第47話 ネフィリムとデート


 セラフィールとの激闘から数日後。

 2学期が始まって、授業で退屈な日々を過ごす。


 こっちでは1カ月ちょっとだった夏休みだが、俺だけ異世界転生があって何年も過ごしていたり、壮絶な戦いで魔王を倒してからは実況者としてダンジョンを配信。


 かつての魔王や、手の届かなかった璃緒との冒険。

 なんというか、こうして学校で暮らしていたのがとても昔の事だったように感じて懐かしさすら覚える。


 時折、LIANから連絡が来たと思ったらネフィリムから。


 自分のダンジョンでの戦いや改良について。それから、こっちの世界でのことについて楽しそうに話してくる。




 ネフィリム;パーティー「かいしゃぐらし」とっても強かったのじゃ。いつも会社に住み込みで働いているらしいのう




 ネフィリム;今日は「ミルキーベイベー」とかいう女の子4人組と戦ったのじゃ。金髪の「サーニャ」とかいう銃を使うやつが強かったぞ




 ネフィリム;ソフトクリーム、柔らかくてクリーミーで冷たくて、美味しいのじゃ




 まあ、色々と充実していて何よりだ。色々こっちの世界のことを勉強したと聞いていたが、しっかりと溶け込んでいるのは何よりだ。心配だとは思っていたが、しっかりと暮らしていけそう。



 そして、土曜日になった。7時にアラームが鳴って起床。休みの日にしては早い時間。別に、朝から配信をやるわけではない。


 朝ご飯を食べたら、身づくろいしなきゃ──なんていったって今日はネフィリムとのデートの日なのだから。


 元々デートをする手はずになっていた。そして、相談した結果今日になったのだ。デートが決まった時のネフィリムのはしゃぎっぷりは忘れない。


「やっと、澄人殿とデートができるのじゃ、とっても楽しみなのじゃ!」



 ネフィリムははしゃぐほど喜んでいて、舞い上がっていた。そして、それ以上に喜んでいたのは家族だ。

 家族からは──それはもすごいものがあったな。デートに行くことが決まった途端目を輝かせながらこっちに近づいてきた。


「ついに、ついに──あんたがデート! 一緒に一度のチャンスよ、絶対にネフィリムちゃんを満足させるのよ!」


「わかってるよ。最善は尽くすって」


「いい、食事はちょっと高くてもおしゃれな店に行くのよ」


「くれぐれもサイザリアなんてファミレスに言っちゃだめよ。理由はわかる」


「わかったよ。でも理由は知らないよお母さん」


「にぎやかで、カジュアルな雰囲気を楽しむ分にはいいけど2人でデートするには賑やかすぎるのよ」


「そうよ。こういうのは雰囲気が大事なの。ゆっくりとした、落ち着いた雰囲気のお店をアラブのよ、わかったわね。後、夜景のきれいな場所なんかがいいわね」


 それからも、この場所なら2人で楽しめるからとか、ここは行列がすごいから避けたほうがいいとか、そんなアドバイスをマシンガンのようにしてくるのだ。


 覚えるだけで、頭がいっぱいになりそう。

 両親妹が必死な表情で忠告してくる。分かったよ……最善は尽くすよ。

 でも、異性とこうしてデートをするなんて初めてだ。いくらネフィリムとはいえうまくいくかどうか、楽しんでもらえるかとても不安だ。


「わかったよ、ちゃんと気を遣うよ」


「当たり前よ、ネフィリムちゃんを悲しませたら絶対に絶対に絶対にゆるさないんだからねっ!」


「とりあえず、おすすめのデートスポットとか教えてあげるから、それをもとに組んで。組んだら教えて、お兄ちゃんだとセンスのない場所とか言っちゃいそうだから」


「わかったよ」




 電車をいくつか乗り継いで、原宿駅。約束場所の改札前についたが人通りがすごくて、改装工事を行っているため狭い。人であふれかえっている。


 集合時間まであと5分。とにかく人が多い。見つかるかな……。


 周囲をきょろきょろと探して──いた。


「おーい、ネフィリム」


 気が付いていなくて、周囲をきょろきょろとみているので、こっちで大きく手を振る。

 俺のことに気づいたようで視線が合うなり小走りでこっちに生きた。

 俺のことに気づいたようで視線が合うなり小走りでこっちにきた。


「いたのじゃ~~」


 俺と同じ様に、手を挙げて振っている。そして、その美しい姿に思わず目を奪われた、


 残暑もあって暑いせいか全体的に露出度が高い。

 肩を出した、フリルのついた白いワンピースに水色のミニスカート。ワンピースは、大きな胸の谷間が露出されていて視線が吸い寄せられてしまう。


 清楚できれいなお姫様という印象。

 あと、肌もきれいなんだな。きれいな肌に、薄い色調の上品さと色気を両立させたような服装。ネフィリムの魅力が、よく表現された服装だな。


 かわいい服装で、とても気合が入っているのがわかる。


「ここ、こんなに人が多いなんて思わなかったのじゃ」


「そうだね、俺も初めてだから驚いちゃった」


 ネフィリムの息が、軽く上がっている。俺のことを探して、色々歩いていたのだろうか。


「服装、とても似合ってるね、すごいキレイだよ」


「き、きれい……わらわが?」


「う、うん。とってもきれいだよ」


 人を褒めた経験が薄い俺。つい気ごちない言葉になってしまった。

 それでも、ネフィリムは目をキラキラと輝かせながらこっちを見ている。


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