第39話 天空へ

“飛んだあああああああああああああああああああああああああああああ”

“飛んだあああああああああああああああああああああああ”

“テントが、飛んだああああああああああああああああ!!


 コメントからも、驚きの声が多数。でも、そこまで驚くことかな? 不自然さを感じて考えていると、璃緒が隣にやってきた。


「これ、アニメのOPのネタですよ?」


 俺のコメントに、冷静に璃緒が指差した。


「そうなの?」


「はい。日常系キャンプアニメのOPでそういうシーンとキャンプが夜空を飛ぶシーンでそういう叫び声をコメントするのが約束になってるんです。私のコメントも、こんな感じになってます」


 そう言って、璃緒が自分のスマホを見せてきた。確かに、璃緒のコメントも似たような感じになっている。


「こういった他コンテンツのこともわからないと、いざネタが来た時に困るから、大変よね」


「でも、そこまで考えているなんてすごいですね」


「旬のネタは、よく勉強してます。大変ですが、視聴者への配慮になりますから」


 そうなのか。しかし、いろいろな方面のネタも理解しないといけないのか。コメントの数だけ趣味があるからそれも大変そうだ。それでもいや顔一つしない璃緒も素晴らしいものがある。こういう所は、俺も見習わないと。



 そして、キャンプは100メートルほど上空まで飛ぶ。ひんやりした空気、下を見ると広大な景色。

 広いジャングルに、視線を前に向けるとそびえたつ山々。山の先端には雪がかかっていて、明らかに今飛んでいる場所よりも高い。きれいだ。そしてキャンプは、北の空へと進んでいった。方向まで指定してくれてるのか?


「多分、動くととある目的地に行くように設定されているのじゃろ。移動系の術式で見たことがある」


「つまり、このテントが向かっているのは──」


「セラフィールの場所の可能性は十二分にある」


「そうだな」


 そう言えば、魔王軍との戦いの時もセラフィールの本拠地は空中にあった。白い竜にパーティーで乗っかってから、嵐の雲を抜けて──雲の上に大きな城があってそこに乗り込んだ。

 今回も、そうなのだろうか。


 結論から言うと、ほとんど同じだった。

 しばらくしてテントは雲の中に入り、大きな風がテントにたたきつけてくる。ゴンゴン物音がして、心配に放ったがすぐに雲の上へと昇り切った。(その際テントが傾いて璃緒がこっちに飛び込んできた。璃緒の体、柔らかいし大きくてマシュマロみたいな胸が当たってしまった)

 そして、ゆっくりと入り口を開いて外を見ると、宙に浮く、大きな城がそこにあった。

 地面の土台の上にある、白亜の西洋風のお城。どう考えても、セラフィールの場所だよな。


 だって、以前乗りこんだ城とほとんど同じ外見をしているのだから。

 そして、城門のような場所の前でテントは止まる。


 門の前には、門番の兵士らしき人がいたが──全く動いていない。よく見たら甲冑だけ。

 門の前に立つと、自動で門がギィィィと音を立てて開く。


「さあ、いこう」


「そうですね。これからワクワクします」



 ここか──ようやくたどり着いた。

 互いに視線を合わせて、コクリとうなづく。


 一緒に、城の中へと進んでいく。中に、人やモンスターの気配はしない。城までの石畳の道。庭園なのだろうか、芝生のような場所に噴水と池。黄色赤緑など、カラフルな花が咲いている花畑。


 水はきれいだし、花壇はしっかり整えられている。明らかに誰かが手入れしているのがわかる。


「セラフィールの部下、いるのかな?」


「いると思うのじゃ。あいつは非道だが仲間と認定したものには義理が固いところがある」


「そうか」


 セラフィールは、戦乱とかで孤児になったやつらを拾って勢力を増やしてきた。だから部下たちは忠誠心も高い。どうやって接すればいいのか。


 城門をくぐると、広々とした場所へ。そこを進んでいくと、一つ入り口があり、そこも扉の前に近づいた瞬間、扉が勝手に動き始めだ。


「多分、奥に行けば何かわかると思う」


「了解です」


 警戒しながらも、さらに奥の方へと進む。それ以外に道はなさそうだ。

 赤じゅうたんが敷かれた、広い道を進んでいく。


 壁には、女神様の絵画。2階建ての建物の建造物、森や山の風景画などが等間隔で飾られている。


「何でしょうかこれ」


「セラフィールの趣味だな。前の城もこんな感じだったし、占領した先で絵画を押収しては自分の物にしていた」


「あやつは、絵を見ることを好んでいた。よく他の幹部からも価値の高い絵を譲ってもらっていたな。自分で絵をかくこともあったな」


「面白い趣味をしているんですね」



 様々な絵が並んでいる廊下。何か、神秘的なイメージを感じる。それから、螺旋状の階段を登って行って、一番上の階へ進んだ。


 そこにまた両開きの大きな扉。扉の奥から物音がする。人がいるのか──コンコンとノックをして扉を開けた。


「すいませーん」


 警戒しながら扉を開け、中に視線を向ける。

 今までで一番、大きくて広い部屋。花瓶が置いてある長くて大きい机、豪華そうなシャンデリア。壁際には、時折どこからか持ってきた飾り物や騎士が来ている西洋風の甲冑。

 そこには、白と黒を基調としたメイド服を着た女の人が多数。エルフ特有の長い耳や毛耳をつけている人もいた。


 みんな、こっちに視線を向け怖がった表情でそわそわしている。部屋の一番奥でそれぞれ寄り添いあうように座り込んでいた。体を震わせ恐怖しているのがわかる。


「怖がってますね」


「とりあえず、話しかけてみましょう」





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