第10話 帰ってきてからの談話

「みんなよくやったな。亮、初依頼どうだった? なんか大変なことになったみたいだけど?」


「ふっ。ミスでもしたのか? 調子に乗るからだ」


 護さんの俺への問いかけに割って入り、嫌味を言ったのは流さん。

 俺に負けたのが気にいらなかったのだろうが、本気で戦った結果なのだから結果はしっかりと受け止めて欲しいものだ。


 帰ってきたらあったのだ。

 本来こんなに会うことは無いそうだ。

 たまたま流さん達も単発の依頼だったみたいだ。


「違います。別れ話をしたら仲間を呼んだんですよ。ざっと五十人くらいいましたね」


「なるほど。準備してたわけだね」


 護さんがそういい腕を組んで怪訝な顔をする。

 ゴロツキは考えることが読めるからな。

 気分が嫌になるようなことをやろうとしていたのは何となくわかる。


「はい。スマホを操作したらよしさんから無線が入ったので……」


「タチが悪いな。引き続き監視が必要そうか?」


 少し考えた後に答えた。


「……そうですね。手は出さないように釘はさしましたが。万が一があると行けないので」


「わかった。雅人、短期間だけアレつけておいてくれ」


「わかりました。場所はどこです?」


「ここだ」


 スマホを見せてなにやら話をしている。

 アレとはなんだろうか。

 凄く気になる。


 そして、なにやら怪しい匂いもする。

 大丈夫だろうか。


「亮くんは何も心配することないよ」


 近づいていて話してくれたのはよしさんだった。

 ホントに優しいな。

 この人がいないとこの会社はダメなんじゃなかろうか。


 だから、副社長なのかな?

 何か理由があるんだろう。


「ねぇ、亮くん? 亜希さんなんだけどさぁ。亮くんと連絡取りたいみたいで……。これが電話番号」


 小さい声で話しかけながら近づいてきた咲月さん。

 メモ用紙を渡される。


「えっ? 何で俺?」


「うーん。わかんないけど、お礼が言いたいんだってぇ。規則だからダメだって言ったんだけどねぇ。根負けしちゃったぁ」


 根負けしちゃって規則破るのはどうなんだ?

 それは大丈夫なのだろうか。

 本当は社長にちゃんと言わないといけないん、だろうけど。


 取り敢えずポケットに入れた。

 まぁ、後で考えよう。

 今は疲労で頭が働かない。


「よーっし、じゃあ、亮が無事に仕事を終えた記念に、飯でも行くか?」


「それって残業代出ますか?」


 それを聞いてきたのはヤンキーみたいな蓮。

 意外すぎるんだけど。

 普通お前みたいなやつは「ご馳走様です!」って言ってついていくものじゃないのか?


「いんや出ねぇよ? 亮は、何食いたいー?」


 蓮さんに適当に答えてスルーする護さん。

 これいつも聞かれてるのだろうか。

 なんだか、慣れている気がする。


「俺は……寿司……ですかね。しばらく食べてないんで食べたくて……」


「お前この前好きなの食えって渡しただろ!」


「そうなんですけど、なんかあの時は食う気になれなくて……今はなんか仕事終わりって感じで食いたくなりました!」


 俺がそう答えると。

 ニカッと笑って肩を組んできた。


「連れてってやる! 好きなだけ食え!」


「有難う御座います!」


 キチッと礼をする。

 すると、聞きつけたかのように帰ってきた人達がいた。


「今戻ったわ! あー! 疲れた! 私はコンパニオンじゃないっつうの!」


 ガンッと椅子に鋭いローキックを入れるララさん。

 悲鳴のようにキーッと言う音を出して椅子がクルクル回っている。


「お帰り。また言い寄られた?」


「分かってますよね? 私目当てで依頼してんの? 私外してくださいよ」


 机につっ伏す。

 その後ろから続々と帰ってきた。


「仕方ねぇだろ? 他の人じゃ嫌だって言うんだから。まぁ、月一回の我慢だと思ってくれや」


 ララさん達の今日の依頼はお得意さんらしく。

 ある場所からある場所へ高額の金を移動する時の護衛らしい。


 それで、近くで守ってくれる人をララさんに指名するんだとか。

 指名料も取ればいいんじゃないかと俺なんかは思ってしまうが。


 金額が大きいみたいで、危険度が高く依頼料も結構な額になっているんだとか。

 それでは、断るのも会社的にはしたくないんだろうな。


「はぁぁぁぁ」


 机にうなだれているのはいいがこっちにその潰れているものを見せないでくれ。

 気が変になりそうだ。


「今から寿司く────」


「行きます!」


 食い気味にララさんが反応した。


「いに行くんだけど、聞くまでもなかったな。お前らはどうする?」


 伴さんと御子柴さんに聞いているみたい。

 だが、喜びようを見ると行くようだ。

 二人ともガッツポーズをしている。


「「ご馳走様です!」」


 綺麗な礼をしている。

 九十度の最敬礼だ。


「お前達は潔ぎが良くていいな」


 ホントに気持ちがいいくらい体育会系だ。


「なんか、私まで伴さんみたいになりそうで嫌なんですよね!」


「ガッハッハッ! いいじゃねぇか! 鍛え方教えてやろうか?」


 ララさんに向けて筋肉を見せつけている。

 そういう話では……。


「そういう話じゃないです! 鍛えたくない! この体型のままがいいの!」


「そんな柔らかそうな身体のままじゃ敵にやられるぞ!?」


 伴さん、脳キンって言葉がピッタリじゃないですか。

 ホントに筋肉の事しか考えてないんですね。


「いいんです! もう! うるさい! 護さん! 早く寿司に行きましょう!」


 ララさんがご立腹だ。

 腰に手を当てて怒っているのだが。

 ホントにスタイルいいですね。


 いやー。

 この会社賑やかでいいですね。


 灯、この会社は正解だったみたいだ。

 俺楽しくやれそうだよ。

 脳裏には在りし日の大切な人が微笑んでいた。

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