第85話 血
「どうやら、気に入ってもらえたようじゃの。ふふふ」
私の様子を見ていたゼスが、ひとりニンマリと笑っていた。
そんなゼスの前に置かれたのは、氷入りのバケツで冷やされた瓶だ。一緒にグラスも置かれている。
ゼスはその瓶を取り出し、中身をグラスに注いでいく。
色からして、赤ワイン? いや、この匂いは……。
「これか? これは『豚の血』じゃ。言ったであろう、人を襲って吸血したりはせん、と」
つまり、人の血ではなく豚の血で、吸血の衝動を抑えているようだ。
グラスを傾け、美味しそうに血を飲み干すゼス。その所作は、美しくも怪しく、そして優美だ。
「ふぅ。やはりここの血は美味いのぅ。さすがじゃ、店主」
「……ふん……」
わざわざこのために、この店に通っている訳か。納得。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます