~~異世界帰りの最強勇者~~  なぜか理不尽だらけのクソダンジョンで実力を発揮。助けた美少女配信者や元魔王様から好意を受けバズってしまう。かわいい美少女に囲まれ、理性を保つのが大変

静内(しずない)@~~異世界帰りのダンジ

第1話 そして、誰もいなくなった

「うわ、誰もいなくなったわ」


 真っ暗で、人気のないダンジョンで俺はつぶやく。

 座り込んで視線に入れているのは、スマホの画面。


 世界的な人気動画サイト──「ITUBE」の配信画面。スマホのカメラを通して前方のダンジョンの通路が映されている。


 コメント欄にある0の文字に視線が行く。いつも見ている残酷な現実。

 誰もコメントしていない、俺のダンジョン実況を誰も見ていないという証拠。

 重い現実に、深くため息をつく。


「なにがダメなんだろうな」


 俺、本名唐崎澄人からさきすみと。ITUBEでダンジョン配信者の一人としてからすみちゃんねるを運営している。

 それ以外は、ごく普通の高校生だった。


 先月まで異世界にいたこと以外は。


 思い出すな──俺が輝いていたころ。夏休みの直前、友達もろくに出来ず一人高校から下校しようとした俺。

 異世界転移をした、その先はまったくのファンタジーの世界。


 最初は慣れない世界に苦労したことはあったが、素敵な仲間たちに出会い──壮大な冒険に出たのだ。今思えば、あの世界にいる間が俺の人生の最盛期な気がする。


 そして、最初は仲間なんていなかった俺にみんなが称賛をしてくれた。俺はそれに答えようと、何度も死線をくぐりぬいて最後には強大な力を持つ魔王を倒したのだ。



 平和に戻った世界で、その世界にいた魔術師に頼み込む。この世界に戻してほしいと。だって家族とか心配だし、幼馴染の加奈だって心配するだろうし。


 現実世界に戻ると、戻ってきたのは転移した次の瞬間。つまり現実世界では1日もたっていなかったことになる。


 戻ってきた世界。世界を救うという使命を全うし、燃え尽き症候群となっていた。最初は、現実感がなくただぼーっとしていた。


 そんな中、この世界で革命的なことができた。この現実世界にダンジョンができたのだ。スマホのアプリ一つでダンジョンへ体がワープでき、ダンジョンでは魔物たちがいて、そこに潜って獲物を刈る者たち。そして、ダンジョン配信という職業が成り立っていた。



 自分が何が出来るか、考え抜いて──出した答えがダンジョン配信だった。

 ダンジョン配信なら異世界で戦ってきた経験を生かせる。そう意気込んで、スマホを片手に実況を始めた。


 配信を始めてしばらくして理解することになる。俺は、ダイジョンを攻略する才能はあっても、実況をしたり面白くしたりする才能は0だということだ。


 当初は、最初は苦労しても腕には自信があるからそのうち再生数は増えていくものだと楽観的に考えていた。


 しかし、1週間──2週間たっても再生数は全く変わらない。


 原因は全く分からない。


 視聴者、コメント0──たまに視聴者が現れて、絶対固定視聴者にしてやろうと意気込んではすぐに逃げられる。


 折れかけている俺の心。


 そんな時、同時接続の数が0から1になる。そしてあっという間に3へ。


 さっき帰った人が返ってきたのだろうか。それとも、新たに俺の動画が見たいと思った人なのだろうか──。


 わからない。ただ、久しぶりに俺の動画を見てくれている人が現れたのだ。たった3人だが、こんどこそファンをゲットして見せる!


 深呼吸をして、気合を入れてダンジョンを進む。

 最下層の、誰もいないダンジョン。所々宝箱で売れそうな素材を拾っていると、大きな地響き。


 この大きな足音と時折聞こえる大きな叫び声。


 確実に「ドラゴン」だ。

 ダンジョンではAランクともいわれる敵。こいつを倒して、実力を見せつけよう。


 そう意気込んで、薄暗いダンジョンをランプをもって進んでいく。数分ほど──。


 グォォォォォォォォォォォォォォ──。


 薄暗いダンジョンの中、その姿を発見。茶色い巨大な肉体に、大きな羽──肉体からあふれ出るオーラと叫び声。


 以前の世界でもいた、一般冒険者なら10人がかりは必要とされる敵。これを俺は1人で倒す。


 深呼吸をして、剣を手に取って切っ先をドラゴンに向けた。

 聖剣「クリムゾン・ハート」。金色に光る、異世界で勇者だけが使える伝説の武器。大神官ウリエルの力によって授かった最強の剣。


 視聴者が飽きないように、一瞬でけりをつけよう。ドラゴンが叫び声をあげて突っ込んでくると、それをかわしてドラゴンへと大きくジャンプして突っ込んでいく。


 両足に魔力を込めて地面を蹴ったおかげで、10メートルほど宙を舞う。向かう先はドラゴンの首元。前がかりになって無防備なドラゴンの首元を──。


 一刀両断。


 切断されたドラゴンの頭部が地面に落下し切断部分から血が噴き出た。さすがに血が出るシーンはグロいから見せられないが、うまくドラゴンの顔の部分を移す。


 これでどうだろうか──。スマホに視線を向けると、コメントが来る。


「ちょっといいか?」


「な、なんでしょうか??」


 数日ぶりのコメント。この人は絶対にフォロワーにさせたい。誠実に答えようと言葉を返す。……が、帰ってきたのは信じられない言葉だった。


「こんなことして楽しいのかよwww」


 予想しなかったコメントが現れて戸惑う。なんだよこれ……。


「え──」


「え──じゃねえよ。無名の高校生が1人でドラゴンを倒せるわけねぇだろwwwww」


「違います。高校生ですから」


「どうせチート使ってるんだろ。不正コードとか使ってるんだろ? ズルして目立とうとして何が楽しいんだよ」


「待ってください。そんなことしてませんから」


「タイトル詐欺乙この底辺野郎」


「高校生が一人でダンジョンの最下層にに潜るなんて話、聞いたことねぇよ。絶対成人してるベテランだろ。本当に高校生なら高校生であることを証明してみせろズル野郎。生徒手帳とかさ」


「いや、個人情報はさすがに──」


「はい、詐欺師のチート野郎確定! そのチー牛顔二度と見たくねぇ」


 こんなところで生徒手帳なんて見せたら通ってる高校や名前が全部バレてしまう。そしたら炎上した場合にSNSをたどららたりして、そこから住所が割れたりして、家族にまで迷惑がかかったり……。それだけは絶対避けないと。


「ごめんね、ちょっと──君は信用できないや。まあ、頑張ってくれよな」


 明らかにチートだと思われてる。慌てて引き留めようとするが、もう話を聞いてくれなかった。

 そして、接続数は0に戻る。


 あーあまたいなくなっちゃった。どっと疲れが噴出して、一気にやる気がなくなる。強くてもダメってことか──。

 もっと面白いトークでもすればよかったのか……いや、そんなのコミュ障の俺には不可能だ。


 他にやれること、カメラワークが下手なのか? 頭の上にスマホケースをつけるのじゃ単調になるのか??


 それならどうしようもない。戦闘しながらだと、どうしても意識がそっちに向かうから、カメラワークがおろそかになる。


 高ランクパーティーの中には、別にカメラワークや編集担当のアシスタントをしている者もいるが、そんな危険を顧みずダンジョンへついてきて編集までしてくれるアシスタント。


 相場を聞いたことがあるが1度につき5~6万はかかるらしい。

 それを毎日やったら──俺には出せない金額だ。無理だ。


 どうしよ……。




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