉が開かないー!」
中からも扉のノブをガチャガチャとやっているようだが、やはり開かないようだ。
「申し訳ございません。 選手以外の方は大会まで部屋での待機をお願いしております」
執事さんがいつの間にか立っている。
「そんなの聞いていないぞ!」
「これも決まりの為、申し訳ございません。 ですが、不自由は無いかと存じます。 お食事もお部屋まで運ばせて頂きますので」
不自由が無いなら少しは安心だが、大会の参加選手を逃がさない為なんだろうな。
「皆んな、大会が始まるまで我慢しててくれ」
「私だけでもご主人様の所に行けませんか!?」
「申し訳ございません。 三日程、我慢してくださいませ」
「…………わかりました。 我儘言ってご主人様にご迷惑はかけられません」
レアは渋々納得してくれたようだ。
夜の食事はかなり豪華な食事だった。
隣の部屋からはエイルの歓喜の声が響いていた……。
エイル達の部屋にどうやって食事届けたのだろか?
食事も終わり広すぎるベッドで大の字になる。
ふかふかだあ……。
今日はゆっくり眠れそう。
と、瞼を閉じれば窓が開き、風と共に誰かが入って来た。
「やっと見つけた……」
「誰だ!?」
ベッドから起き上がり、侵入者を確認する。
月夜の明かりで見えた姿は、この大富豪の武術大会への参加をする為の手紙を渡して来た小柄の黒いローブを着た人だ。
ローブのフードで隠れた顔を出してくると、月夜に照らされる青く長い髪が風に揺れている。
黒い眼帯をして黒いマスクをしているので、顔はよくわからないが、女性……?
「君はだれ?」
「…………私は……
「何しに俺の部屋に?」
「…………殺しに?」
俺に聞かれても……。
「……違った、誘拐しにだった……」
「誘拐って……、誰の差し金だ?」
「それは言えない……」
「ならここで戦うか?」
「……ここじゃ無い……」
「ならどうする?」
「……大会で私が勝ったら一緒に来る……」
あれか、大会で優勝したらってやつか?
でもあれ俺、関係なく無い?
「……今日はそれだけ……」
そう言うと風のように窓からいなくなった……。
どう言う事なんだ? 俺に何か用事でもあるのか? 人造人間ってバレたとか? 何処かの研究機関が探してるとか? そんな訳無いか。
考えながら窓を閉め、鍵の確認もする。
ベッドに戻るとまた窓が開き、さっきの小柄な女性のアンが入って来た。
「……言い忘れてた……、大会から逃げたら即殺すから……」
そして直ぐにいなくなる。
窓に鍵かけた筈なんだけど……。
それに逃げたら殺すって……物騒だな。
大会にはあの
この武術大会色々めんどくさくなりそうな予感がするな……。
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