河童の紅子ちゃん。

猫野 尻尾

第1話:遠野のカッパ淵。

民俗学の父、柳田國男さんがいなければ、この世に「日本昔話」も

「ゲゲゲの鬼太郎」も生まれていなかったかもしれません。

とくに河童の話とかは・・・。


彼の名前は「出雲 大翔いずも ひろと

現在25才・・・フリーライター(主に地方の伝承・伝説なんかを

記事にしている)

身長は175センチ・・・一応イケメンってことにしておこう。


大翔は雑誌の取材で島根県の「石見地方」に行った時泊まった古ぼけた

旅館で「御杜子佐姫おとごさひめ」って姫神様と出会った。

それがきかっけで大翔は彼女と暮らすことになった。


通称小玉ちゃんと呼ばれてる「御杜子佐姫おとごさひめ」は紆余曲折あって今は神の国に

帰っている。


一人になった大翔はまた地方の伝承、伝説を求めて岩手県遠野に来ていた。

とくに有名な河童の話を取材して回ることにした。


そして有名どころでは遠野にはカッパ淵と呼ばれる場所がある。

かつてカッパが多く住み人々を驚かしたという伝説が残る場所。


そこで大翔はカッパ伝承を取材して回った。

で、ひととおり遠野を回ってその晩はカッパ淵近辺の旅館に泊まった。


郷土料理を食べて風呂に入って・・・まったり時間を過ごし、

眠りについた。

夜中を過ぎた頃だった。


誰かが部屋の外にいる気配を感じて目を覚ました大翔は気になってドアを

開けて廊下を覗いてみた。

でも廊下の明かりがついてるだけで誰もいなかった。


でまた部屋に戻って寝ようとしたら今度は誰かがドアを叩く音がした。

今度は確かに誰かだ、そう思った大翔はドアを恐る恐る開けた。


「こんばんは・・・」


「え?」


こんばんは、そういった人物の容姿を見て大翔は腰を抜かしそうになった。

そこには、なんと一匹の河童?みたいな人物が立っていたからだ。

河童って思ったのはその緑がかった顔色からだった。


顔が緑色ってガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのガモーラかハルクしか

見たことないけど・・・。


「今日、あなたとカッパ淵で会ったね」


「あ〜いや、俺は会った覚えないですけど・・・」


「って言うか・・・・あなたもしかして河童さん・・・ですか?」


「うん、河童だよ・・・しかも女子の河童」


「そうなんだ、でもあまり河童、河童してないけど・・・」

「河童ってこう、頭にお皿かなんかあって耳まで裂けた口が尖ってたり

して、でもって歯がギザギザで・・・?」


「化け物じゃない、それって」


「そんなイメージだから河童って・・・なんせ伝承の中だけの絵でしか

見たことないからな・・・」


「こういうのが河童の本当の姿だよ」

「私達も昔に比べたら、ずっと減ったけど・・・今は隠れるように

ひっそり生きてるんだよ」

「絶滅危惧種だね」

「子孫を残さないとこのままでは滅びてしてしまうの」

「このさい同じ河童じゃなくてもいいの、相手が人間でも・・・」


「あの〜ここで立ち話もなんだから、よかったら部屋の中に入れて

もらえない?」


「ああ、ごめんなさい、どうぞ入って・・・」


(俺なにやってんだろ・・・相手は河童だぞ)


「私、紅子べにこ


「べ?べにこさん?・・河童の紅子さん・・・へ〜河童に名前なんかあるんだ」


「正式には小山田 紅子おやまだ べにこ

「で?あなたのお名前は?」


「あ、俺?俺は「出雲 大翔いずも ひろと


「ヒロト君、これも何かの縁だよね、私と仲良くしてもらえない?」

「私ももうカッパ淵でひとり孤独に生きてくことに疲れちゃった」

「寂しくて死にそう」

「だから、よかったらヒロト君が旅館を後にする時、私もヒロト君に

ついて行っていいかな?」


「え、なんで?」

「って言うかさ、カッパ淵で出会ったの俺だけじゃないでしょ?」

「他にもたくさん人が通ったでしょ、なんで俺なの?」


「ヒロト君は私のタイプだったからね」

「実は私、ヒロト君をカッパ淵で見て一目惚れしちゃって・・・」

「それってあなたについていくってことに対する立派な理由でしょ?」


「自分の彼女が河童って迷惑?」


「か、かのじょ?・・・かのじょって勝手に・・・俺まだなにも認めて

ないし・・・」


「いいじゃないそんな細かいこと・・・押しかけ河童で」


「いやいやいや、河童って・・・」

「俺ってなんでいつも変わった人?女神様とか妖怪とかに惚れられるんだよ」


「放っていかれたら私、死ぬから?」


「おえっ?今度は恐喝?」


「しょうがない・・・放っては帰れないか・・・俺も人がいいな」


紅子さんをよく見たら、顔も体も緑色をしていて、そこはイメージどおり

なんだけど、それ以外は普通の女性とあまり変わらない。

髪もざんばら髪じゃなく艶のいい変わった色の髪をしていた。

言い伝えによる河童とはかなり違っていた。


ただ困ったのは紅子さんは真っ裸だってこと。

人間の女性にだって負けてない形のいいおっぱい・・・丸出しだし。

目のやり場に困る。

そこは妖怪なんだろうな。


せめて服だけでも着せないと電車に乗せることも連れて帰ることもできない。

持ってきてる俺の着替えでいいか・・。


あ〜あ小玉ちゃんが神の国へ帰ったと思ったら、次は河童か?


しかも俺の彼女って・・・勝手に決めちゃって。


つづく。



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