第120話 合格
「サリチル酸を改良して医薬品を作ってしまうとは。‥‥‥仰られた事は本当でしたね。エドガーくんを正式に特別合格者として認めます」
「あ、ありがとうございます」
そういえばそんな話だったな。久しぶりの化学実験が楽しくて途中忘れていたよ。
「更に成績を鑑みて特待生としても認めましょう。学費が免除になります。良い学院生活になりますように」
「ありがとうございます!」
学費が浮くのはありがたい! 良かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
学院長室から出てきた。ティナとエリーゼ様が校門付近で待ってくれていた。
「エドガー様、大丈夫でしたの?」
「エドガー様、何かございましたか!?」
「いえ、無事合格者として認められました。来月からは学院生です!」
「「やったー!!!」ですわ」
ティナとエリーゼ様がハイタッチしてる。
いつの間にそんなに仲良くなったんだ?
「それでは帰りましょう!! お祝いですね」
辺境爵邸に帰ってゲオルグ様に報告。エリーゼ様と俺の二人分喜んでくれた。
晩御飯はお祝いとしてティナとクロケットさんの合作ディナーだった。お互いに料理の作り方を教えあっているそうだ。二人ともレシピが増えるのは良い事だ。
明日からは王都の家探しを再開する。それまではここにお世話になる。
テオドールまで往復する金も時間ももったいないのでロキソとフルルはこっちに呼び寄せる事にした。必要な物を持ってきてもらえるように細かく手紙に記載した。
テオドールのみんなには挨拶も出来なくて悪いけどな。まぁ夏の長期休暇には帰るし。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夕食後、エリーゼ様が部屋を訪れた。
「マリアも合格しましたわ、しかも首席で」
「へぇ! さすがですね」
「明日は何をしますの?」
「家探しですかね? いつまでもここにお世話になれませんし」
「それは別に構いませんのに‥‥‥」
「ん? 何か言いましたか?」
すごく小さな声だったので聞こえなかった。
「いいえ、別に。あとは‥‥‥あのぶつかった貴族の方いましたでしょう?」
「合格発表の時の‥‥‥えーっとたしかシュナイダーくん?」
「‥‥‥落ちたみたいですわ」
落ちたんかーい!! 完全に同級生でイキる感じのキャラだったのに。
ひとしきり話して笑い合った後、エリーゼ様がかしこまった。
「エドガー様‥‥‥、二人で合格した時の約束‥‥‥覚えておりますか?」
「‥‥‥もちろん」
「もしよければ‥‥‥今からそうしても良いですの?」
「そうしましょうか。では、コホン! 『エリーゼ』」
「!! な、なぁに? 『エドガー』?」
二人とも呼び方がぎこちない事この上ない。
「「プッ! あはははは!!」」
その空気が可笑しくて二人で噴き出し、笑い合ってしまった。
「学院でもよろしくな、エリーゼ」
「こちらこそですわ、エドガー」
さぁ、どんな学院生活になるのやら‥‥‥。
第一部『テオドール編』 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます