vs18 事故の阻止を!
翌日。
マリミエドが登校している間に、ギルベルトは王立図書館へ向かおうとする。
馬車に向かう途中で、走ってくるエレナに呼び止められた。
「小侯爵さま!」
「エレナ…どうした?」
立ち止まって振り向くと、一冊の本を渡される。
「これをお読み下さい。これから起こり得る大事な事が書かれています」
「何…⁈」
驚いて、題名を見て眉をしかめる。
「眠れる姫は溺愛される…⁈」
「お静かに! どうか、馬車の中で最後までご確認を…悪役令嬢についても分かるかと思われます」
そうエレナに小声で言われ、ギルベルトは戸惑いながらも馬車に乗り込む。
パラパラとページをめくると、確かに、〝天使の涙〟の事が書かれて驚く。
〈大衆小説だよな…?〉
その次に、〝王女さまのパーティー〟という題名があった。
〈どういう事だ…?〉
その次の題名が〝狩猟大会〟…
王女のパーティーと狩猟大会は誰にでも分かる事だが、天使の涙が盗まれる事件など、予知魔法でもない限り分かる筈もない。
〈いつ書かれた物だ?〉
そう思い最後のページをめくると、手紙が入っていた。
宛名はないが、裏にエレナのサインがある。
確認しようと思うが、王立図書館に着いて馬車が止まったので上着の胸ポケットに手紙をしまって外に出た。
一方のマリミエドは、魔法の授業前だった。
魔法で出した光の中に回復ポーションを入れて融合させる高等技術だ。
ポーションをそのまま入れてもいいが、気化して融合出来たら最高得点となる。
これは聖女の〝完全回復《ヒール》〟を人工的に作ろうという魔法技術である。
考えたのはユークレースの祖先。
なので、指導はユークレースが行っていた。
指導員が一人しかいないので、全体に結界を張っていた。
その中でマリミエドは一人、皆の持つ回復ポーションを見回していた。
過去、この授業では爆発が起きている。
全員が怪我を負った大事故だ。
その時に、マリアが全体ヒールを使って〝聖女〟として崇められていくようになる。
事故の原因は劣化したポーションを使った事による暴発…。
ーーーが…。
マリミエドがその劣化したポーションを探そうと朝早くに来た時。
なんとマリアが一つのポーションに明らかに毒っぽい液体を入れていたのを目撃したのだ!
〈…何故あんな事を…?〉
自分を聖女として扱ってもらう為なのか?
〈そうだとしたら許せない!〉
中には入院した子もいたし、爆発させてしまった女の子は、ガラスの破片で顔に治せない傷を負ったのだ。
〈なんとしても阻止するわ!〉
わざわざ今でなくても、いくらでも〝聖女〟として崇められる機会はある。
他人を犠牲にする聖女など、聖女ではない。
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