7:第11話 星空の下で  ★章ラスト

「………ひゃえっ?」

「わ、わふっ……?」

「………ぴえっ!?」


 ライカ自身、ほとんど無意識に――寄り添ってくる三人の少女達を、両腕で抱きしめていた。


 呆気にとられるエクスを、狼耳をパタパタとはためかせるリルを、顔を真っ赤にして慌てるヒナギクを。


 力いっぱい抱き寄せながら――ライカは喉の奥から、いや心の奥から、絞り出すように告げる。



「みんな……ありがと、な……本当に……ありがとう……!」


「! ……ライカ……」

「ライカさま……」

「ライカ殿……」



 抱きしめられながら、三人の少女達は、頬を朱に染めつつ――黙って体を預け、微笑む顔をりつける。


 互いを慈しむように寄り添う四人を、ティーナも守るように後ろから抱きしめて。


「やれやれですわ」と首を横に振るニュウも、軽く失笑していた。



 人類の脅威たる紅き夕陽が去った後の、吹き抜けるように雲一つない夜天やてんの下。


 満天の星空の下に―――何者にも断ち切れぬ絆が、確かにあった―――



 ―――――


 この話は、まだ、


「………俺はみんなに、が、まだ一つだけあるんだ」


 共に戦った仲間達を前にして、ライカは真剣な面持ちで、そう切り出した。


 自分の重大な秘密を受け入れてくれた、そんな彼女達――だからこそ、もうなどしたくない、と心に決意を秘めて。


「俺は、自分の出世の秘密を――なぜ俺の体に、人類の天敵である《竜》の血が流れているのか知りたくて、《エルシオン学園》に入学して、剣士になった。そうすることが、《竜域エリア》へ入るための唯一の道だから。それに、お世話になった孤児院にも、支援が出来るようになるし。……それは真実で、決して嘘なんかじゃない」


 ライカ達が今いる荒野と化した場所は、《エルシオン学園》より西側の地帯。一応は《竜域》に分類されるが、まだ浅すぎる場所。


 ここより、更に西の先を見つめて――ぼそり、呟いたのは。



「でも、



 続けて、ライカはゆっくりと顔を上げて。


 満天の星空を見上げながら、口にしたのは。




「俺が《竜域エリア》に入りたいのは―――だけ、からだ―――」





――――――――――――――――――――――――

●第七章終了のあとがきです。


 次話のエピローグで、一先ずの完結となります。



 ここまでお読みいただき、本当に感謝感激ですっ……。


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