第167話やったね!バッチリ好印象!に持っていくの難しすぎ
「ふ〜ん。それであいりんの逆鱗に触れて大変な事になったんだ?」
「そうなんだ……好感度上げって難しい……」
意気消沈でリンに先日の乙成とのやり取りを話す俺。あれからありとあらゆる手段を使って、乙成の好感度上げを試みたのだが、相変わらず好感度は73%あたりを推移していて、そこから一向に上がる気配をみせなかった。
「もう俺はどうしたらいいのか分からない」
「う〜ん……あいりんって兄貴の事ちゃんと好きだと思ってたんだけどなぁ……その変なおじいさんが適当な事言ってんじゃないの?」
「俺も最初はそう思ってたんだが……あの人、ゾンビ化についても詳しいし、なにより好感度チェッカーが……」
「ねねっ、その好感度チェッカーってやつ俺にも使ってみてよ! 俺ってどれくらい兄貴の事好きなんだろー?」
俺が真剣に悩んでいるというのに、リンは人の事だと思って面白がっている。話を聞けと言っても聞かないので、仕方なく俺は荷物の中から好感度チェッカーを取り出すと、リンの方をジッと見ながら強く握りしめた。
「どれどれー? え! 90%じゃん!! これ本物かもねー! あたってるあたってる!」
きゅ、90%……どうして俺は、男からの好感度が異常に高いのだ?
「なるほどねー。これを使って調べたら、あいりんの好感度が思ったより低かったと? 100%までいかないとゾンビ化を解く事か出来ない……そのアカツキさんっておじいさんはそう言ったんだよね?」
「そうなんだよ……だから今日はお前の所に会いに来たんじゃないか! お前なら、女の子の好感度の上げ方が分かると思って……」
そう。なんで今日、わざわざリンの家までやって来たかと言うと、リンは男の娘ではあるが中身はれっきとしたオスである。そしてなんでか知らないけど、女の子にすっごくモテる。今年のバレンタインデーだって、色んな意味での
「好感度の上げ方ねぇ……そんなの考えた事なかったからなぁ」
「普段はどうしてるんだよ?」
「えーそんなのわっかんないよぉ! だって女の子の方から来るんだもん!」
クソ……俺は聞く相手を間違えたのか? 立ってるだけで女の子が寄ってくるなんて、そんな奴の話なんぞなんの参考にもならんぞ?
「あ、でもしいて言えば……」
「なんだ?!」
「相手の事を褒める! あくまで自然にね? いつも見てますよーって感じでさっ!」
「ふむ……なるほど」
ゲーミングチェアの背もたれにゆったりとくつろいで座るリンの前で、正座でメモをとる俺。なんかもう、この構図が既に俺とリンの間を隔てている壁を表している様だ。流石ヒエラルキーのトップに位置している男って感じ。なんか眩しく見える……身体、発光してない?
「褒めるって顔とかって事か?」
「うーん……そういう人もいるけど、俺は顔の造形には触れないかなっ。だってそんなの、変えようがないじゃん。望んでなりたい姿になれる訳でもないし。最初っから決まってて変えようがないものを褒められたって嬉しくないと思うんだよね。少なくとも俺はそうだしさ! だったら、その子のメイクとか髪型とか服とかを褒めた方が嬉しいんじゃないかって! だってそれって全部その子が選択してきたものでしょ?」
「リン……」
幼い頃から外見の事ばかりに注目されていたリンらしいといえばらしい意見だった。そう思うという事は、今のリンを取り巻く現状について本人はどう思っているのだろうか? 相手の子達はリンの外見的な部分に惹かれてやってくる子が多いと思う。リンが乙成の事を好きになったのだって、見た目で判断しない子だったからだしな。
「もしかして兄貴、なんか複雑な事考えちゃったりしてる? あーもう! そんな顔しないでよ! 俺は全然平気だし、前にも言ったと思うけどあいりんの事も吹っ切れてるからね? 今は俺の事より、兄貴の事だよ!」
「あぁ、いやお前がいいんならいいんだ。ただ……早く好い人が見つかればいいなぁって。俺が言うのもなんか変な感じだけどさ」
一時は同じ相手を好きになっていた者同士だ。ちょっと気まずい所もあるが、分かり合える部分もある。ほんの少し前に苦い思いをしたリンには、兄としてだけじゃなく幸せになって欲しいと心から思えた。
「兄貴……本当に兄貴って優しいから大好き! 兄弟じゃなかったら、俺も兄貴と付き合いたいー!」
「わ! やめろって! くっつくな! それに何言ってんだよ?!」
男らしからぬ良い匂いをさせながら抱き着いてくるリン。どうやったら乙成の好感度を上げられるか聞きに来たのに、どうやらリンの好感度が上がってしまった様だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます