第25話 想いと想い。
「さあ、説明してもらおうじゃないか!」
「申し訳ありません。すべてエルフィの言う通りです。こちらのマリンさんとエイプリルさんに、僕は邪な気持ちを抱いてしまいました」
衆人環視の中で、僕は誠意を持ってエルフィに向かい土下座しながら謝罪する。エルフィはローブをかぶり身を隠したまま腕を組み僕の頭を半分跨いで、怒りの籠った目で僕を見下ろしている。
「ちょっと貴方失礼じゃない。彼が何をしたって言うのよ」
茫然と僕達の事を見ていたエイプリルさんが、僕を問い詰めるエルフィを止めるために声をかけた。
「これはボクとアキラの問題だよ。関係のないキミは口を挟まないでくれるかな」
「いいえ、関係なくはないわ。彼は私達の大切なお客様、いいえ家族なのだから」
「例え家族でも関係は無いさ、ボク達恋人同士の間の事にはさ」
「恋人ですって!」
エイプリルさんは驚いているのが分かる。それはそうだよな、一か月も行方が分からなかった僕が突然彼女を連れて帰って来るなんて思わないだろうから。
「ふーん、恋人ね。面白いじゃない。それじゃあ、ずっと私達を見ている、貴方達四人は何なの。貴方達もアキラの関係者なの?」
マリン先生が会話に入りシルフィ達に話しかけた。マリン先生の問いに答えるためなのか、こっち近づいて来ているのが分かる。
「私は貴方が誰だかは知らないがマスターと親しい方だと言う事は分かる。マスターを助けてくれてありがとう。私はマスターの従者兼愛人をしているシルフィという」
「助けてくれてありがとうね。私の名前アン。アキラ様の妻をしているわ」
「ありがとな、この恩は忘れないぜ。俺の名前はサラ。ダーリンのハニーだぜ」
「お兄ちゃんを助けてくれて、どうもありがとうございました。私はお兄ちゃんの妹です」
「どういたしまして。でも別にあなた達は気にしなくてよいのよ。私達はアキラのために好きでやったのだから。それよりもアキラもかなり面白くなったみたいだけど、貴方達も相当に面白そうね。後で実験させてね」
「恋人に、愛人に、妻に、ハニーに、妹。はわわ、私が目を離したうちに、どうしよう、アキラ君がハーレムつくっちゃった」
フッフッフッとマリン先生か笑っている。この笑い方はまた何か良からぬ事を考えている時の笑い方だ。マリン先生は四人から何かを感じ取ったのだろうな。さすがに正体が精霊だとまでは気が付いていないと思うけど。
エルフィはそんな彼女達の会話を無視して僕だけを見下ろしている。
「それで話を戻すけど、キミどうしてさ?」
「綺麗な女性に抱きつかれて、僕は嬉しさのあまり、つい」
「つい、何さ?」
「・・・・・・やってしまいました」
「何をやったのさ」
「・・・抱きしめて、胸や、腰や、太ももを触りたくなってしまいました」
「キミ、そんなエッチなことしてさ、楽しんでいたよね。喜んでいたよね」
「はい」
「キミ、最低だぞ。恋人のボクの目の前でそんなことして」
「本当に申し訳ありません」
「キミはさ、女の子の体を触りたいのかな?」
「・・・正直に言うと、一応、僕も男なので興味はあります」
「そう、興味はあるんだ。でも、・・・キミはボクをそうやって抱きしめた事ないよね」
「はい。ありません」
「どうしてだい?キミはボクの恋人、婚約者なんだぞ」
「はい、身に余る光栄であります」
数秒ほどの沈黙の時間。
「僕は綺麗じゃないのかい? ボクの体には興味が無いのかい?」
「ボクは駄目で、・・・彼女達なら、良いの・・・」
エルフィの言葉に感情が戻った。悲しみの感情だ。声が震えている。僕は慌てて頭を上げてエルフィの顔を見上げた。エルフィの目に涙が浮かんでいる。
「貴方は、私を、抱いてくれないの?」
その言葉と共に瞳から一筋の涙がこぼれた。エルフィ心からの言葉を聞いた僕は、恋
しくて、切なくて、胸がしめつけられて堪らなくなり、勢いよく立ち上がってエルフィの体を強く抱きしめた。
ローブの上からでも分かるほどエルフィは震えていた。エルフィの体の震えの原因は僕で、僕の軽率でいやらしいある意味最近の生き甲斐になっていた所があるハラスメント行為が、大切な恋人を傷つけてしまった。僕がエルフィに興味が無いんじゃないかと、自分にではなく、他の女性の方が良いじゃないかと、不安にさせてしまったんだ。
