第24話 常識破壊女神と地味にサムライ④
あれからどれだけの時間が経っただろうか......なんて言うほど時間は経ってない。言っても30秒って所だろう。
ライが言う所の“対異世界人”用の戦い方というのは、それはそれは凄い代物だ。
一例を挙げるとするならば、俺が一瞬騙されかけた分身的なアレ。
アレは恐らくだが、イメージを俺にぶつけてるんだと思う。
避けなければ、防御しなければこの動きの通りに首が飛ぶ。そんなライの中にあるイメージを俺に見せて錯覚させたのだ。んなアホなって俺が一番思ってる。
イメージとライが入れ替わったのは、構えて殺気を色濃く放ち始めたあのタイミングだろう。そして霧のように濃い殺気に紛れ、完全に気配を絶った本体が攻撃のチャンスを伺っていたと......俺が気が付けたのは幸運と言うべきだろう!
“気配を完全に絶てる奴が殺気振り撒きまくってたら何かあるだろう”という事を俺が勘付いた事にライも気が付いているのか、あれから殺気分身攻撃(今俺が名付けた)はやってきていない。
その代わり、煙幕や剣閃で出る土煙など、物理的に視界を狭める戦い方が増えた。
だが俺的にはそっちの方がやりやすくて助かる!
「――――くっ!」
「また苦し紛れの煙幕かァ!? だから俺には効かねえって言ってんだろ!!」
俺のパンチから生じた拳圧が、周りの煙を吹き飛ばす。
「......これで異世界人特有の妖術を使ってないってんならぁ......旦那は鬼か天狗が転生したんですかぃ?」
「ちゃんと前世も人間だよ」
呆れ顔のライは軽口を叩いてはいるものの、既に満身創痍といった感じだ。
「俺は俺の力でコイツを最強にするって決めたんだ。それまでは誰にも負けないし、負けるつもりもない」
「旦那はこの世界に来たばかりだろぉ......世界には人の壁を破らなきゃぁ戦うことすらできない領域の奴らがうじゃうじゃいる」
「ばーか! 俺の尊敬する鬼さんが言ってたんだ。戦いに勝つのは強い方じゃねぇ。ノリが良い方だって!!」
「ノリが良い方......ハハッ! なら、ジブンも負けるつもりはねぇです......もう時間が無い。これで最後だ」
この瞬間、三人は......主にプリメーラは知ってしまった。
人の領域。決して超えることの出来ないと踏んでいたその領域に、ほんの少しだけだがヒビの入るその感覚を。
「旦那も......一緒に壊しましょうよ......思い込みで不壊になった人の領域ってやつを」
「壊すのは俺の専売特許だ! 一瞬でそんなもん踏み越えてやるわァ!!!!」
「旦那なら、なんだか簡単に出来そうな気がしてならねぇ......なぁ!」
現在の残り時間。あと9秒。
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