第42話 今後の領は?
星空を見ながら酒を飲んでいる隣にはミレイさんがいる。
その正面にはコウジュが、隣にはモーザさんがいる。
「こういうのやってると少し平和になった気がしない?」
「そうねぇ。この地でこんなことができる日が来るなんて想像できたかしら」
ミレイさんも空を見ながらそう語る。
「自分はこういう日が来るのを夢見てたっす」
「そりゃあ、あっしもそうだぜぇ。だがよぉ。一番望んで居た人が居ねぇのが残念だよなぁ?」
コウジュとモーザさんは俯きながら呟く。
二人ともタイガさんとは付き合いが長いからボク以上に思うところがあるんだと思う。
「兄貴は……喜んでると思うわよ? この状況みたいに皆でお祭りを開くのが夢だったと思うわ。いやいのは残念だけど、それは兄貴だったら『自分が弱いのが悪い。お前たちが気にすることじゃねぇ』って言うと思うわ」
それはまさしくボクがタイガさんが死ぬ間際に言われた言葉と似ていた。
ミレイさんは流石にタイガさんのことをよく知ってる。
凄いや。
「ボクがタイガさんが亡くなる直前に言われた言葉に似ているよ」
「自分のせいなんすけどね……」
コウジュは目頭を抑えて過去を後悔しているようだった。
「おめぇは反省した方がいいたぁ思うぜぇ。だかなぁ、この夢のようなことを可能にしたのは誰だ?」
「……シュウイっす」
「だろぉ? これからぁよぉ、シュウイのことを助けてやってよぉ。タイガさんが思い描いた領を作っていくってのがぁ、一番の弔いになるんじゃねぇか?」
モーザさんは優しく諭すようにコウジュへ向けて言葉を紡いだ。
「そうっすね。シュウイ、自分のことをビシバシこき使って欲しいっす! じゃないと、自分の気持ちが収まらないっす!」
「うん。有難う。色々と助けてね」
ボクの内側にいるタイガさんが喜んでいるよあうな気がする。胸がとても温かいのだ。
「これからはどうするわけ?」
「んー。とりあえず何人かこの領に来たいって言ってくれた人がいたし、手伝ってくれる人もいそうなんだ。だから、家を建てていって、食料の調達とかは最初はボクがやろうかなって」
ミレイさんの質問に対しては今思っている構想を語る。
「それじゃあ、仕事がない奴らがどてくるんしゃぁ、ねぇか? ギルドはまだできてねぇがよぉ、誰かにやらせた方がいいんじゃねぇか?」
ギルド長としてのモーザさんの意見はかなり貴重だ。たしかにそうかもしれない。何もしなくても食べれられる領だと思われても困る。
それぞれが、支え合って働いていって食べていくような領にしないと。
「そうですね。じゃあ、仮にでもいいからギルド長のような人を用意した方がいいですね」
すると、手を挙げる人物がいた。
「私がやろっか?」
ちょっと心配である。
「ねぇ、なんで黙ってるの?」
いやー。どうしようかなぁ。
受付頼んで大丈夫かなぁ。
「ねぇってば! おい!」
「あぁ。ごめん。なんだっけ?」
「だから! 私がギルド長やるって言ってるの!」
聞こえてるんだけど。
本当に大丈夫かな。
「あのね、ミレイさん。ギルド長って、依頼を受けてそれをランク分けして、それをやりたいって言う字兵がいたら受け付ける。そのあと成功したら報酬を出す。って感じなんだよ?」
「分かってるわよ!」
「ねぇ、ホントにできる?」
「できるから! ふざけんじゃないわよ!」
「……まぁ、やってみよっか」
「シュウイ! 酷くない!?」
ボクは心配なんだよ。
天然なミレイさんにホントにギルド長が務まるかどうかをさ。
「ダァッハッハッハッ! こりゃぁおもしれぇ! 姐さんがギルド長!」
「プッククク。ダメっすよ。モーザさん。笑っちゃあ。姐さんだって、真剣にやろうと思ってるんですよ?」
「けどよぉ。姐さんに務まると思うかぁ?」
「いやー。ちょっとひやかしにいきたいっすね」
モーザさんとコウジュがそんなふざけたことを言っていると。隣にいたミレイさんは顔を真っ赤にして震えている。
「おまえらぁぁ。なんだってぇぇ!? こんのクソ野郎共がァァァ!」
怒りに任せてテーブルを叩くと笑いながら二人は立ち上がって走って逃げた。
その後を追って行くミレイさん。
周りのみんなも「やれやれー!」「いいぞー!」と楽しんでその様を見ている。
いらろんな領の人が集まるからどうなることかと思ったけど、皆が楽しそうでよかった。
ちょっとした混乱もあったけど、なんとか収まったし。よかったね。これからこの領を大きくしていく。
毎日がこういう楽しい領になればいいな。
毎日お祭りを開くっていうのも面白いかもね。
それが名物になれば楽しいかも。
空には一段と光を放っている星が煌めき、その周辺には細かくキラキラと輝く星達が散りばめられている。
それはやがて大きな川のような物になり、一個の塊のように見えてくる。
「なんかあの星はタイガさんを表してるみたいだなぁ」
「ふふふっ。あれは、今のシュウイじゃない? その周りが私達で、これからの領を表してるんじゃないかしら?」
いつの間にか戻ってきていたミレイさん。
心なしか距離が近い気がする。
「そうかな。タイガさんみたいになれるかな?」
「そうねぇ。別に兄貴みたいにならなくていいんじゃない? シュウイらしく、優しくやって行けばいいと思うわよ?」
「……そっか。うん。有難う」
ボクが顔を向けてお礼を言うと女神のような笑顔を見せて頷いてくれた。
胸がキュウと締め付けられたのは内緒。
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