ヒッツ・ガイストの場合③


「明日は予定ありますか?」


 就寝前、ゲンはフウに尋ねた。


「んー、特にはねえな。明日はクエスト受けるつもりもねえから、その辺でぱーっと遊んでこいよ」


 彼は答えながら掛け布団の皺を伸ばす。ちなみにヒッツは既にいびきをかいている。


「分かりました。おやすみなさい」言ってゲンも、布団に潜った。



 夜中。いつものようにフウが部屋から出ていく。少し眠りが浅い周期に入っていたゲンは、ぼんやりとその音を聞いていた。


 今日は、ヒッツも出ていったようである。


 ただ、リョーの特訓の疲れが溜まっていたため、ついていかず、また深い眠りへと就く。



  *



 朝。


 小鳥のさえずり。


 風のざわめき。


 いつもより鮮明にきこえる。まるで外にいるかのように。


 ――外?



 ゲンは目を明けた。


 目に入ってきたのは――青い空と、彼を覆うドーム。



「……」


 彼はそのドームを指で突く。瞬間、ばりんと砕けてなくなった。



 彼がいるのは、広い平原の真ん中。周囲の街の家ひとつ見えない。ゲンはそこに独りでいた。同室のフウもヒッツもいないし、リョーがいる訳でもない。


「……」


 そうして彼は、理解した。


 また、追放されたのだと。











〖第一章 了〗

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