第23話 魔導具


「いいですかお姉様。鑑定眼アプレイゼルはそれ自体がとても希少なスキル。お姉様のスキルランクは分かりませんが、見ただけで名前や性能までもが表示されるのですからかなりの高ランクでしょう。……そんな貴重な人材が、なぜ二回も追放されているのですか?」


 なぜ私は責められて(?)いるのですか?


 私が首をかしげていると、とうとうミアは頭を抱えてしまった。


「王太子の婚約者候補となった時点で、保有スキルについては王家も把握していたはず……。まさか、鑑定眼アプレイゼル持ちを婚約破棄する愚か者がいるだなんて……」


 その愚か者、『鑑定なんて他者から騙される危険がある者がすることだ! 真の王者は家臣から嘘をつかれることなどない!』という謎理論を唱えていたので。鑑定眼アプレイゼルをめっちゃ軽視していたんですよ。


 ま、今後の私の人生に微塵も関わらないであろう御方の話はどうでもいいとして。だいたいの選別は終わったから――


 ――うん?


 宝物が置かれている場所から少し離れて。

 壁に、少しだけ違和感があった。


 これは、魔術的な隠蔽がされている……?


 鑑定眼アプレイゼルで術式を読み取り、解呪。隠されていた小さな扉を開ける。

 金庫のような空間にしまわれていたのは……古い、古い形式のブレスレットだった。


 宝飾品には流行の形があり、形状からだいたいの年代が読み取れるのだけど……この形は、1,000年以上前に流行ったものであるはずだ。教科書や王宮の宝物庫くらいでしか見たことがない古い形状。


 ただ、それ自体はおかしなことではない。貴族家に先祖代々受け継がれてきた宝飾品であれば、そのくらいの古さは『普通』となる。


 普通じゃないのは、このブレスレットが『魔導具』であったこと。

 しかも、途轍もなく珍しい魔導具。



 ――転移魔法の魔導具だ。




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