第25話 自己責任 マジで終わるよ。
勇者パーティの男女交際に関する意見書
勇者パーティの活動における意見書
以上2種類の報告書の提出を求む。
俺が冒険者ギルドに顔を出すと、こんな書類が届いていた。
送り主は教会と王国のそれぞれの文官になっている。
普通に考えてそうだよな。
世界を救うという勇者とそのパーティには恐らく監視役がついている。
普通に考えて当たり前だ。
俺が書いて提出しているのはいわば『勇者側の代書』だ。
簡単に言えば自己申告にしか過ぎない。
国王や教皇みたいな人間や貴族や司祭が全てを鵜吞みにするわけがない。
常時とは言わないが、恐らく要所要所で監視されている筈だ。
この2枚の意見書は遠巻きに『ちゃんと報告しろ』そういう事なのかも知れない。
これがきたと言う事は、今現在のカイト達の評判は良くない筈だ。
ハァ~仕方ない。
カイト達に相談するか。
その前に……冒険者ギルドで勇者パーティの討伐の状態を把握して置いた方がよいだろう。
◆◆◆
冒険者ギルドに入り、カウンターの受付嬢に聞いてみた。
「勇者パーティが討伐した獲物ですか? え~とゴブリンですね」
マジかよ。
俺ですらオークの討伐に移っているのに。
『1か月を目標にオークを狩れる位までの実力をつける』が目標なのにまずくないか?
「それで、ゴブリンの討伐は一回の討伐でどの位でしょうか?」
「今迄の討伐で最高4体ですね」
うん、完全にサボっている。
駄目なんじゃないかな。
まぁ良い。
俺の本来の役目は、ギルドや教会ではしてくれない報告書の作成や各種申請を代行してやるだけだ。
当人がやる気もないなら、仕方が無い。
◆◆◆
カイト達が泊っている宿屋にきた。
正直いないといいな。
そう思っていたが……
トントントン。
俺がドアを叩くとカイトが顔を出した。
「あれっリヒト。まだ次のヒヤリングは先だろう?」
「確かにそうなんだが、結構不味い事になった。マリア、リタ、リアを呼んで……って必要ないな! まぁ良い、すぐに服を着てくれ! 俺は外で待っている」
「ああっ、分かった」
二部屋とっているのに、また一部屋にいる。
しかも、三人は下着姿だ。
もういい加減にハーレムパーティしてくれないかな。
きっと、あんな書類の提出を求められるって事は『分かっている』
あくまで、あの書類は確認だ。
活動も同じだ。
下手したら、勇者が来ない事でもう、何処かの村や町で被害が起きたのかも知れない。
実力の無い、今のカイト達がもし急いで駆けつけても、ただ死ぬだけだ。
村にいた時はもう少しまともだったのに、どうしたんだ?
「待たせたな! 入ってくれ」
そう言われて入った部屋は、男なら誰しも嗅いだ事がある臭いがした。
俺はあえて、それに触れないで話を進める事にした。
「あのさぁ……こう言う手紙が来たんだ。すぐに書いて返信しなくちゃならない。それで意見を聞きに来たんだ」
俺は2つの書類を見せて、どうするか聞いてみた。
「これがどうかしたのか?」
「なにか問題でもあるの?」
「いつも通りうまく書いてくれればいいじゃん」
「そうね、任せた」
「あのな……本当に俺がそのまま書いて言い訳? 男女交際に関する意見書を俺がそのまま書くと『何回か部屋に伺った時に着衣の乱れあり。状況から考えて四人は男女の仲になっている可能性が高い』となるし、活動における意見書もそのまま書くなら『今現在、ゴブリンの討伐しか実績がなく著しく遅れがでている。指導する立場の人間を求む』そうなる。そのまま書いて良いのか?」
「どうにかならないのか?」
「カイト、この書類が送られてきた時点で、恐らくは第三者から報告がいった可能性が高い。嘘の報告をしたら余計心証は悪くなる。表現は考えるが正直に答えた方が良い」
「もうどうにもならないのね」
「マリア、その通りだよ。もうどうしようもないと思う。それでも、どうしても、ハーレムパーティじゃないと言うなら、皆のサイン付きで送るけど、どうする?」
「それでどうにかなるのか?」
「リタ……俺はもう知らない。そのあとの自分達の行いしだいだ」
「それじゃ、もうワンチャンスあるんじゃない? サインすれば良いんでしょう、お願い」
「そうか……三人ともこう言っているけど、カイトもこれで良いのか?」
「ああっ、次は気をつけるから、それで頼むよ」
「それじゃ、書類を作る」
勇者パーティに男女交際の聞き取り調査をしましたが、パーティ全員が男女関係に無いと交際を否定。
それぞれにおいて間違いがない事を示し、ここに全員が署名する。
尚、当人たちからの証言を代書した物の為この責は代筆者にはないものとする。
「それじゃ、書類に皆、サインをしてくれ」
「「「「わかった(よ)(わ)」」」」
これで男女交際についてはもう俺の責任じゃないな。
「次は活動における意見書についてだ。どう書く?」
「どう書けば良いんだ?」
「カイト、お前達はどうしたいんだ? 魔王討伐に到るまで、とりあえず何をするんだ」
「どうすれば良いんだ?」
「これは俺には書けないぞ。そうだリア。リアは賢者だろう? 魔王討伐の第一歩としてなにかしないのか?」
「そうだね、頑張って訓練するしかないんじゃないかな?」
駄目だ此奴ら。
「わかった、これも仕方が無いか……はぁ~その内容で書くよ」
勇者パーティに活動を聞いたところ、暫くは訓練に邁進したい。
その様に報告を受けた。
訓練の内容については賢者であるリアが責任をもって考えている。
この内容については勇者パーティ全員が協議して決めた事であり代筆者にその責は無いとする。
「ほら、書いた。問題無ければ、悪いがこれにもサインをくれ」
「「「「わかった(わ)(よ)」」」」
気楽に考えすぎだ。
「あのな……恐らくこれが本当に最後のチャンスだ。サインしたんだから、パーティ内で恋愛はしないで、本気で訓練を頑張って欲しい。ここから先、真剣に考え頑張らないなら、マジで終わるよ! 村長との約束だから、この先も書類や手配の手伝いはするけど、本当にもう終わりに近いからな」
「「「「わかった(わ)(よ)」」」」
絶対にわかってないな。
俺は責任を負いたくないから署名させた。
これが嘘だった場合は……自分達の責任だ。
俺はもう知らね。
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