第54話 勇者カイトSIDE それでも俺は......
リヒトが去った。
さぁ此処からは別れの時間だ。
「皆、ありがとうな、凄く良かったよ」
「そんな、こんな汚れた女を抱いて頂いてありがとうございます」
「……うっうっありがとう……勇者様ありがとう」
「本当に良かったのですか? 勇者様の汚点になりませんか?」
「あの……ありがとうございます」
「ほんとにありがとう……」
「お前等が良い女だから抱きたかっただけだ!それに他の男に抱かせたくないから『俺の物にした』それだけだ」
洞窟などで魔物を倒した戦利品は基本手に入れた者の物になる。
勇者パーティだから、それらの戦利品は国や教会の物になるが『価値が無い物』は流石に納めなくて良い。
ゴブリンやオークの苗床。
そこから助けた者は助けた人間の物になる。
だから、奴隷にしても誰も文句は言わない。
だが、苗床になった女の価値は凄く低い。
特にオークの苗床になっていた女は奴隷としの価値は、ほぼ無い。
まぁ、無数のオークに大きな物を無理やり入れられていたんだから……確かにもうあれは無理だろう。
奴隷としても女と扱われず、鉱山で働く事位しか出来ない。
それじゃ解放してやればどうか?
多分、生きていけない。
『オークの苗床になって犯された女』
その醜聞がある限り誰からも後ろ指を刺され……まともに生きられないだろう。
多分、スラムに落ちて、誰からも相手にされずに死んでいく。
そんな運命だ。
だから、俺はその運命を書き換えたい。
だから俺の奴隷にした。
まさか勇者の奴隷が苗床女だと誰も思わないだろう。
奴隷になれば『奴隷としての身分証』が発行される。
所有者が勇者の奴隷なら誰も手を出さない。
そして旅から旅の勇者なら『彼女達が何処に居ても問題ない』
「そんな訳無い……私は、私は……」
「いや、良い女だったよ! 凄く楽しく、気持ち良くして貰った」
彼女達は確かに下半身は使えない。
だけど、彼女達は俺が『抱きたい』と言ったら一生懸命奉仕してくれた。
オークに犯され苗床にされていたんだ。
そういう行為には恐怖を覚えるだろう。
俺が相手をする事で恐怖が薄れるならそれで良い。
「だけど……」
「お前等は全員俺の女だ! 良いな! 金と馬車は用意したから行ってくれ……王都なら沢山の人間がいるから身元も過去もバレない、俺の奴隷なら教会が仕事をくれる。窮屈でよいなら教会でシスターを目指すのも有りだ」
「「「「「勇者様」」」」」
「それじゃあな!」
俺は救えなかった。
彼女の仲間を一人斬り殺した。
そして……苗床の救えない精神を壊した女は皆殺しにした。
これは偽善かも知れないが……それでも俺は、救える者は救いたいんだ。
その為の醜聞なら幾らでも被ってやるさ。
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