第3話 Sランクパーティー
目的のダンジョンへと到着。薄暗くて広い場所。まだ最上層──周囲を見回すと、弱そうな敵だったり、見たこともない無名の冒険者ばかりだったり。
ここにいてもしょうがない──相棒の聖剣「クリムゾン・ハート」を召喚しダンジョンの奥へ潜っていく。とりあえず配信もしておこう。何かあった時証拠になるし、行方不明になった時にここで姿が消えたとわかる。
スマホを起動して胸のあたりの差込口にセット。
雑魚敵のコボルトやオークを次々と倒していき、地下10階ほど。周囲に人の気配はない。遭遇する魔物はだんだん強くなりAランクレベルでないと倒せないような奴も増えてきた。
「グォォォォォォォォォォォォォォ」
大きく叫んで襲ってきたドラゴンを一瞬で対処。切断した首が地面に落下。
そして、さらにダンジョンを進もうとしたその時だった。
「ちょっと、こんなところでどうしたんですか?」
背後から誰かが話しかけてきて、驚いて振り向く。
そこには4人の配信者がいて、腕を組んでこっちを見てくるひとりの女性に視線を奪われた。
細身の体系に大きな胸。ピンクの癖のあるロングヘア。そして、露出度が高く胸元や肩を露出させるような服。
美人という言葉を体現したような美貌をした女性。そう、彼女こそがNO1配信者「香純璃緒」。美貌、実力、統率力すべてが配信者界隈で最強と言われる存在。
「えーと、君。大丈夫ですか?」
「大丈夫……です」
思わず豊満なおっぱいに目がいきそうになり、慌てて視線を顔に戻した。
「変な視線向けてるんじゃないわよ」
そして、後ろにいた金髪の女の子にとがめられる。彼女と男2人は、璃緒のパーティー仲間。3人とも璃緒の仲間に恥じない実力を持っている。
俺は声をかけられていることも忘れて、憧れのNO1配信者に会えた感動して戸惑ってしまう。
「えーと」
「ああ、すまんすまん。まさかNO1配信者に会えるなんて思ってなくてな。驚いちゃった」
彼らはみんな俺と同じ高校生、もしくは大学生。
俺と同年代とはいえ、彼女はダンジョン動画配信では天の上にいるような存在。
その動画は非常に人気がある。4人の強さやコンビネーションもさることながらトークスキルも一級品。多分、配信者という仕事ができる前でもアイドルとして十分に活躍でできるだろう。
「まあ、私達にあったんだものね。そういう反応するのも無理ないわ」
「そう……ですか。その、さきほどもお尋ねしましたが、こんなところで何を? ここはまだわたしたち以外は誰も立ち入っていない未踏査の最下層なのですが……」
ピンクの髪をなびかせながら、かなり不審そうな目で俺を見ている。
他の奴らも一緒に俺のことを見ている。最強の弓使い──それだけでなく弓を使った近距離戦闘もできるオールマイティさと高い精度の弓矢の制度を兼ね備えた男「竜二」。
金髪でつんつん頭。イケメンで女性ファンも多い。
幸洋
黒髪でスポーツ刈り。物理攻撃の強さに定評があり、璃緒と一緒に前線で大活躍をする男。
筋肉質で自分の力に絶対の自信を持っている。
彼ももちろんAランク相当の実力があり、筋肉好きの女子からの人気は高い。
優愛
後方から遠距離攻撃で璃緒や幸洋をバックアップしている。
小柄で肉弾戦は苦手なものの高い魔力で爆発的な威力の攻撃を放つ。
金髪で、子供みたいな容姿だが棘のある言葉使い。
そのギャップに魅了される男子は多い。おまけに愛想もよくトークも上手い。
どれもAランク相当の実力を持つ凄腕の実力者だ。多分、俺とも対等に渡り合えると思う。俺から見ればはるか上にいる存在。魔王がいるといっても、どうするか。
「なにか、ここに用事でもあるんですか?」
璃緒に詰められて、しばし考える。
時間だけかけて、最下層まで来ても大したモンスターも素材も出現しないことは明白だから、誰も奥まで来ないのだろう。おまけに、戦っていておかしいと思うところもある。
実際、俺も一応未踏査となっているこのダンジョンの最下層に行った。とりあえず動画配信したけど、全然再生数伸びなかったよな……。
とりあえず、解釈しないと。
「えっと、最深部に行った帰りでさ、そこで動画配信してた。再生数はクソでしたけどね」
右手を頭の後ろに当て、苦笑いをしながら何とかこの場を切り抜ける。彼女たちが配信中ということは、何万人という人がこの実況を見ているはず。下手なことを言って、炎上させるわけにはいかない。
無難に切り返せた。
「なんだよ……」
4人は、互いに顔を合わせながら何か相談のようなものをして話している。もしかして、俺を力づくで排除とかか? 負けはしないだろうけど、大炎上しそうだ。「4人の親切を裏切った」とか言われて。
とりあえず話を聞いてみるか。
「ここさ、ダンジョンにトラップがあるんじゃないかな? それでこの人、こんな最下層まで来ちゃったとか?
「ああ、あり得るわね。それだと情けなくて格好がつかないから自分の実力で来たってハッタリかましてるのよきっと」
「ほら優愛、そんなこと言わないの。──ただ、もしかしたらこの方は初級者なのかもしれません。それで突然こんなところに来させられて混乱しているとか。装備を見る限り、初級者の方でしょうし……」
俺の全身を一瞥すると、気の毒そうな表情を浮かべる。
そうか……まあ確かに今着ている服装はこのダンジョンでの初期装備を俺なりに改良した奴だ。
実際には元の世界から持ち帰った装備の数々——ラグナロクシリーズやスターダストシリーズ一式などなど——を保有しているが、さすがにそれをこのダンジョンで着込むのはなあ……。だから聖剣以外は初期装備のまま。それでも戦えてるし不便を感じないから戦っているのだが。
見たこともない武器を使っていて変に思われるだろうし。
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