第138話 動かない修練
「っと……ととっ……」
頭の上にあるコップを倒さないように、かなり必死になって姿勢を正していると、横からゼスが声をかけてきた。
「ふむ。意識は頭の上へ。重心はヘソより下へ。しばらく続けよ」
なんだその指示は? 重心は下って、かなり難しい。感覚がわからない。
「下っ腹に重心があるものと考えよ。それでは不安定じゃぞ」
下っ腹。そこに重心。考えてる間にも、姿勢がゆらいでコップの中の水もゆれる。
「……くっ……ふー。ふー」
深呼吸をして身体の緊張を和らげる。だんだんとコツのようなものがわかりかけてきた。
「うむ。よき調子じゃ。そのまま動くでないぞ」
いつまでこの姿勢を続けるのだろう。なかなか厳しい状況だ。
結局、修練の終わりまでこの姿勢で留まっていた。ゼスがコップを頭から外すと、私はその場にへたり込んでしまった。
「最初にしてはまあまあじゃな。これからこの練習を続けるで、辛抱せよ」
動かない事がここまで厳しいとは。まだまだ修行が足りないな。
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