第百十八話 悪魔は何処へ 前編
数時間後。
一通りの処置が終わり、「信奉者たち」の教典と、剣の欠片をテーブルの上に置いた俺達は、全員で酒場の円卓につく。
「ソ、レ、で。この言葉が何で書いてあるんだったかしら、ジィンちゃん?」
アドラさんが立ち上がり、説明を求めるところから、話は始まった。
「これには、俺とガラテヤ様が生きていた世界で……『地の果てにて、友と待つ。ロディアより』と書いてあります」
「友というのは……心当たりがある者はいるか?」
「友……ロディアのお友達で、ロディアについている人なんて、おいら知らない」
「学校にいた、ロディアの個人的な友達かしら?……でも、全然、これっぽっちも心当たりが無いわね。それに、わざわざ日本語で書くってことは……私かジィンに気づいて欲しくて書いている訳だろうから……私達が知っている人……に、なるのかしら?」
ロディアがメッセージに残していった「友」とやらが誰を指しているのか、さっぱり分からない。
「私達がパワードスーツの使い方を探し回って、アンドレアのとこに行ったタイミングを狙って教会を襲った可能性もあるかもしれないわよ!だとすれば、ロディア君が言ってる『友』っていうのは、アンドレアの手紙に書いてあった……『アンドレアの友』のことを指してる、とか!ありそうじゃないかしら!」
「ほほう……その説、私は支持しますぞ。ケーリッジ先生。相手は悪魔です、こちらの動きを把握することも容易でしょう」
「ロディア・マルコシアスが、ジィン君とガラテヤちゃんの世界で普及していた文字を知っていたのなら……入り口の仕掛けも難なく突破できたハズ。いつ、どのタイミングでアンドレアの『友』について知ったのかは分からないけれど、逆にいつから知っていてもおかしくは無いわね」
全員に一切の心当たりが無い以上、ロディアが言っている「友」と、アンドレアの手紙に書き残されていた「友」が、同一人物を指しているという線もあるが……。
「私達が鍾乳洞へ着く前に、ロディアが先に行って手紙を読んでいたのか……或いは、私達が町へ戻るまでの間に、超スピードで町に飛んできた……とか。だからロディアはアンドレアの手紙に書いてあった『友』が誰を指しているのか知っている。……どうかしら、ジィン?」
ガラテヤ様の言うことは筋が通っているようには聞こえるが……俺達がアンドレア鍾乳洞へ行くことを知っていたのならば、何故待ち伏せも、罠を仕掛けることもしなかったのだろうかという疑問が残る。
「多分合ってると思いますけど……うーん、とりあえず向かう先に関しては、そのアンドレアの『友』のとこで良いと思います。そこにパワードスーツの取説しか無いなら、また考えましょう」
これ以上考えても、何もヒントが残されていないだろう。
ひとまずは、アンドレアの手紙に残されていた「友」の元へ向かうことに決まった。
しかし、その「友」が誰なのか。
またロディアが、鍾乳洞でも、この町に帰ってきたタイミングでも、俺達を襲わなかったのか……その理由に関しては、全くもって分からないままである。
「じゃあ……問題の、その『友』がどこにいるのか……考えようかしら」
「ンフ、まだまだ考えることは多そうネ。マ!じっくり考えまショ!」
もう少し、考える時間は続くのであった。
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