#11 虹が完成した日 その④
家の中に入って来たのは、
黄泉と紫月だった。
黄泉は玄関口の橙羽を目にすると、
『また、口説いてる。』
と怪訝な表情を見せた。
日廻 橙羽
『もう! 邪魔しないで!
ユリちゃん、あっち行って!』
百合 黄泉
『言われなくても、
あんたに興味なんて無いわよ。
紫月ちゃん、行こう。』
黄泉と紫月は共に靴を脱ぎ、
黄泉はソファの置かれた部屋に入って行った。
そんな中、
紫月は朱珠の前で立ち止まり、
『会うのは、今日が初めてだね。』
『宜しくね。』
と朱珠に話しかけて来た。
昨日、電話で話した紫月という少女は、
束ねた髪の毛先を遊ばせてはいるものの、
細身で落ち着きのある容姿をしていた。
神原 朱珠
『き! 昨日は、お世話になりました!』
頭を深く下げる朱珠に対して、
『頭なんて下げないでよ!』
と紫月は苦笑いを浮かべていた。
すると奥の部屋から、
『まだ仕事まで少し時間もあるし、
コーヒー飲みたいんだけど、皆も飲む?』
と黄泉の声が聞こえて来た。
林藤 白華
『そうだね。
今日は少し肌寒いし、私も貰おうかな。
リーダーは、どうする?』
綾女 葵
『私はココアを貰おうかしら。
バラちゃんは?』
神原 朱珠
『じゃあ、私もココアを貰おうかなぁ?』
3人が話していると、
緑莉が嬉しそうに、
『注文していたコーヒーとか紅茶も
昨日、届いたから見てみる?』
と話しに入って来た。
朝顔 紫月
『それって、この間、話してたやつ?』
四葉 緑莉
『うん♪』
朝顔 紫月
『そうなんだ!
バラちゃん! 見に行こうよ!』
神原 朱珠
『う! うん!』
日廻 橙羽
『橙羽も見たい! 橙羽も見たい!』
部屋に集まった7人は、
それぞれが好きな飲み物を選び、
コの字型のソファーに左から、
橙羽、朱珠、葵、紫月、黄泉、緑莉、白華、
の順に座った。
飲み物を飲む黄泉の方を眺める朱珠。
百合 黄泉
『何? 何か付いてる?』
クールな黄泉の態度に怖気付く朱珠。
神原 朱珠
『あ! ごめん! ただな・・・、
右のお尻だけ
何で突き出てんのかなと思って・・・。』
黄泉は制服のスカートの下に、
ジャージのボトムを着用しており、
右の腰の辺りに、
スカート越しでも分かる程の膨らみがあった。
百合 黄泉
『あゝ、これ?
まだ何も聞いてないのね。』
そういうと黄泉は立ち上がり、
右側のスカートを捲り上げた。
『何してんねん!』と、顔を赤る朱珠。
スカートを捲り上げると、
腰に大きめのポシェットが付いていた。
神原 朱珠
『なあ、
それって外に付けた方が良いんやないの?』
百合 黄泉
『blancの人間とはいえ、
拳銃をぶら下げてる所を
友達とかに見られたく無いのよ。』
神原 朱珠
『拳銃?』
葵は飲み物を一口口にすると、
マグカップをテーブルに置き口を開いた。
綾女 葵
『そう言えば、説明がまだだったわね。』
百合 黄泉
『えっ! 嘘でしょ!
まだ説明してなかったの?』
『さっき挨拶を済ませた所だったからね。』
と言い苦笑いを浮かべる白華。
神原 朱珠
『何やねん! まだ何かあんの?!』
葵は立ち上がり、
『こっちに来てもらえるかしら?』と言うと、
パソコンが設置された部屋へ入って行った。
その少し後を、
不安そうな表情で部屋に入る朱珠。
そんな2人に続いて、
部屋に緑莉と白華が入って来た。
四葉 緑莉
『ちょっと待っててね。
今、パスワードを送ってもらうから。』
綾女 葵
『助かるわ。 有難う。』
その会話から2分程の時間が過ぎた頃、
『リーダー、パスワード届いたよ♪』
と緑莉が伝えた。
葵と緑莉がパソコンに表示された
パスワードを見た後、
部屋の片隅に置かれた
長方形の「金庫」の様な箱の方へ向かった。
その箱は長辺が120cm程で、
高さも膝の高さ程はあり、
天板は平らなものの、
メイクボックスや宝箱の様に、
手前から開くタイプで、
材質もスチールの様な
頑丈な見た目をしていた。
葵と緑莉が箱の前にしゃがみ込み、
開き口に設置された
「8桁のダイヤル」を回し箱を開くと、
中から複数の刀と拳銃が姿を現した。
神原 朱珠
『何やねん! これ!
あかん! あかんで! シャレにならへん!』
中身を見て取り乱し
部屋を出ようとする朱珠と、
その朱珠の左腕を、
『まあ、まあ、落ち着いて。』と、
涼しげな表情を浮べ掴む白華。
神原 朱珠
『嫌や! 怖い! 私帰る!』
朱珠の声を聞き、
『煩いわねぇ。』
と怪訝な表情で部屋の方に近寄る黄泉と、
後ろで苦笑いを浮かべる紫月。
綾女 葵
『そんなに怖がらなくても大丈夫よ。
余り使う機会は無いから。』
神原 朱珠
『嫌や! 少しは使うんやろ!』
日廻 橙羽
『大丈夫だよ。
まだ橙羽は、一回も使った事無いから。』
橙羽は、ちゃっかりと部屋に入り混んでおり、
朱珠の右側をキープしていた。
その存在に気が付き、
『うわっ! いつから居ってん!』と、
朱珠は腰を抜かした。
四葉 緑莉
『私達、本当に怪しい集団じゃ無いよ。
この刀とか拳銃を使う為に
"これ"があるの。』
そう言うと、
同じく箱の中に入っていた、
白と黒に彩られた球体を朱珠に見せた。
神原 朱珠
『うわっ!
やっぱそれ拷問の道具やったんやな!』
葵は立ち上がり、
球体を見て更に怯えている朱珠に
近寄って来た。
綾女 葵
『先ずは、あの球体の事を
詳しく話しておかないといけないわね。』
神原 朱珠
『あの球体の事・・・?』
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