第84話 王都へ向けて

 現在、王都に向かう馬車に揺られる事三日目。

 

 俺とティナはテオドール行きの馬車よりも豪華な辺境爵様の馬車に乗っている。

 護衛としてパーシヴァルさん他騎士隊を付けてくれた。ものすごい待遇だ。叙爵されるというのはすごい事なんだと改めて実感する。


「エドガー様、お加減はいかがですか?」

 馬車の窓を開けるとパーシヴァルさんが敬語で話しかけてきた。

 年下だしこんな子供に敬語はやめてほしいと伝えたのだが、部下の手前こうしないとやはりまずいらしい。

 

「大丈夫です。ありがとうございます」

「この辺はモンスターが現れる事が多いのです。じゅうぶん警戒はしておりますが‥‥‥。馬車が急停車する事もございます。その時はどうかご容赦ください」


「わかりました、お気遣いいただきありがとうございます」


 まぁティナが居るし、岩穿ちも持ってるし、大丈夫だろう。

 と思っていたらしばらくして馬車が急停車した。


「モンスターだ! ハーピーが六羽!!」


 パーシヴァルさんから警告される。

「エドガー様、決して馬車から出ないでください!」


 ハーピー‥‥‥鳥人種とも言われるモンスターだ。腕が翼、脚が猛禽類の脚のようになっていて、自由自在に空を舞い、鋭い鉤爪で襲いかかる。

 

 空からの攻撃は騎士隊の剣や槍では相性が悪い。

 逆に俺たちの武器なら相性が良い。

「いえ! 俺たちも戦います!!」


「エドガー様は馬車内から撃ってください。私が外に出て片付けます」

 ティナが馬車から飛び出した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ティナは馬車から飛び出ると、ハーピー達の位置を把握する。

(この距離では銃で撃って当てるのは少し難しい‥‥‥)


 すると馬車の上に飛び乗り、さらに馬車の屋根を足場にして高く跳んだ。

 ノナン族の身体能力は普通の人のそれを遥かに超える。馬車の屋根を足場にした事で跳躍の最高到達点はハーピーの飛ぶ高さを上回った。


 他の騎士に気を取られている一羽のハーピーは飛び上がったティナに気付かず。

 ティナは身を屈め一回転し、その勢いでハーピーの脳天に踵落としをお見舞いした。


 ハーピーは「グギャ‥‥‥」と短く呻き声を上げて落下。


 ティナは踵落としを決め、落下速度が落ちた一瞬で両手に拳銃を構えた。


パパパパァン!!!!


「グギャァーーーー!!!!」

 拳銃からの炸裂音と共に三羽のハーピーが撃たれて墜落した。


 残りは二羽。


 仲間がやられて動揺したのか、ホバリング状態で空中に静止していた。


 窓を開けてエドガーが狙いをつけ、引き金を引いた。

ビッ!! ビッ!!


 ハーピーは素早く空を飛べるだけあって大した防御力はない。

 エドガーも不器用とはいえ、止まった獲物に当てるくらいの練習はしていた。ハーピー二羽はその餌食となった。


「エドガー様、お見事です」

「‥‥‥片付いたな」


 パーシヴァルとお付きの騎士隊はあまりの光景に声が出なかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「エドガー様‥‥‥お二人のその魔道具は強過ぎませんかね?」

 

 他の兵士さんがハーピーの遺体の片付けをしている横でパーシヴァルさんに尋ねられた。

 パーシヴァルさんが拳銃を見たのは初めてだったか。別に隠していた訳ではないが‥‥‥。


「以前見せたライフルの小型版ですよ。あとでご覧になりますか? パーシヴァルさんなら良いですよ」

「‥‥‥是非お願い致します」


 

 

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