第19話:狙撃と防壁

巨大隕石群の迎撃が始まった。

僕たちは隕石の進行方向に対して真正面から撃つのではなく、横一列に並び、側面から攻撃を仕掛ける。

最初の射手がはずしても、隣の射手が撃破する。

味方が射程に入る事も無い。

隕石を砕けなかったとしても、軌道を変えられればアクウァに直撃せずに済むかもしれない。

僕は一番手を引き受け、アルビレオの両翼に5つずつある副砲と、白鳥の嘴にあたる部分にある主砲を使う。

合計11の砲門を操作するのは、例えて言うならピアノを弾きながら歌うような感覚と似ている。

副砲は基本バラけた動き、時には同時に、隕石が大きければ主砲で砕く。

艦の操縦はアイオに任せて、僕は攻撃に専念した。

万が一僕が撃ち漏らしても、迎撃部隊が撃ち抜く。

破片が飛んでもベガが防壁バリアで防ぐ。

アクウァには欠片も落とさない構えだ。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




横一列に並んだアルビレオ号と小型艇たち。

放たれるレーザー砲に似た兵器の光は、一列に並んでいるとショーの演出のようにも見えた。

隕石群は次々に砕かれ、粉々になったり軌道をはずれたりする。


「ベガの出番が無いくらい撃ち尽くしてやる!」


ティオが射手の二番手を務め、アルビレオの砲撃をすり抜けた隕石を砕いてゆく。

かつて軍事コロニー・ベネトナシュの訓練場で、彼は最多の撃破スコアを誇っていた。

その命中率の高さは、移民団の中でも他の狙撃手が追い付けない領域にある。


「そうね、覗き魔に活躍なんかさせないわ」


などと言うレシカが三番手。

彼女はティオと同じ艇に搭乗し、2人で左右の砲門を分担していた。


トオヤが撃ち漏らしてもティオやレシカが、数の勢いでそこをすり抜けても四番手以降がまだ続く。

今のところ迎撃部隊を突破した隕石は皆無だった。


『気を付けて。最後に超大型がきます』

『了解。ベガに出番だと伝えて下さい』


予知者のルウカと司令役のトオヤが思念を交わす。

最後に飛来した隕石は、彗星と言っていいサイズだ。

そんなものが惑星に衝突したら無事では済まない。


「全員、あの彗星を撃て! 砲撃後は散開して破片を回避!」


トオヤの指示で迎撃部隊は彗星の前方に扇状に隊列を組んで砲撃後、上下に散開する。

アルビレオ号も11の砲門で同時に砲撃後、素早くその場から離脱した。

迎撃部隊全員一斉攻撃は全て命中、彗星は砕け、破片はアクウァの引力に誘われるように進む。


しかし、それがアクウァの大気圏に突入する事は無い。


ベガのサイキック【反射防壁】が展開、無数の欠片となって降り注ごうとする彗星を反射し、衝撃波を欠片に返す。

彗星の欠片はまるで大気圏に突入した時のように発火し、燃え尽きてゆく。


アクウァを滅ぼすと予言された巨大隕石群は、移民団の迎撃によって阻止され消え去った。

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