第58話 次もひどそう……


「うるさいわ」


「これが……オチですか?」


 思わず苦笑いする璃緒。

 寒いダジャレ、岩手と何の関連もない。もう手抜きダンジョンと表現する以外ない。

 しばし呆然としていると、ネフィリムが腰に手を当てあきれた表情になる。



「やっぱり、澄人が引き寄せているのじゃ。そういう運命なのじゃ、諦めてすべてのダンジョンを攻略するのじゃ」


「わかったよ。行けばいいんだろ行けば」


 うなだれて、半場やけくそ気味に言葉を返した。まだ5分の1くらいしか終わってないがこれまでの都道府県も半分はひどいシナリオばかりだった。おそらくだけど、これからもそんなストーリーが続くだろう。敵が強いだけでなく、理不尽だったり全くヒントがなく運ゲーを押し付けられたり。

 もう、これは運命なのかな?


「まあ、からすみさんはそういう運命なんですよ。そう思うしかなさそうです」


「そうじゃな」


 2人のノリノリの会話に、大きくため息をつく。もう周囲からもそういう認定されてるんだな。

 何件かクリアしてくると、さすがにこのダンジョンのことがわかってきた。


「なんていうか、それなりによかったところと明らかに手抜きだったところにすごい差がありますよね」



「わかるわかる。出来のいい所は、地域ながらだったりいいストーリーだったりなんだけどね」


「さっきの、わんこそばがあるこの県は特にひどかったのじゃ。逆に、あの田んぼが広がっていてお米が美味しい所はよくできていたのじゃ」


 2人の言葉はごもっともだ。

 このダンジョン、各都道府県ごとの出来にばらつきがある。確かに、沖縄、岩手、神奈川はひどかったが岐阜、新潟はそれなりによかった。


 戦うときもそんな感じだった。


 変な妖怪が出て戦いになったことは何度も会ったが、それも微妙なものが続いた。戦うだけ──とかストーリーがとてもありきたりなものだったりとか。

 内容の薄さを雑魚狩りで水増ししている感じの物もおおい。


 そして、6割ほどクリアしたところで3人で話し合う。

 大阪のダンジョンを選んで、商店街っぽいところ。たこ焼きを狩って立ち食いしながら話し合う。


「ダレてきたのじゃ。さっきはひどい手抜きだったのじゃ」


「多分ですが、47もエピソードを作るとなると大変じゃないですか。だからどうしても手抜きになってしまう所があるんじゃないでしょうか」


「ああ、見切り発車で作り始めたはいいけど、うまくいかなかったってパターンか」



 璃緒は──色々なダンジョンをAランクとして渡り歩いている大ベテラン。当然、出来の割るダンジョンも渡り歩いている。


 だから作ってる側の視点もわかるのだろう。


「はい。制作側の人と話したことがあるんですが、最初は行けると思っても作ってから意外と手間がかかったり、途中からどうしても制作意欲が落ちたりでうまくいかないことがどうしてもあるようです」


「そうなんだ」



「わらわもそれはわからなくもないぞ。できそうでも、いざやってみると想像と違うものだったり、難しいものだったりとかあるのじゃ」


「なるほどね。制作側からするとそういうこともあるのか」


 わからなくはないが──ここまでひどいと配信にも影響してくる。最初は「またクソダンジョンか」などとネタにされてきたが、退屈なストーリーが続くとさすがに視聴者は飽きてくる。コメントが減ってきて盛り上げるのが大変。


 途中で撤退するのも、投げ出したイメージが湧くし何より時間をかけてここまで来たのにエンディングが見られないのもいたい。



 とりあえず、反応を見ながら考えようか。たこ焼きを食べ終えてストーリーを進めようとしたその時だった。


 今視聴者がどうなっているか気になって、コメントを見たその時。


“次、めちゃくちゃ強いらしいぞ”

“そうなの?”

“ああ、Aランククラスの奴が、全然勝てないんだってさ”

“確か、トンネル巡りだっけ。トンネルがダンジョンになってて、そこに強い妖怪が現れるんだっけ”


 この先出てくる敵、強いのかよ。さっきまでとは違うってことか。

 心してかかろう。それを璃緒とネフィリムにも伝える。



「負けませんよ!」


「澄人と一緒なら、絶対に負けないのじゃ」


 2人も自信満々でそう言っている。自身はあるといった感じ。負けるわけにはいかない。

 そして、たこ焼きを食べ終え、ごみを捨てて道を進む。


 歩いてる途中、いきなり人に話しかけられる。


「この辺りには有名なトンネルがあってさ、出るんだよね」


「そうなんだ。興味あるから、それ教えてくれないか?」


 突然の会話。どこか不自然──彼の言うとおりにすればいいのか? それ以外に手がかりはない。男の人から場所をしえてもらい、その通りに道を進む。


 通天閣っぽい所の下町っぽい商店街を歩いてから──治安が悪そうなところへ。そして、山沿いに行くと真っ暗な場所へと続くトンネルがある。


「ここか」


「なんというか、きな臭くなってきましたね」


「いつも思っていたのじゃが、澄人が呼び寄せているのではないか? 澄人の中に、クソダンジョンを引き寄せる引力のようなものがあると思うのじゃ」

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