ちゃんと言葉を伝えよう。
僕は美少女巨乳エルフのエルフィーナが大好きで興味ありまくりです。でも、僕は今まで女の子と付き合った経験が無いのです。当然童貞だし度胸もないし、どうして良いか、どうやったらエルフィーナとの仲を進展させる事が出来るのか分かりません。
ですから、正直に言って僕はエルフィとのラッキースケベを期待していました。具体的に言うと、朝の洗面所や昼の食堂、夜のお風呂場などの現場イベント発生です。
出来る事なら、本当は抱きしめるどころかキスがしたいです。一緒にお風呂に入っていっちゃつきたいし、朝から晩までベッドに入ってエッチしたいです。お部屋やベッドは勿論、台所や玄関、外でだってしてみたい。旅行もいいな。エルフィのウエディングドレスもいいな。エルフィが子供を産んだらきっと可愛いんだろうな。
エッチだけじゃない。エルフィと一緒にやりたいことやってみたいことだらけで、僕の一生をかけて色々な経験を二人でしたいですって、一緒に生きて添い遂げたいですって、しっかりと言葉を選んで、自分の言葉で言うんだ。
「僕はエルフィが大好きです。エルフィを抱きしめて、キスをしたい。それから先の事もエルフィといっぱいたくさんしたい。言葉では言い表せない事がいっぱいあるんだ。ずっとずっと一緒にいて、例え僕が最後の日を迎えたとしても、僕は絶対に生まれ変わってまたエルフィーナの事を見つける。そしてまた僕はエルフィーナに恋をするんだ。絶対にね。まだあってから日は浅いけど僕は確信を持って言えるよ」
僕はエルフィがかぶっていたローブのフードを脱がす。中からは輝く金糸のような髪からはみ出す長い耳。神の造形かと思わせる美しい顔を持ったエルフィが現れる。
「エルフ・・・?」
マリン先生が驚きを持って呟く」
「エルフィーナ」
「そんな事言って良いの。私信じるよ。絶対に離れないよ」
僕はエルフィーナを見つめ唇を近づけながら、ありったけの心を込めて伝える。
「エルフィーナ、僕はキミを愛しています」
「はい、私もアキラを愛しています」
僕は二度目のキスをした(一回目の記憶は無いけど)。エルフィーナの唇はとても柔らかくて、とてもあまい味がした。
「ぬっふっふ。どうだいキミ達。これで分かっただろう。アキラはボクのことが一番好きなんだ」
エルフィは上機嫌に皆に向けて話している。
「分かっていますよ、マスター。あのラブコメみたいなセリフは責められて仕方なく言ってしまったのですよね」
「私も分かっていますよ、旦那様。旦那様が本当は妻である私を一番に思ってくれている事。私いつも旦那様の愛を感じておりますもの」
「ダーリン、俺だってダーリンを愛しているぜ。ダーリンには俺の初めてを全部あげるって決めているし」
「お兄ちゃん、私はお兄ちゃんの初めてが欲しいな」
「姉?姉の立場はどうかしら。・・・まだポジションが空いているわよね?」
「何? エイプリル、あなたもアキラのハーレムに入りたいの?」
再びライーズの町に向けて歩き出した僕達。マリン先生とエイプリルさんも増えて中々に賑やかな事になっている。
エルフィの件の後に僕は彼女達をしっかりと紹介してこの一か月間にあった出来事も大体話しておいた。勿論エルフィがお姫様でシルフィ達が精霊である事は教えてない。森の中で出会い一か月間の間助け合って生活していたと説明をしたので、嘘は言っていない。マールの事はなんて言おうか。マールは猫だけど魔物らしい。今は何かあってはいけないのでエルフィのマジック・ハウスでお留守番をさせている。早くマールもマジック・ハウスから出してあげないと。きっと寂しがっているだろう。
まあ、色々あったけど何とか事なきを得て安心した。逆にエルフィとキスできたのだから幸運な一日だったのだろう。
今僕の周りには沢山の人が居る。皆僕に優しくしてくれて毎日が充実している。元の世界では得られることが無かったものだ。そしてそれは今後も続いていくのだろう。とても楽しみだ。
僕は遠くに見えてきたライーズの町の城壁を見ながら、久しぶりにそんな事を考えていた。
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