第41話 市場にて②

「わぁー!! こっちも賑やかですねぇ!」

 とりあえずエドガー自身の買い物は終わったのでティナの買い物に付き合う事になった。


「エドガー様! あっち! あっちに魔道具屋が有りますよ!!」

「ティナ、走るな。転ぶぞ?」


 久しぶりの買い物ではしゃいでいるティナ。俺に同行しなければ自由に過ごせるのにな、といつもエドガーは思っていた。


「エドガー様、早く早く!」

「魔道具屋は逃げないか‥‥‥、 !?」


 言葉が途中で途切れた違和感に振り返ったティナ。


「エドガー様‥‥‥!?」

 ティナが振り返った時にはその場にエドガーの姿は無かった。


 エドガーは背後から口を塞がれ何者かに連れ去られた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


少し前の時間

メッサーラの市場の通りの路地。


「マッシュの兄貴、アイツ! ほら!」

「んー? あ!! あいつはあのクソガキじゃねーか! こんな所になんで‥‥‥?」


 テオドールで活動がしにくくなったマッシュ一味は身分証を偽造し、領都メッサーラに隠れ住んでいた。


「あいつのせいであの村が変わっちまったからな。お陰でオレたちはこの領都でコソコソとやっていくしかなくなっちまった」

「どうします? 脅しかければ金踏んだくれますぜ」

「そうだな、コイン勝負で負けたリベンジといくか‥‥‥」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 領都の一角にある廃墟、マッシュ一味の住処。

 目隠しを取られて視界が開ける。後ろ手に椅子の背もたれに縛られている。縄抜けは出来なそうだ。


「よう! 久しぶりだな、ボクちゃん?」

「‥‥‥お前はマッシュ? 何故こんな所にいる?」


 俺は胸ぐらを掴まれる。マッシュの顔が近づく。

「あぁん? てめーのせいだろうが? てめーがセリスを誑かせやがったからなぁ‥‥‥」


「別に誑かせたりはしてないぞ。村人からのクレームを伝えただけだ。文句ならセリスに直接言えよ」


「‥‥‥‥‥‥!」

「っ‥‥‥! んな事はどーでもいいんだよ!」

「オレたちは憂さ晴らしと身代金がもらえりゃいいんだ!」

 取り巻きからの援護。


「要するにお前達はセリスに勝てなくてあの村を逃げ出したって訳か」

「あぁん!? てめー!?」


 あ、しまった。声に出てしまったようだ。


「‥‥‥軽くボコして返してやろうと思ったが。てめーがそういう態度じゃあ仕方ねぇなあ?」

 やはりこういう展開になったか。


「あー、ちなみに俺に危害を加えるのはやめておいた方がいいぞ」

 一応注意はしておこう。



「あ? その格好で何か出来ると思ってんのか?」

「あー、うん。俺じゃなくてだな‥‥‥」


バァーン!!!!


 激しく扉が開けられた。

 というより扉が飛んできた、が正しい。


「エドガー様ぁぁぁ!!!! ご無事ですかぁぁぁ!?」


 扉の吹き飛んだ入り口には逆光の中立っているメイド服の女。

「!? 誰だ、テメーは!?」


「ティナ‥‥‥遅かったな」

「申し訳ありません、エドガー様!!」


 ティナが助けに来た。

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