第3章:翼の惑星

第21話:惑星アーラ

アクウァを出たアルビレオ号は、3度目のワープで知的生命体がいるという惑星アーラ付近に移動した。

前回の航行データによれば、そこには鳥のような翼を持つ人々が暮らしているらしい。

大きな白鳥のような見た目のアルビレオは彼等から好感を抱かれたそうで、次に来る時には専用の着陸場所を用意しておくからそこへ降りるようにと言われたそうだよ。

それで今回はアルビレオ号は大気圏内に入り、地上へと降下した。

地上にはアルビレオの輪郭を描いたように白い線で白鳥らしき図形が描かれていた。

地球にも【地上絵】と呼ばれる似たようなものがあったそうだけど、核戦争で破壊されて今は存在していない。

難なく着陸したアルビレオから外へ出て、僕たちは翼人の里へ行ってみる事にした。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




『白い鳥の使い、あなたの事は祖先から聞いていたよ。こんな姿での出迎えですまない』


その【声】を、一同は呆然としながら聞いていた。

本来は自然豊かな田舎の村だった場所。

山の上にある翼人たちの里は、見るも無残に荒らされていた。

天使を思わせる容姿の人々が、至る所に倒れている。

トオヤはその1人を抱き起こしてみた。


『残念だけど、その身体はもう蘇生出来ないよ。私は残留思念に過ぎない』


そう言うのは、トオヤに抱き起こされた人物そっくりの青年。

青年は実体ではなく、ホログラフのような姿で空中に浮かんでいる。


『……何故こんな事に……?』


アイオが問う。

倒れていた青年には外傷が無いかに見えたが、トオヤに抱き起こされた時に喉を反らしたので、そこに牙が刺さったような傷痕が4つ見つかった。

青年の肌は冷たく血の気が無く、微かに開いた目は虚ろで光は消えていた。

その瞼をそっと閉じさせたトオヤに、幻像の方の青年が会釈して感謝の意を示す。


『吸血族だ。翼人狩りと言っていた。男は血を全て吸い取られ、女と卵は連れ去られた……』


悔しそうに告げる残留思念の青年は、そこまで話して何かを感知したようにハッとした。


『……私の子が追われている……。すまないが保護してもらえないだろうか?』

『居場所は分かりますか?』


トオヤは見捨ててはおけず、保護に向かう意志を示す。

もう蘇生出来ないという遺体をそっと草の上に寝かせると、トオヤは立ち上がった。


『案内しよう。私の翼から羽根を1枚抜いて持っていてくれ』


そう言われて、トオヤは青年の遺体から白い羽根を1枚抜き取り、胸ポケットに入れた。

すると、その羽根が白く光り始め、トオヤを包んだ直後に瞬間移動させた。


「なっ?!」

「お、おい!」

「ちょっと! トオヤだけなの?!」


残された人々が慌て、レシカが青年に問おうとするが、青年の残留思念もその場から消える。


「大丈夫、トオヤは強い。それに彼が付き添ったようです」


動揺・混乱する人々の中、アイオだけが落ち着いていた。

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