第23話 まだマシ
◆
「ご主人様、すみません。ご主人様の従者として舐められたらいけないと思い少し頑張り過ぎたみたいです。一応実技の授業はご主人様の言いつけ通り周囲の人たちを見て手加減はしてトップの人よりも少しだけ威力を高くしていたのですが……まさか私が一位の成績で通過してしまうとは……っ。ご主人様よりも従者である私の方が成績が良いなどと言う、まさにご主人様の顔に泥を塗るような行為をしてしまいました。この責任を取る為に自害を──」
「──よせ。お前の代わりはいないから勝手に自害はしようとするな」
「ご……ご主人様……っ!!」
入学式はなんとか無事に終わり、今はメリッサと共に俺の教室へと移動していた。
ちなみに貴族の従者は、仕えている貴族と同じクラス、席も隣同士となるようになっている。
そして今、メリッサはまさか自分が試験を一位で通過するとは思っていなかったらしく、かなり落ち込んでおり俺へ死んで詫びるなどと言ってくるので、流石の俺も自害は止めるように説得する。
正直言って、メリッサが死のうがどうでも良いのだが、メリッサが死んだ後につけられるであろう従者は俺の事(賊を殺したりしている事や実力等)を教えるつもりは無い為、色々と隠して過ごさなければならないのはかなりストレスが溜まる学園生活になってしまうだろう。
そうなる位ならば引き続きメリッサが従者をしていた方がまだマシである。
それに、俺がここまでメリッサを育て上げた、所謂一つの作品でもある為、その作品に費やした時間が全て無駄になると思うと精神面に多少なりとも来るものがあるのも事実である。
しかしながらその事をそのまま素直にメリッサに言う必要もないので簡潔に『お前の代わりはいないから死ぬな』というと、メリッサは感極まったような表情をしたかと思うと、次の瞬間にはぼろぼろと泣き出すではないか。
「ま、まさかご主人様から『私の代わりはいない』というお言葉を頂けるとは、私はもう、今日死んでもかまいません……っ!!」
「いや、だから死ぬなよ……」
まったく、ペットは飼い主に似るとはよく聞くのだが一体誰に似たのやら。
どちらかというと両親に似てしまったような気がするのだが気のせいだろうか?
そんなこんなでメリッサと一緒に俺の教室へ入ると、事前に決められている席へと座る。
ちなみに席順は成績順である。
そして、俺が教室へ入って来るや否や先に教室にいた奴らが俺の従者へと視線を向けてくる。
まったく、変に目立ちやがって……。
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