第13話 作って貰った【体感温度を下げる付与】はオリジナル付与!? アクセ売れますね!!
「兄上、良かったですね!」
「ああ!」
「それと、一つご依頼があるんですが良いですか?」
そう言ってお団子にしていた簪を取り、それを見せると二人は首を傾げていた。
此方の世界に来た時につけていた、母の形見の簪だ。
「愛用している簪なんですが、これをプラチナか銀で作れます?」
「作れるが、付与する内容は? 宝石は何にする?」
「日差しを感じにくくするか、遮るみたいな付与って難しいですよね?」
「この地域は日差しが強いですからね。母上も持っていましたし作れますよ」
「本当ですか!?」
「ええ、意外と女性にとってはポピュラーな付与なので作れます。他のアクセサリーもあれば作りましょうか?」
「でも、宝石のついた髪ゴムとかはなぁ……」
「確か姉上はシュシュ? とか言うのを持っていましたよね? それに隠れるみたいに宝石を入れ込んで作れば作れますよ」
「それは有難いです。シュシュ持ってきますね」
「その間に簪を作っておくよ」
「ありがとう御座います」
「兄上、宝石は何が良いでしょうねぇ」
そんな声を聴きつつシュシュを着物に合わせて買ったので5つほど持ってくると、布地への定着作業も出来ると言う事だったのでお願いした。
無論彫金の技も必要だが、二人は私の為に色々今日は尽くしてくれたおかげで、髪留めには日差し防止の付与がされてホッとする。
「あ――助かりますぅぅ!! ギルドに行くまでの間が本当に苦痛だったので」
「少し距離がありますからね」
「早速髪留め付けさせて貰いますね」
そう言って新しく作って貰った簪でお団子を作り、簪にはプラチナに軽量付与がされていて、石には大粒のルビーを使っており、シッカリとUV対策が施されていた。
他のシュシュにも布地の所に小さな宝石を埋め込む円形の台座が付いていて、そこにカッティングしたダイヤを使ったUV対策。
これで日差しに負けない私が爆誕したのだ!
「これは有難いです……。もうダリルシェイドについてから日差しの強さが大変で」
「でしょうね」
「そう言えばお父様は?」
「今お風呂の工事に付き添っています」
「おお、今日からお風呂のお湯が使えるわね!」
「あのスーッとする入浴剤は神アイテムですよ……」
「アレは良かったなぁ……」
「ふふっ ダリルシェイドでは必須アイテムですね」
「お昼は俺が作ります。野菜だけお願い出来ますか?」
「ええ、【お取り寄せ】ですね」
こうして私とセンジュ君が台所に移動すると、その様子を嬉しそうに見ているエンジュさんには気が付かず、ただ過ごしやすくなった事にホッとしながら野菜を各種出したりして冷蔵庫に入れたり、お肉も入れたりしながら過ごした。
「昼が出来るまでは兄上と」と言われ、真剣に色々作業をするエンジュさんの前に座り、私も加工の技術を上げる作業をする。
すると――。
「身体は楽だろうか?」
「え? ええ、とても楽です。やはり体まだ慣れてない事もあって……この涼しさはホッとしますね」
「良かった……。初めてちゃんとしたものを作れたよ」
「ふふ、これからは色々彫金しないとですね」
「ああ、これからスキルも上げつつ頑張る。でも、さっき言った体感の付与は初めて聞いたから、良かったらこれからもセンジュにアドバイスを与えてくれないか?」
「それは構いませんよ」
そう会話しながら加工レベルを上げるんだけれど、中々上がらない。
気分転換に違う事をしようかなと思い「ステータスオープン」と口にするとブオンッという音と共に私のスキルが出て来た。
どれどれ……。
【石スキルレベル:鉱石加工レベル7・宝石加工レベル4・貴金属加工レベル4・宝石細工2】
うーん、上がりにくいな……。やっぱり回数個数を重ねないと駄目ね。
まだまだスタートラインだし頑張らなきゃ。
でも【宝石細工】って言わば【カッティングスキル】の事よね。
コツコツ上げていたら別のスキルが生えたでござる。
でも、凄いカッティングとかあるって聞いたし、頑張りたいな。
これからもスキル上げ頑張ろう。
「付与師の付ける付与の事例あげた本とか無いんですか?」
「一子相伝のもあるから早々ないな」
「なるほど」
「それこそ、さっきの体感温度が下がるなんて付与は誰かに教えたりしちゃいけない。アレは絶対に売れる付与だ」
「ほお……これ一つで幾らくらいするんでしょう」
「紫ヒスイ自体希少価値が高いんだ。それだけで金貨200枚はすると思う」
「ひえ」
「今は石も入ってこないし貴金属も高いから仕方ない」
「な、なるほど」
「それに体感温度を下げる石は大きめの石じゃないと出来ないらしい。詳しくは分からないがセンジュはそう言っていたな」
は――……奥が深いわ。
これに魔物素材とかも使う時があるんでしょう?
