第13話 森の妖精との出会い

 僕は今命の危機を迎えている。


 予想通りだ。


 マリン先生のおっぱいに釣られて死の森にやってきた僕は、森に入った途端に多数の魔物に襲われて逃走、マリン先生とエイプリルさんとは逸れてしまった。


 今は頭が2つついた黒犬に追いかけられ、命掛けの全力疾走中。走っている場所も方向すらも分からない。


 こんなことになるのならさっきおっぱい触っておけば良かったと後悔する。


 マリン先生が魔物の名前はオストロスと言うと教えてくれたが、僕の記憶が正しければ地獄の番犬ケルベロスの弟で、牛だか羊だかの番犬だった気がする。

 ゲームなんかでは中盤辺りに出てくるそれなりの強さを持った魔物。レベル6の僕なんかじゃ絶対に倒すことが出来ないし逃げることも出来ない奴。


 そう、逃げきれない。今は何とか走っているけど時期に体力が尽きる。その時が僕の最後になるかもしれない。


 本当に後悔している。頭を下げてでもさっき見せて、揉ませて、吸って、舐めさせて、挟んで貰うのだった。未練だ。このまま死んでしまったら僕は悪霊になって森に来る女性冒険者達のおっぱいを狙うことだろう。


 いや、ふざけている場合ではなかった。こんなんじゃ本当に死んで悪霊となってしまうな。


 どうしようか、一か八かいっそ体力がある内に戦うか? 


 でも正直あの犬が怖い。狂ったような狂気的な目と鋭い大きな牙。そんな怖い頭が 2つもあるのだから2倍怖い。

 いつも元気なアイツも女の子かと言う位に竦みまくっている。


 でも、やらなきゃ駄目だよな。 やってみるか。そう、やれば出来る!はず。


 まずは少しでも自分に有利そうな場所まで。僕は辺りを見渡し場所を探す。


 先に見えるひと際大きな樹と開けた土地、あそこが良さそうだ。



「そこのキミ、早くこっちに逃げて」


 出会いは突然だった。目標の大きな樹の木の上に人影が見えた。こちらに弓を向けている。


 どうやら僕を助けてくれるみたいだ。近づくにつれて、次第に姿がはっきりと見えて来る。流れる長い金髪の女性で緑色を基調にしたローブを纏っている。


あれってもしかして


「避けて!」


シュ!   シュ!


 樹とオストロスとの距離は30メートルほど、金髪の女性が矢を放った。音からすると2本の矢が放たれたようだ。


 僕は走りながら体を反転させ姿勢を低くすると同時に、身に付けていたコンバットナイフを右手に装備する。


 オストロスは僕と後5メートルの所まで近づいていた。1本の矢が僕の背中の上を通り抜け、オストロスの目の前に突き刺さり、驚いて矢を避けようとオストロスが体勢が崩す。


 今だ! 

 僕はすかさず武技を発動。


「剣技刺突閃光一式・雷光」


 僕の持つ技で一番速度がある雷光、稲妻の速度での刺突。狙うのは大きな体。頼む、当たってくれ!


 ズバン!!

 

 ブス!


 武技は完璧に発動し、体勢を崩したオストロスは僕の雷光を避けること出来なかった。

 やっぱり武技の力は凄まじくオストロスを真っ二つにしたばかりか、背後にあった木々をも倒してしまっている。


 まだ油断は出来ない、僕は残身を残したまま、すうっとゆっくり立ち上がる。


「痛っ!」


 尻に猛烈な痛みが走る。子供の時に受けた予防注射以上の痛みだ。何時攻撃を受けた?


 僕が尻を確認すると木製の矢が刺さっていた。それはもう矢鏃がすっぽりと隠れる位にちゃんと刺さっていた。


「毒耐性が発動しました」


 どうやら毒も塗ってあるらしい。体がふらつく。鼓動が早い。毒耐性では防ぎきれない毒なのか? 僕は地面に膝をつく。意識が朦朧とする。体がしびれる。


「ごめんねー大丈夫。オストロス狙ったのだけど、キミに当たっちゃったよ。テヘ」


 僕は朦朧とする意識で声の主へと振り返る。声の主は僕が思った通りエルフだった。

 人間で言えば17、18歳くらいに当たるのかな。輝く金糸のような髪からはみ出す長い耳。神の造形かと思わせる美しい顔立ちと前をはだけさせたローブの中に見える細い肢体は僕を一瞬で虜にした。


 しかしエルフは胸が薄いと誰が言ったのだろうか?


