超能力者事件

超能力者事件 ~CASE01~

「犯人はあなただ、エスパーさん」

「なっ、何いきなり」


「検死によると、播種性はしゅせい血管内凝固症候群、DICにより心停止に至ったが基礎疾患しっかんはなかった」

「だから、何」


「あなた、弱いながらテレポートと透視ができるそうですね」


「それが。テレポートと言っても1g2gを10cmほど移動せるだけ。透視なんて目の前の紙1、2枚を見通すだけ」


「遺体検案書を書いた先生が、面白い事をおっしゃいましてね。外傷はなく手段は不明だが、急性溶血性輸血副作用、つまりABO不適合輸血が行われたかもしれないと」

「針も使わず輸血なんて」


「それで十分ではありませんか。彼の血管内にエスパーさん、あなたの血液を送り込むには」

何故なぜそうなるの、私は知らないわっ。生体への部分テレポートなんて、精密な位置特定ができない限り無理だわ」


「エスパーさんあなた、彼とは親密な関係だったんでしょう」

「…だから何っ、終わった事よ」


「彼の血管の位置を、よぉ~く把握していたのでわ」

「知らないわよっ」


「鑑識さんとても優秀な方でして、彼の血液中の血栓から、別人のDNAとミトコンドリアDNAを見つけちゃいまして。あなたに裁判所から身体捜査令状と鑑定処分許可状が出てます」

「…あんな男、私をもてあそんだあいつが悪いのよっ」


「お口の粘膜採取にご協力頂きますよ。あなたには弁護士を付ける権利があります」

「知ってるわっ」


「これより先はその方とご相談なさるとよろしいでしょう。はい、ではお口を開けて下さい」

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