第68話:思想を同じくする者たち

爆散したメイテオの残骸をドミナートル基地へ転送アスポートした後、僕は地上へ降りてレジスタンスのメンバーとの会話を試みた。

彼等は得体の知れない力を警戒してはいるものの、敵機を片付けた事から味方かもしれないと思ったらしい。

僕は地下に潜んだままの彼等の思念を感知し、精神感応テレパシーで話しかけてみた。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




『僕は、アエテルヌムの宇宙船アルビレオの艦長、トオヤ。レジスタンスの皆さんと敵対するつもりはありません』


トオヤは無傷で残っている狩猟小屋の前に降り立ち、精神感応を送る。

監視カメラの映像から、トオヤが半人半獣のフラテル人ではない、異星人である事は知られていた。

脳内に流れてくる【言葉】を、レジスタンスメンバーは慎重な面持ちで受け取る。

精神感応は使い手の本心も明らかになる。

フラテルの文明にもサイキックは存在しているので、彼等はトオヤが本心を伝えている事を察していた。


『皆さんと同じく、森林の大規模伐採に危機を感じて警鐘を鳴らす人たちを艦内で保護しています。交流して頂く事は出来ますか?』


その言葉に、レジスタンスたちはしばし相談している様子が感じられた。

少し間をおいて、彼等の中にいるサイキック能力者が精神感応を送ってくる。


『それはもしや、ラティオ殿下とロギア博士ではありませんか?』

『その通りです』


2人が思想を同じくする事を、レジスタンスメンバーは知っていた。

ラティオ王子もロギア博士も、国家に反逆する者とされ、現在ドミナートル国内で指名手配されている。

しかし、2人とも惑星ソロルに停泊中のアルビレオ艦内にいるため、ドミナートル政府は居場所を特定出来ていない。


『アエテルヌムの使者様ならば、森林が持つ役割を熟知しておられる事でしょう。保護してらっしゃる方たちと話をさせてもらえますか?』

『では、皆さんを艦内へ転送します。移動で転ばないように床に座っている事をオススメしますよ』


レジスタンスを代表して応じる、サイキック能力者。

トオヤは思念波から全員の位置を把握し、転倒防止のため座らせた後、アルビレオ号へ転送した。



一方、重戦機メイテオの砲撃に巻き込まれないように撤退していた兵士たちは、メイテオからの通信が途絶えた事に困惑していた。

砲撃される狩猟小屋を映す筈のメイテオ搭載カメラは、吹き上がる炎を映した後は何も送信してこない。


『おい! なんだこの残骸は!』


そこへ、基地からの通信と映像が入る。

映像に映っていたのは、爆散したメイテオの残骸だった。

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