第5話 バスケ部後輩・左京加奈の場合(その4)

ベッドの上には洗濯物がたたんで置かれていた。

ベッドの上には部屋着らしいパジャマが置いてあり……その上にあったのは…………

……なんと下着じゃないか!

それもブラジャーとパンティ!

淡いピンク色でリボンが着いた可愛らしいブラジャーと、それにセットらしいパンティ……

しかも何故か別々に形が分かるように置かれている。


(親がすぐに着替えられるように、こうして出しているんだろうか? それにしても堂々とし過ぎだろ)


こう言っては何だが、女の子の下着と言う意味では、俺は義妹である雪華の下着を普段から見慣れている。

だが家族以外の女子、という事になると初めてだ。

いや、幼馴染の向日葵のを見た事があったかもしれないか?

いずれにしても他人の下着、それも女子のなんて、そう見る事はない。

その結果、どうしてもソッチに目が吸い寄せれてしまう。


(それにしても……左京加奈って意外に胸があったんだな。部活では気づかなかったけど……)


形よく盛り上がったブラジャーのカップを見ながら、俺はついそんな事を考えてしまった。


 カチャ


不意にドアが開いた。

素早く俺は首を正面に向けたが……ベッドの上を見ていた事はバレてないよな?

それにしても階段を昇って来る足音が聞こえなかったようだが……


「せんぱ~い、お待たせしましたぁ~」


心なしかちょっと甘い感じでそう呼びかけて来る加奈。

ローテーブルにティーカップを二つ並べると


「どうしたんですか? そんな所に立ってないで、どうぞ座って下さい」


と彼女は言った。

俺がベッドから離れた所に座ると


「あ、ソッチだと背もたれがなくて疲れると思いますから、コッチに座って下さい。ベッドが背もたれになりますよ」


とクッションを出して俺をベッドの横に誘導する。

なんかそれを断るのも、変に意識し過ぎに思われそうなので、俺は言う通りにベッドを背にして座った。


彼女がベッドの方を見ると「あっ、ヤダァ」と言ってベッドの上に手を伸ばした。

パジャマと一緒に先ほど俺の目に入ったブラとパンティを胸に隠すように抱える。

とは言うものの、もうしっかりと見てしまったが。


「ママが洗濯して、そのままベッドの上に置いていたみたいです。恥ずかしい所を見られちゃいました!」


彼女がテヘペロ的に舌を出す。

俺は「いや、別に見てないから」と口にして、誤魔化すようにティーカップに口をつけた。

入れてくれたのはハーブティらしい。

ぷ~んとハーブのいい香りがする。


と、すぐ隣に微妙な圧力を感じた。

見ると左京加奈が俺のすぐ右隣に座っている。

俺と目が合うと彼女はニッコリ笑って


「私、いつもここに座って、ベッドを背もたれにしてるんですよ」


と言う。

ここは彼女の部屋だから俺がとやかく言う事はないんだが……

にしてもヤケに距離が近すぎないか?


「ねぇ、ショウ先輩」


彼女がティーカップを両手に持ったまま、声を掛けて来た。


「なんだ?」


「この部屋に入って、私の下着、見ちゃいましたよね」


 ドキン


心臓の鼓動が一拍飛んだような気がする。


「い、いや、別に…」


「見ちゃいましたよね?」


彼女は念を押すように、もう一度繰り返した。


「み、見たって言うより……たまたま目に入っただけだから」


「ヤダァ~、先輩のエッチ!」


加奈が少しだけ身体を離すように……いや、むしろくねらすように間を開けた、と言う方が正確か。


「だ、だから見ようしたんじゃないって!」


「分かってます。目の着く所に置いておいたウチのママが悪いんです。それに……」


彼女はそこで言葉を一度切った。


「ショウ先輩になら、見られたって……」


彼女はまるでぬいぐるみが倒れるように、軽い感じで俺に体重を預けて来た。

俺の肩に頭を寄せて来る。


(な、なんだ、加奈はなんで、こんなに突然……)


俺の中で状況の展開が読めず、軽くパニックになる。

図書館の時からボディタッチが多い娘だな、とは思っていたけど……


「ねぇ、先輩」


「な、なんだ?」


「先輩って彼女がいるんでしょ?」


「どうしてそんな事を聞くんだ?」


「だってぇ~、気になるじゃないですか。先輩みたいにカッコイイ人には、どんな彼女がいるのかなって」


う、この質問は苦手だ。

俺はよく「彼女いるんでしょ」って聞かれるのだが、そこで「いないよ」と答えると「エー、ウッソー」と来る。

なんかそれを言われると「実はそんなにモテないんだ」って思われているような気がするのだ。

とは言え、嘘をつく訳にもいかない。

仕方なく答える。


「いないよ」


予想通り加奈は「え~~、うっそぉ~」と口にした。

悪かったな、モテるなんて噂だけで、実際には彼女なんていねーんだ。


「本当ですか?」


またまた念を押すように聞いて来る。


「本当だよ」


「じゃあ~、私、先輩の彼女に立候補したいんですけど?」


(えっ……)


思わず俺は左京加奈の顔を見てしまった。

彼女もじっと俺を見つめている。


(どうすればいいんだ?)


それが俺のその時の心境だ。

そりゃあ俺だって彼女は欲しい。

回りはどんどん経験済になっていく訳だし……


それに左京加奈はかなりの美少女だ。

バスケ部でも評判だし、一年の間でも人気があると聞いている。

だけどついさっきまで、ただの先輩後輩の仲だったのだ。

いきなりそう言われても……。


「あ、あの、いきなりそう言われてもさ、すぐに答えるって言う訳には……」


その時、左京加奈は半立ちになったかと思うと、俺に覆いかぶさるように圧し掛かって来た。

バランスを崩した俺は床に仰向けに倒れ、加奈は俺の上に四つん這いになって見下ろしていた。


「ショウ先輩、これは冗談じゃないんです。私、本気なんです」


その真剣な眼差しに、俺は言葉を失った。


「ショウ先輩は私の事をどう思いました?」


「ど、どうって?」


「先輩から見て、私は魅力的な女の子ですか? 私にドキドキしますか?」


「それは……可愛いと思っているよ」


「単に可愛いとかじゃなくって、女として……例えば私の下着を見た時、どう思いました?」


「ええ、どういう意味?」


「私に……エッチな気分になりました?」


「そ、それは……」


彼女は俺の手を取ると、それをそっと自分の胸に押し当てた。

弾力があり、かつ柔らかみのある球体の感触が手のひらから伝わる。


「先輩……」


彼女が熱っぽい声で囁いた。

一方俺は、その状況にうろたえていた。

自分で自分の目が泳いでいるのが分かる。

それに対し、彼女はまっすぐに俺を見つめている。


「私、先輩が好きです。大好きです。先輩になら、私の全てをあげてもいいです。だから……」



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この続きは、明日正午過ぎに公開予定です。

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