 だってこのエルフ巨乳じゃん!!


 エドモンドさんから話を聞いてエルフには絶対に会いたいと思っていた。

 

 これがエルフの力だとでも言うのか。

 

 マリン先生もエイプリルさんもとても綺麗で美しい人だけれども、彼女は次元がちがう。


「おーい、キミ大丈夫? 僕の声聞こえてまーすか?」


 まさかの僕っ子!? 


「大丈夫です。大丈夫です。僕全然平気です。むしろ調子は良い方です。さっきは援護ありがとうございました。この矢をお返しします」


 是非、いや絶対に彼女とはお近づきになりたい。少しでも好印象をもって貰いたい。


 僕は立ち上がり神速の動きで彼女に近づき、笑顔を見せながら尻に刺さった矢をスブっと引き抜くと、上着で血を丁寧に綺麗に拭いてから彼女に矢を返した。


「ありがとう。でもキミすっごくお尻から血が出ているよ。それにこの弓にはまだらタランチュラの毒も塗ってあったし本当に大丈夫なの?」

「血も毒も気にしないで下さい。僕はこんなの直ぐに治りますから」

「あ、本当だ。血が止まったし顔色も良くなったよ。キミすごいね」

「いいえ、それほどでも」

「さっきの武技も凄かったし、本当にキミはすごいね」


 エルフの僕っ子エルフは僕のことを凄い、凄いともてはやしてくれる。第一印象は良かったのかな。


「僕の名前はアキラ。アケカミ・アキラです」

「うーんと。僕の名前はエルフィーネ・フォ、じゃなかった。僕の名前はエルフィーネ。エルフィって読んでね」


 彼女は僕の手を差し伸べた。わざわざ手袋を外して握手を求めてきたのだ。


 めっちゃ、興奮する!


 僕は壊れ物を扱う様に優しくそっと握りかえす。柔らかくて温かい。エルフィーネからはラベンダーの花のような香しい良い匂いがする。


「あれ?この魔力のかんじって。キミは?」


 エルフィーネは僕から何かを感じ取ったみたいなのだが、僕の意識はすで涅槃の向こう側に旅立ってしまっていた。いや、涅槃は悟りの世界だから違うか。


 僕は生きたまま成仏してしまいそうな幸福感と達成感で一杯になった。今の僕にはもうこの手はなしたくない。ずっと繋いでいたい。


 今回触る事は成った。次はスリスリと・・・


 ムフフッ。


 邪な思惑にまみれた僕の顔と手を比べて何かを考えているエルフのエルフィーナ。


「ふーん。さっきの強さといい、僕見つけちゃったかも」


 この時僕は、エルフィーナの様子の変化に、何一つ気がつくこともなく、あいつと一緒にいつもの通りに興奮していた。


「毒耐性のスキルが毒無効スキルに進化しました」

「オートリジェネートのスキルを習得しました」

「武技 縮地を習得しました」







名前 アケカミ・アキラ  男  年齢20

来訪者

レベル12  力 A 体力 A 速 A  賢さ A  魔力 S

属性 地 水 火 風 光 精 召

加護 ○○神の加護

習得スキル

脱力・・・体の力を抜いて動きやすくする。

毒無効・・・すべての毒が無効。

バーサーカー・・・混乱状態になるが身体能力100%アップ。

身体強化Ⅰ・Ⅱ・・・身体能力向上 Ⅰ20% Ⅱ40%アップ。

ステータス・・・自分のステータスを見る事が出来る。

人望・・・人の心を捉えやすくし離さない。

魔力操作・・・自分の魔力をコントロール出来る。

魔力感知・・・魔力の有無、強さ、場所などを把握することが出来る。

鑑●

オートリジェネート(小)・・・僅かだが魔力がある限り傷の自己修復を行う。


武技スキル

剣技刺突閃光一式・雷光・・・稲妻の速度での刺突。練度が上がれば雷を纏う。

剣技刺突閃光一式・桜花・・・雷光より速度は落ちるが多連激技。

八剄・・・発剄、寸勁、沈墜勁、十字勁、纏絲勁、爆発勁、透化勁、浸透剄。強力な一撃で敵を倒す

縮地・・・神速の移動。熟練者は空を蹴る事も出来る。

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