第25話 福岡県民、墓穴を掘る。
団長のベッドで、団長に後ろ抱きにされ、団長にキスされている。
耳たぶに。
「もぉー! しからしか!」
後ろに手を振りかざして、団長の顔をベチベチ叩くけれど、なんでか喜ばれる。
「ん、可愛いなぁ…………」
「団長?」
「…………」
――――寝とるし!
後ろでスゥスゥと静かな寝息を立てている。憎たらしい。
ベッドで団長の腕の中という大人な雰囲気に、ドキドキとしていた私のこの気持ちを返せ。
もしかして、今夜⁉ とか思ってしまったじゃないか。
くるりと寝返りをうち、団長と向かい合わせになる。
首筋に唇を寄せて、力いっぱい肌を吸う。何回も。
「づはぁ。きっつぅぅ」
調子に乗りすぎた。湿疹みたいになってしまっているけれど、まぁいい。
暖かい。妙に肉厚なお布団だ…………。と、夢現でそこまで考えてハッと目が覚めた。
「おはよう……カリナ」
「……おはようございます」
なんとなく気まずい。二人ともソワソワとしている。
団長が何度か深呼吸をして口を開いた。
「その……すまない。飲みすぎた」
「やろね」
団長がモゾモゾしながらもキュッと抱き締めてきた。
「昨夜、何か酷いことしなかっただろうか?」
「耳たぶ、しつこいくらいねぶってた」
「ねぶ?」
「舐め回したり、吸ったりしてた」
「っ! ………………それは、覚えている」
――――覚えとるんかい!
「あとは、据え膳ほったらかしで、スヤスヤ寝てた」
「据え膳…………」
団長が滑らかな動きで起き上がり、見事な土下座を披露してくれた。
「なんで、土下座⁉」
「カリナの国で最上の謝罪なのだろう?」
土下座のままでそんなことを言われた。教えたけれども。
なんか、違う感。
あまりにも間抜けで笑ってしまった。
「いつまで笑っているんだ。そんなに笑わなくてもいいだろう⁉」
「あはは! だってぇ」
プリプリいじける団長にまた抱きしめられた。
「はぁ。どんなカリナも可愛いな。昨夜は緊張しすぎた……」
結婚するまでこんなチャンスは来ないと思っていたらしい。
あまりにも緊張してしまい、それを解すためにがぶ飲みしてしまったそうな。
「あははは! そんな、初めてでもあるまいしー」
「………………同衾は初めてだが。カリナは違うのか……」
――――同衾? 初めて?
脳内の検索システムがはじき出した言葉で覚醒した。
――――同衾!
団長が私の首筋に顔を埋め、どぅはぁぁぁぁぁ、と重たい溜め息。
完全に墓穴を掘ってしまった。
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