#13 初めて"虹"が完成した日:チームワーク

時計を眺める葵。

時計の針は、15時53分を指していた。


綾女 葵

『そろそろ

巡回に行く用意をした方が良さそうね。』


『そうだね。

今日は皆出勤していて人数が多いけど、

チーム構成は、どんな感じ?』

と言いながら緑莉の顔を見る白華と、

不満そうな表情で白華を見つめる橙羽。


日廻 橙羽

『「どんな感じ?」って、

巡回チームと密偵チームで

行くんじゃないの?』


そんな話しをしていると、

黄泉がソファに座り小説を読みながら、

『馬鹿ね

一月前に自分が入った時の事、

もう忘れたの?』

と小さくもキツい口調で囁いた。


扉から顔を覗かせ、

『馬鹿って言わないで! ユリちゃんの馬鹿!』

と頬を膨らます橙羽。


そんな中、紫月も不安そうな顔で口を開いた。

 

朝顔 紫月

『でも私も今日のチーム構成の事は、

ずっと気になっていたんだ。

今まで新しく仲間になったメンバーには、

リーダーとリンドウちゃんが

付いていてくれたけど、

ヒマワリちゃんが入ってからは、

2チームで行動する様になったし、

今日は6人全員出勤しているから、

"どうなるのかな?"って。』


四葉 緑莉

『私もお昼頃まで、

ずっと考えていたんだけど、

メンバーが足りない時は、

密偵チームとして動く事が多いでしょ。

だから初日は、リーダーとリンドウちゃんが、

側で色々と教えてあげた方が

良いんじゃないのかなって思ってね。』


緑莉は、奥の部屋から、

ワークスケジュールを持って来て

6人に見せて来た。


そこには、

巡回チームに、葵、白華、朱珠、

密偵チームに、紫月、黄泉、橙羽の名前が

記載されている。

 

林藤 白華

『成る程。』


白華は微笑みながら、

『今日一日、

密偵チームのリーダーは、任せたよ。』

と紫月に言葉を掛けた。


朝顔 紫月

『む・・・無理だよ!

私がリーダーなんて・・・。』


林藤 白華

『大丈夫。 アサガオちゃんなら出来るよ。』


そう言うと、

白華は笑顔で『ね』と言い、

黄泉の方に目をやった。


白華と紫月の会話を眺めていた黄泉は、

白華と目が会うと

慌てて小説の方に目線を戻し、

『そうね。 紫月ちゃんなら大丈夫よ!』

と顔を赤らめながら返答した。


一方、橙羽は、

『バラちゃんと一緒が良かったのに。』

と言いながら、

頬をパンパンに膨らませている。


そんな橙羽の前にしゃがみ込み、

そのパンパンに膨らんだ左頬を、

右手の人差し指で押す葵。

橙羽の口に溜まった空気は、

少しずつ口の外へと押し出されている。


綾女 葵

『ヒマワリちゃんは、

密偵チームで動いた事が少ないから

不安だとは思うけど、

明日は、巡回チームとして動けると思うから、

今日は密偵のお仕事をお願いね。』


優しく囁く様な落ち着きのある葵の声を聞き、

平常心を取り戻す橙羽。


日廻 橙羽

『うん。 分かった。

リーダーのお願いなら、断れないね。

橙羽、密偵やった事無いけど頑張る!』


橙羽は、悲しそうな表情ではあるものの、

さっきよりも少し明るめのトーンで

言葉を返したのだった。


葵は橙羽に『有難う』と礼を言うと、

橙羽の頬から指を離し立ち上がった。


葵は朱珠の方へ体を向け、朱珠の顔を眺めると、

『それじゃあ、行きましょうか。』と言い、

葵、白華、紫月は奥の部屋から刀を手に取り、

黄泉、橙羽は拳銃を手に握り締め、

そんな5人に続く様に、

朱珠も、先程受け取ったばかりの拳銃を

手に持ち玄関へと向かった。


6人が玄関口で順番に靴を履き、

扉を開き外へ出る中、

玄関口に見送りに来る緑莉。

 

四葉 緑莉

『皆、気を付けてね!』


綾女 葵

『えゝ、こっちの事は宜しくね。』


林藤 白華

『また、何かあったら連絡するよ。 』


四葉 緑莉

『うん。 遠慮しないで直ぐに連絡して!

直ぐに調べて折り返すから。』


朝顔 紫月

『私達は、昨日と同じ所で

見張りを立てていたら良いのかな?』


百合 黄泉

『報告の期日も今日までよね?』


四葉 緑莉

『そうね。

一応、消息不明で

報告書は仕上げているんだけど、

あれからも小さい子の啜り泣く声が、

ずっと聞こえてるみたいなの。

もう一度、

様子を見て来てもらっても大丈夫?』

 

朝顔 紫月

『うん。大丈夫だよ。

でも、今日も見つけられなかったら御免ね。』


四葉 緑莉

『大丈夫。

その時は報告書を、そのまま提出するから。

私が行けたら良いんだけど御免ね・・・。』


百合 黄泉

『そんな事は、気にしなくて良いわよ。

私達の出来ない事を、

ヨツバちゃんが、

やってくれているんだから。』


黄泉の言葉に、少し照れくさそうに、

『ありがと。』と返答する緑莉。


白華は紫月に向かって笑顔で近づき、

『何か困った事があったら、

直ぐに連絡して。』

と言うと、

緑莉に『それじゃあ、また後で!』と告げ、

玄関の外へと出て行き、


その後ろを続く様に不安そうな顔の橙羽が、

無言で玄関の外へと出て行った。


そんな橙羽の様子を眺め、

『ヒマワリちゃんって子、

ほんまに大丈夫なん?』

と葵に尋ねる朱珠。


綾女 葵

『大丈夫よ。あの子は、強いから。』


そう言うと葵も玄関の外へと出て行き、

その後、朱珠も玄関の外へと出て行った。


朝顔 紫月

『ヒマワリちゃんも出て行ったし、

私達も行こうか。』


百合 黄泉

『そうね。』


そう言うと、2人はドアノブに手を掛けた。

 

朝顔 紫月

『それじゃあ、行ってくるね。』


百合 黄泉

『また後でね。』


四葉 緑莉

『いってらっしゃい。 気をつけてね。』


2人は玄関の外へと向かい、

家に1人残った緑莉は、

パソコンの置かれた部屋に向かい、

業務に取り掛かるのであった。

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