十八話 【アーティファクト】

 訓練場で【ヴァルスケルハイト】の【シャッテ】と名乗る少年が【魔導獣】のアーマーサーペントを召喚し、襲ってきた。

 なんとかアーマーサーペントを撃退した所、シャッテが機械仕掛けの新たな敵が空中から舞い降りた。


「なんだあれは!」

 鳥のように翼を広げ、空中に止まっている。

 羽ばたきもしていないのにどうやって空中に浮いてるんだ?


「ワイバーンか!?」

 ホンガンさんが両手剣を身構える。

「この子はね、僕のしもべ魔導機アーティファクト】の【サラマンダー】さ」

「アーティファクト!?」

 この機械仕掛けの飛竜ワイバーンのことか。

 シャッテはサラマンダーの背に乗り、問いかけて来る。

「もういいだろ。 その獣人を差し出せば怪我しないですむよ」

「ふざけるな!」

「そうだろうね。 でもその方が楽しめるから良かったよ」

 シャッテはそう言うとサラマンダーを支持を出す。

 サラマンダーの一つ目が光り、爪を立て急降下してくる。

 躱しざまに剣を振るい足首に当てるが弾かれる。


「精霊よ、幻想をいだけ」

 マドルさんが精霊術で霧を出し、霧の中から矢を放つ。

「無駄だよ」

 サラマンダーの目が光り、口が光り出す。

 その口から赤い一閃の光りが吐き出され訓練場を裂いた。

 その熱線の跡は溶け、まだ熱を帯びている。


「皆んな! 大丈夫か!?」

 ロイさんが叫ぶ。

「大丈夫です!」

「しかし困りましたね。 僕の矢や精霊術は効果無さそうです」

 相手は飛んでいる為に、空中に攻撃出来るのがマドルさんだけだ。


「ふっ!」

 早い動きでロイさんがサラマンダーめがけて飛び上がり、腹を剣で切る。

 だが、やはりその守備力に弾かれてしまう。

「ざ〜んねん。 ここまで飛び上がったのには驚いたけど、そんな攻撃じゃこのサラマンダーに傷はつけられないよ」

 サラマンダーの胸の部分が開き、小さな玉が飛び、玉が地面に当たると爆発が起こる。


 爆弾も装備してるのかよ!

 もうもうと煙の中、なんとか皆んな耐え切ったようだが、エイルは爆風で吹っ飛ばされてしまったようだ。

「エイル!」

「うっ……」

「良かった、息はある」

 気を失っただけだ。


 サラマンダーはレアめがけて足を広げ掴みかかろうと襲いかかる。

 皇子もレアを守ろうとするが、サラマンダーの爪で剣は砕かれ吹っ飛ばされた。


「皇子!」

 ロイさんは駆け寄り、皇子をサラマンダーの攻撃から守るが、サラマンダーの口に光が集まる。

 熱線が口から放出され、地面と石の壁はドロドロに溶け、間一髪ホンガンさんが二人を助ける。

「お二人共大丈夫ですか? ……ぐっ!」

「助かったよホンガン……お前、足を!?」

「ちょっと捻っただけです。 まだやれます」

「無茶するな! くそっ!」

 サラマンダーは飛び上がり、皇子目指して滑空してくる。

「うおおおおお!!」

 ホンガンさんは皇子とロイさんの前に立ちはだかり、サラマンダーの爪が腹を貫いた。


「ぐっ……はっ……!!」

 ホンガンさんは口からも血を流し、その場に崩れ落ちる。

「ホンガン!」

 ロイさんがホンガンさんの前に立ち、サラマンダーに立ち向かう。


「あーはっは! 無駄だよ!」

「それはどうですかね」

 マドルさんがサラマンダーでは無く、シャッテを直接狙って矢を放つ。

 その矢は風を纏い、スピードと威力を増してシャッテに飛んで行く。

 だが、その矢はサラマンダーの風により弾かれてしまった。


「僕を狙うのはやめた方が良いよ。 君たちなんかより遥かに強いんだから。 僕が手を出したらあっさり終わっちゃうよ」

 シャッテはサラマンダーの背に乗り笑っている。


 そして再度、サラマンダーの熱線が皇子、ロイ、ホンガンの三人を襲う。


「くそおおおお!!」

 俺は剣でサラマンダーの熱線を受け止めるが、その威力に押されてしまう。

 このまま押されたら防ぎきれない……。

「うおおおおお!!」

 魔導法術機ガルファーを起動させ、火の力で熱線を相殺しようとするが、熱線の方が強い……。

「がああああ!!」

 俺の魔力全てを注ぎ込む勢いで魔導法術機ガルファーに魔力を込める。

 そして熱線を切り裂き、サラマンダーの足首に刃を当てる。

 そのまま力を込め、剣を振り抜くと、剣の刃は砕けてしまった。


「おしいおしい」

 サラマンダーは体を回転させると刃が付いたその尻尾で俺は斬られそうになるが、マドルさんが弓を盾代わりにしてくれ、危うく真っ二つになる所を免れた。

「マドルさん!」

 マドルさんも一緒に吹き飛ばされたが無事のようだ。

 弓は真っ二つに切られてしまっているけど。

「本当に参ったね、どう倒せばいいかわからないよ……」

「それは俺も同じですね……」

 武器も壊れてしまった……、どうすればいいか……。


 サラマンダーは再度、皇子目掛けて爪を立てる。

 その瞬間、レアは変身し、大猫になってサラマンダーの爪に噛み付く。


「はは! やっぱり当たりだ! サラマンダー!」

 その声に反応したのか、サラマンダーはレアを掴もうと動き始める。


「ご主人様! 私が撹乱している間に、皇子達を!」

 レアはその敏捷性を生かしてサラマンダーを撹乱する。

「ロイさん! ホンガンさんと、皇子を早く!」

「しかし……」

「あとは任せて下さい!」

「すまない。 皇子、早く!」

「しかし、レアさんが……」

 レアが急に大きな猫に変身した事にはあまり驚いていないようだ。

「大丈夫です。 俺がなんとかします!」

 短剣ダガーを握りしめ、サラマンダーに向かって行く。

 こんな短剣ダガーでどうにか出来る相手じゃ無さそうだが、皇子が逃げる時間を稼がないとな。


「ぎゃ!」

 レアがシャッテのお腹に掌底で一撃を当て動きを止める。

「レア!」

「手間をかけさせないでよもぅ……」

 サラマンダーは倒れているレアを掴み、空に飛び上がる。

「レア! シャッテ! レアを返せ!」

「返せって言われてもね。 僕の狙いはこいつだって初めから言って他じゃ無い。 これで僕の仕事は完了したから、後は見逃してあげるよ。 せいぜい頑張って城を守ってね。 バイバイ〜〜」

 サラマンダーは空高く飛び上がって行ってしまった……。


「レアーー!!」

 俺の声はその場にただ響き渡っただけだった……。

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