#4
〔
対人戦の結果として相手が死亡した場合、〔亜空間収納〕の中身は勝者の取り分となることが不文律となっている(闘技場内での決闘の結果などの場合は別途取り決めがある)。
また死者の装備品は、その
つまり、今この場でセマカの〔亜空間収納〕の中身と装備品は、俺の所有物にして何ら不都合はない、ということである。
そしてセマカの遺体は、ここに放置しておくと他の冒険者に発見される
まるで計画殺人をした後のように死体処理をして、何食わぬ顔をしてギルドに戻り、
「アレクさん、セマカさんを見ませんでしたか?」
「……いいえ。何かあったのですか?」
「セマカさんですが、昨日の一件で
「わかりました。気を付けます」
……面倒臭い。前世の世界の殺人犯は、こんな面倒臭い気分になっていたのだろうか?
報酬を受け取り、食事もそこそこに宿の
◇◆◇ ◆◇◆
翌朝。
今日も依頼を請けるべく、
今日は害獣討伐系の依頼がまだ数多く残っている。今日はこれにしよう。
そう思い、討伐系依頼の一つに手を伸ばした時、脳裏にセマカの死相が
おそらく、俺が真正のこの世界の人間だったら、ここまで引き
割り切ったつもりでも、心までそう簡単には割り切れない。
こんな調子で討伐系依頼などを受けたら、命に係わる。
今日は少し簡単な依頼にしよう。
そうして選んだのは、孤児院の子守の依頼である。
内容は、子供たちと遊ぶこと。これだけだ。
この世界の文化・治安レベルを考えると、孤児が多く生まれて当然である。しかしそれを放置すると、
だから大抵領主(町長)や神殿などが出資して孤児院を経営する。しかし、いつの世も、どこの世界も、「無ければ悪いことになるが、有れば何も起こらない」ものの価値は、なかなか認められない。必然、予算は削られ孤児院経営は火の車になるだろう。
にもかかわらず、冒険者ギルドに依頼する。そのこと自体に興味を持った。
◇◆◇ ◆◇◆
「こんにちは、ギルドから依頼を受けて参りました冒険者です」
訪れた先は、随分長いこと手入れを放棄されたようにも見える建物だった。
ここが孤児院。街に一つしかない孤児院だから、ただ「孤児院」としか呼ばれないが、院長先生の名をとって「セラの孤児院」と言われることもあるようだ。
その名の由来であるセラ先生(
「依頼書にあったように、貴方にやってほしい仕事は子供たちの遊び相手です」
「自分はこの春12になったばかりのガキで、孤児院の子供たちとそう歳が離れている訳じゃないから、妥当と言えば妥当でしょうけれど、それだけで小金貨1枚は多すぎるのでは?」
小金貨1枚は、日本円換算で1,000円程度。日給1,000円と考えると安すぎる。
また、冒険者の価値観でも、宿代が素泊まりで小金貨2枚程度と考えると、これも割に合わない。
けれど、街の住民は小金貨1枚あれば普通に3日暮らせるし、スラムなら小金貨1枚を巡って殺し合いが起こる。
命の危険がなく、技能も知識も必要としないこの内容では、小金貨1枚は高すぎる。
ギルドを介するということは手数料を引かれるということで、それはおおよそ2~3割だろうから、銀貨2~3枚。
つまり、どう考えても冒険者ギルドに出す依頼ではなく、個人の伝手つてを辿たどって、子守を銀貨5枚前後で雇った方が良い、ということになる。
「冒険者ギルドに依頼を出したのは、男の子の中に冒険者に対して憧れている子が多いからです。貴方がたの冒険
「では自分ではその役を果たせそうにありません。自分はまだ依頼を一つしか達成しておらず、実戦といえる戦いもまた経験していません」
「私は依頼の相手として
アンバランス。塀や庭が
むしろ、冒険者ギルドが町長に対して伝手があり、現状をアピールすることで町長からの資金援助を増やすという目的があるというのなら、まだ理解が出来る。
しかし、それでは
その上この(よく言えば温和な、悪く言えば鈍くさそうな)セラ院長に、そのような(悪い意味の)プロモーション能力があるとも思えない。どちらかといえば悪意ある冒険者に
当初の心積もりと裏腹に、セラ院長の真意を知る為に、この依頼を受注することにしたのである。
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