第8章:アルビレオの日常
第71話:艦内プール
子供たちから「艦内プールを作ってほしい」とリクエストされた。
ソロルでみんな泳ぎを覚えたから、次に水惑星へ行った時に、感覚を忘れないようにしたいらしい。
特にプール推しなのはカールだ。
イルカは本能で泳げるから、練習はいらないんじゃないかな?
って聞いてみたら、泳ぎじゃなくてジャンプを極めて、みんなに見せたいらしい。
アイオはプール作りを快諾したよ。
既に大浴場を作っているから、プールはその応用で作れるみたいだ。
とりあえず、子供たちが泳ぐ水深80cmプールと、カールのジャンプ用の水深6mプールが作られた。
おまけに飼育水槽も作って、ソロル星で捕まえた魚たちの飼育まで始まった。
そのエリアだけ見ると、宇宙船の中というより水族館に思えてくるよ。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
「ねえねえ、おとうさん、また水惑星に行ったらお魚捕まえて飼いたいな」
「いいけど、その星の人たちから許可をもらってから捕まえるんだよ」
水槽内を泳ぐ様々な色の魚たちを眺めて、カールがおねだりする。
最初は母星の父王を想って「トオヤ」と名前で呼んでいたカールも、今では他の子供たちと同じくトオヤを「おとうさん」と呼んでいた。
「水槽が作れるって分ってたらアクウァの魚たちも連れて来たのになぁ」
残念がるカールの故郷にも、様々な色や形の魚たちがいる。
ソロルの魚たちを眺めて、カールはふと遠い故郷を想った。
「カール! これ見て!」
「お母さんが新しいフロートを作ってくれたよ!」
「プールに浮かべてみるから一緒に遊ぼう!」
そこへ、他の子供たちが賑やかに駆け寄って来る。
チアルムが嬉しそうに抱えているのは、アルビレオ号のミニチュアみたいな白鳥のフロートだ。
「うん! 行こう!」
カールも元気よく駈け出して、他の子たちと仲良くプールに向かう。
プールエリアの気温と水温は、水遊びにちょうどいい温度に保たれている。
大浴場と同じで、プールにも循環ろ過機能が付いていて、水はいつも清潔で適温を維持していた。
「みんな元気だなぁ」
みんな揃って水遊びに夢中の子供たちを、プール監視員代わりのトオヤが眺めながら言う。
トオヤも子供の頃にプールに入った経験はあるが、彼が育ったコロニー【ベネトナシュ】のプールは軍隊の水中訓練用で、遊ぶというよりは泳ぎの練習に特化していた。
「アニムスは最初は水が苦手でしたが、今は楽しいみたいですね」
トオヤに飲み物を手渡しながら、アイオが微笑む。
保護される前、渓流に落ちて死にかけたアニムスは、当初は水に入る事を怖がっていた。
お風呂と同じでトオヤに抱かれていれば安心するので、プールを作って間もない頃はトオヤが抱いてプールに入っていた。
そんなアニムスも、しばらくすると慣れてきて、今ではみんなと遊べるほどになっている。
「ねえアイオ、大人用プールも作ってくれない?」
「あたしたち、水中エクササイズがしたいの」
子供たちと一緒に水遊びを楽しんでいたレシカたち女性陣が、アイオにリクエストする。
後に水深1.1mの大人用プールが作られ、主に女性乗組員の間で水中エクササイズが流行し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます