第5話 ライブ、スタート
一通り申請を済ませ、私はバーチャルチェンジャーを巻き、ダンジョンの中へと入る。
申請と言うのは、入る人の人数、名前、本籍地、電話番号、使用する武器と防具、その他病気や疾患はないかの確認だ。
特に重要なのは、電話番号と武器だ。
まず、携帯電話を持っていないとダンジョンに入ることは禁止、これは行方不明になった時に面倒になるからだ。
次に武器、銃刀法の改正で、武器の所有が緩くなった。
武器は必ずどのようなものを使うか明記し、特定の武器は使用し終わったら指定の場所に預けなければならない。
ちなみに丸腰でも入れる……自己責任という事だろう、多分。
てなわけで、私は確認のために説明書を見た。
『まず最初に、携帯電話の電源を入れてください、次に、携帯に向かって「ライブオン!」と叫んでください、最後に腕輪に携帯を差し込んでください、こうすると、ライブ配信が自動的に行われます』
……バス車内でも見たが、意味不明だ。
ライブ配信が自動的に行われるってどういうこと? ライブオンって何?
そんなことを考えていると、突然、不気味な呻き声が響き渡った。
目の前には、緑の肌のモンスターがいた。
ダンジョンに詳しくない私でも、アレが何なのかは知っていた。
「……ゴブリン」
ダンジョンの最初の方にいる怪物、これだけは、ダンジョンに知らない人でも聞いたことのある存在だった。
どどどど、どうしよう……。
「ええい! こうすればいいんでしょ! ライブオン!」
私は携帯電話に向かって、不思議な呪文をコールした。
すると……。
『オーソライズ、百地美羽、ログイン』
……携帯電話からそんな音声が流れ、それと同時に、テクノ調のアップテンポな音楽が流れ始めた。
「なになに!? なにこれ!?」
またも状況が呑み込めず、私は慌ててしまった。
目の前の怪物は私を襲おうと武器を構えて走ってきている……このままじゃやられちゃう!
「えーと、えーと……腕輪に嵌めるんだよね!?」
私は説明書の内容を思い出し、携帯を腕輪に嵌めた。
……嵌めた瞬間、私の体を光が覆い、思わず腕で光を遮った。
「な、なに!? なんなのもう!!」
混乱のあまり、パニックになってしまう私。
依頼を受けたばっかりに、意味不明なことの連続、早く家に帰りたい……。
そんなことを考えていると……光が治まり、音声が耳に入ってきた。
『百地美羽、ライブ、スタート』
ら、ライブ……スタート?
どういうこと? ……あれ? なんか私の格好……おかしくない?
あれ? なんか目の前にカメラみたいなものが見えるんだけど? これって……ドローンカメラ?
ていうかこの格好……なんか見覚えあるんだけど……あれ? 目の前になんか画面が表示されてるんだけど? しかも複数……なんだこれは?
『こんみうー、もう開始?』
『なになに? 誰この人!?』
『これ美羽ちゃん? ガチ?』
……左側の画面にそんな文字が流れ始める。
ど、どういうこと?
私はふと、右側の画面を見てみた……そこに映っていたのは。
「えぇ!? こ、これ……これは……」
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