第5話 別れ
――昨日。お父様が亡くなった。
特に感動的な場面があったわけではない。最期に言葉を交わせたわけでも、奇蹟が起きて意識を取り戻したわけでもない。ただ、ただ、意識のないまま、静かに息を引き取った。
前世を含めればそれなりに『人の死』というものを経験してきたけれども、それでも『親』が死んだのは初めての経験であり。
涙は出なかった。
正確に言えば、泣いている暇などなかった。
この世界にはまだドライアイスなんてものはないけれど、氷系の魔法があるので遺体の保存はできる。できるけど、遺体そのものを凍らせるわけにはいかないのでどうしても限界はある。――三日。三日以内に葬儀をあげなければならなかった。
前世のように車や電車があるわけでもないし、転移魔法は使用者が限られているので、遠くに住む人を待っている暇はない。近場に住む親戚などを中心にとりあえずの葬儀を執り行い、お別れの会というか告別式は王都で大々的に執り行うのが通例となる。
執事長に指示を出し、すぐに手紙を親戚中に送り、王家にも報告して――など忙しく動いているうちに、葬儀当日となってしまった。
そして、葬儀当日。
「――貴様はもうギュラフ公爵家とは何の関わりもない! さっさと出て行け!」
私は、義理の息子から追放されてしまったのだった。
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