第37話 ウェストール辺境爵

「昼食のご用意が整いましたのでご案内致します」

「わかりました、行きます」

 メイドさんが呼びにきてくれた。どんなお昼が出るのかな、楽しみだ。


 俺とティナ、ロキソとイブが一列になって歩く。廊下の調度品とかも品があっていい感じだ。

 さすがは当代一の英雄だ。


 扉の前で止まるメイドさん。扉をノックする。

「ゲオルグ様、エドガー様御一行をお連れ致しました」

「うむ、入ってもらえ」


 メイドさんが扉を開けると眩しいくらいの明るい部屋だった。


 すらっとした初老の男性が立っていた。

 こちらを待ち構えていたようだ。


「ようこそ、我が邸へ。主のゲオルグ•ウェストールだ」


 俺たちは急いで臣下の礼の姿勢を取る。


「この度はお招きいただきありがとうございます。テオドール村のエドガーと申します」

「ティナと申します」

「ロキソじゃ」

「イブよ」


 ドワーフ達はいつも通りの挨拶だな。


「あぁ、楽にしてくれ。私‥‥‥オレも堅苦しいのは苦手でね。席に座って昼メシでも食べようじゃないか」


 あ、こういうタイプの貴族様か。

 こちらとしては助かる。


「ドワーフのお二人よ、もちろん昼からでも飲むだろう? オレも少し飲ませて貰う」


「ゲオルグ様‥‥‥まだ午後にも御政務がございますよ」

 ゲオルグ様がセバスさんに嗜められる。


「まぁ、たまにはいいじゃないか。少しだけだよ」

「‥‥‥かしこまりました」

 諦めたようなセバスさんは向こうの部屋に行った。

「随分と理解のある貴族様だの」

 ロキソが呟いた。酒好きの人は理解がある、らしい。ドワーフジャッジ。

 

「さて、テオドール村についてだが。なんだか立派な要塞を拵えてくれたって事だけど? キミが主導したって聞いたけど本当かい?」


「まぁ、一応そうです。モンスターの襲撃に備えて作りました。やはりまずかったでしょうか?」

「あ、いやいや。あそこに要塞を作るという発想自体がなかったのでな。しかもなんだか形状も変わっているって?」


 端紙をいただき簡単に絵に描いて説明する。

くそう、絵描きのドローがいれば良かったのに!


「‥‥‥これをキミが考えたのか? 他にも変わった魔道具で戦ったとか聞いたぞ?」

「発想は私ですが、魔道具を作ったのはこちらのロキソです」


 話を振られると思ってなかったロキソは焦って弁明する。

「いやいや、この坊の言う通りに儂は作っただけで‥‥‥」


 ライフルと弾薬の説明をする。


「‥‥‥エドガーくん、いや、エドガーと呼ばせてもらおう。エドガーよ、キミは何者だ? その歳でこれだけの物の発明をするなんて事が‥‥‥」

 核心を突く質問だ。


 だがティナが手を挙げる。

「ゲオルグ様、従者の身分で発言してもよろしいでしょうか?」

「‥‥‥許す、なんだ?」


「ありがとうございます。先程の質問の答えですが‥‥‥簡単です。エドガー様だからです!!」

 ティナがドヤる。


「ぷっ!! ふはははっ!!!! なるほど、俺はエドガーに対しての理解が足りてないという事か!!」

 なんかご自分で納得したみたいだ。


「その通りです。エドガー様とじっくりと話せばその天才ぶりに舌を巻く事でしょう!!」

 やめろ、ティナ。

 ハードルを上げるな‥‥‥。

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