第50話:料理の才能開花

調理場スタッフにフェレス族の女子3人組が加わった。

アイオのように美味しい料理が作れるようになりたいらしい。

ニアは味付けセンスが良いみたいで、上達が早くてびっくりだ。

ソース作りはニアに安心して任せられるレベルだよ。

ミイは魚をさばくのが上手いと思ったら、街で何度か魚を盗んで食べていたらしい。

ティオが魚釣りや銛で魚を突いたりして獲る方法を教えたら、そちら方面でも才能が開花したよ。

ナオはお菓子作りが得意分野になりそうだ。

まだ11歳なのにほとんどのお菓子を美味しく形良く作れるのは凄いかもしれない。

男子2人は村から持ち出した資料をアルビレオに解読してもらって、音声案内を受けながら薬草栽培を始めた。

10年前までは、薬草の栽培技術はベスティアでトップクラスとまで言われていたというフェレス族。

故郷の技術を継ぎたいという思いに目覚めたマヤとニイは、艦内の農園エリアを増やしてもらって、薬草園や村から持ち出した苗や種を育てているよ。

ちょうどその頃、アルビレオの農園エリアでは、第2コロニー【メラク】から分けてもらった農作物が収穫の時を迎えていた。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




「これも食べ頃ですね」

「こっちも良さそうだよ」

「見て見て、このトマトすっごく大きいよ~!」


宇宙船の中とは思えない、豊富な農作物が育つ農園エリア。

アイオ、トオヤ、乗組員の中で手が空いている者たち、子供たちも一緒に作物の収穫を楽しんでいる。

アルビレオの機能、乗員の環境最適化オプティマイズは優秀で、異なる惑星に生まれた子供たちも地球の野菜や果物を美味しく食べられる。

コロニーからの乗組員の中にはアレルギー持ちが複数いたが、この機能のおかげで改善されていた。


「このお野菜と、ベスティアで獲れた鳥のお肉を煮込んで、具だくさんの美味しいスープが作れるね!」


料理好きのニアはもう調理イメージが湧いている。

その日の夕食には、鳥と野菜の旨味がたっぷり出た具だくさんのスープが食卓に並んだ。

スープのベースは第3コロニー【フェクダ】から分けてもらった鰹節と醤油で、そこに鳥の骨付き肉のダシも加わり、異星人も大喜びの味に仕上がっている。


「これはパンよりライスが合う味ですね」


アイオの主食選びもぬかりない。

農園エリアでは米や小麦なども栽培していて、米は収穫して間もない新米が味わえる時期になっていた。


「お魚のテンプラも作ったよ~、そのスープにちょっと浸して食べたら美味しそう」


ミイが、ティオやニイと3人で獲った魚に小麦粉の衣をつけて揚げた物を運んで来る。

スープとの相性はバッチリで、そちらもみんな大喜びの品となった。


「デザートはサツマイモのプリンだよ~、クロミツソースをかけてね」


ナオは収穫した芋とベスティアで獲れた鳥の卵でプリンを完成させた。

黒蜜は農園エリアで収穫されたサトウキビから作られている。


「女子が増えたら食事の充実度が凄いな」

「私も女子だけど、ここまで料理出来ないわ」


トオヤが言うと、天婦羅の衣つけを手伝うレシカが苦笑して言った。

コロニーから来たメンバーの中にも料理が得意な者はいるが、アイオと子供たちには敵わなかった。


「美味しい物を食べると凄く幸せな気持ちになるの。だから頑張って作れちゃうのかも」


と言うニアたちは、かつては満足に食べられなかった子供たち。

栄養失調気味で痩せっぽちだった5人は、今では健康的な体型になっていた。

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