第40話 大森林の主

「しっかしよぉ......大森林のヌシってそもそもどんな生物なんだよ」


 プリメーラは一切の表情を変えず、当たり前だという風に振り向き答える。


「え? 知らないわよ。でもやっぱりヌシなんて言うからには凄く強いんじゃない?」


 手がかり無しで探してんのかよ俺たちはァ!!


「いくらでかいっつったってこの広っろぉぉぉい森の中からアテも無く一匹を探し出すなんて無理に決まってんだろ!? フィンはどう思う!?」


「むりだとおもうぞ」


「ミ゚」


 なんとびっくりフィンが抱えるショクまで“もにん”と頷いた。俺達の言葉が分かるようだ......ってすげえけど今はそんな事どうだっていい!!


「ほら見ろフィンとショクだって同じ意見じゃねぇか!! やっぱり一旦引き返してちゃんと情報を集めてから来ようぜ?」


 なんでそんなに勝ち誇った顔が出来るんだよ......?


 ッ!? まさか!! 俺が考えつかないような凄まじい名案があるのか!?


「ふっふっふ......トウヤは忘れてない? 私が女神だと言う事をォ!! 私の女神パワーが凄いって事を!!」


「スマン、女神パワーで凄かったの結界だけなような気がするぞ?」


「プリメーラ、けっかいはすごい。でもあとだめ」


「ミ゚っ」


 三対一。俺の認識は間違っていなかったようだな! 


「なぁんでそんな事言うのよぉぉぉぉ!! テレパシーとか瞬間移動とかBGM流したりとか色々あったじゃないのよぉぉぉぉ!!!!」


 プリメーラは泣きながら悔しがっている。フィンもそんなドン引きしてやるな......


「――――それで? どんな女神パワーが秘策なんだよ?――あ、テレパシーで森さんとお話とかは駄目だぞ?」


「そんなメルヘンチックでファンタジーな事しないし出来ないわよ?」


 人を異世界に転生させといて何言ってんだよ。


「――――私の超女神パワーから繰り出される秘策! それは!! 千里眼よ! 子の力にかかればどこぞにいるヌシなんてちょちょいのちょいーっと見つけちゃうわよ!」


「トウヤ、“せんりがん”ってなに?」


「遠くまで見える凄い目」


「なるほど!」


「そぉんな余裕ぶっこきかましてられるのも今のうちよ! 私の千里眼が火を吹いたらそんな態度も取れなくなるハズだわ!」


 いや、火は吹いちゃダメだろ。目見えなくなるぞ。


 プリメーラはそう言うと、目を瞑り「はぁぁぁぁぁ!」などと何かを念じながら頭に力を入れ出した。


 きっと今プリメーラはこの森全体を見ているのだろう......これはもしかするともしかするのでは!?


「――――っはッ!!」


 呼吸を忘れていたかのような数分が過ぎた後、全身に不足した酸素を行き渡らせるように大きく息を吸ったプリメーラが顔をあげた。


「どうだった!?」


「それらしき魔力を放つ生物は......いた」


 まじかよ!?


「で、どんなだった!? 強そうか!?」


 プリメーラはこの数分で酷く老け込んだようにも見える。玉のような汗を大量に垂らし、目は虚ろだ......何を見たって言うんだ!?


「でも......姿が見えそうって時にアッチに勘づかれたみたいで......頭と目の繋がりを......強制的に切られた......」


 見られているのに気が付いただけじゃなく、強制的に切断した?


「大森林のヌシ......俺達は一体何を捕まえようとしてるんだ......!?」


様々な感情を煮詰めたような汗が、頬を伝った。

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