付与師って凄いのね……無論その台座だってキッチリ作れないとモノにならないけど。
「その……婚約指輪は出来れば付けて欲しい」
「え、付けますよ?」
「一応5になったから……作ろうと思えば作れるんだが」
「婚約指輪ですか?」
「あ、ああ」
頬を染めてそう告げるエンジュさんに、私は頬を染めて笑顔になった。
途端目を見開いてこちらを見てくるエンジュさんに「そうですね! どんな石がいいかな!」と喜ぶと嬉しそうに微笑んでくれた。
「誕生石が丁度いいが」
「私一月なのでガーネットですね」
「店の名前もガーネットだから縁起がいいな」
「なら、質のいいガーネット出せるようになったら作って貰って良いです?」
「ああ」
「実は宝石加工スキルをゲットしまして。それのスキルも上げたいのでもう暫く待って下さい」
「分かった。納得のいくものが出来たら作るよ」
「はい!」
こうして私の当面の目標は、ガーネットを沢山出してスキルを上げ、更にガーネットを加工することで宝石加工スキルを上げることに決まった。
ガーネットは色々な付与に使われるらしく、重宝するのだとか。
すると店のドアが開きお父様が帰ってきた。
「ふう、昼前に何とか風呂の工事が終わったぞ」
「やった――!」
「ユリ、さっきのネックレスと簪を父上に見せてやってくれ」
「はーい」
「お、何か作ったのか」
「はい、作って頂きました!」
そう言って簪を取って手渡すと、UVカットな魔法付与にお父様は「アルメリア……」と涙ぐみ、ネックレスを見せると驚かれた。
「いや、待て、この大粒のルビーも凄いがその紫ヒスイも希少価値だぞ!」
「出しました!」
「そうか、出したのか! なら仕方ないな!」
「こちらのヒスイには体感温度を下げる付与と、ダイヤに涼しい風を感じる付与をして貰いました」
「それはまた……オリジナル付与じゃないか」
「作って欲しいと言ったのはユリだ。それを付与したのはセンジュだが。父上、これは売れるぞ」
「ああ、売れるな……」
「店内今何もないですもんね」
「今から沢山作るさ。ユリも沢山宝石や石を出して欲しい」
「はい!」
「賑やかな店に戻ると良いな……本当にあの娘と婚約させたばかりに家が一気に傾いて」
「貧乏神だったんですね。その方の今いる店大丈夫でしょうか?」
「さてな? まぁうちには福の神が来た訳だが」
そう言って私を撫でるエンジュさんに私も微笑むと、素敵な笑顔を見せてくれた。
何でも、戦争の所為で全く貴金属は手に入らないのでスキル上げも出来ないし、宝石もあるにはあるが質が良い物は買えなかったらしく、かなり苦労したらしい。
うう……我が家が苦労人達すぎるっ!
頑張らなきゃ!! 頑張って幸せにしてあげなきゃ!!
その日の夜、忘れていたと思い出し連絡用の魔道具を机に置き、便箋を購入して手紙を書き始めた。
此方の世界の文字って書けるのかなって思ったら意外と書けた。オプション的になっているんだろうか?
「えーっと、ダンさんには無事就職出来て、商業ギルドと冒険者ギルドで契約した事書かないとね」
その事も加えて戦争がどうなっているのかも不安だと言う事を書きて封をして送り、ノヴァ様はまだ到着してないだろうと思って書くのは止めた。
取り敢えずダンさんだけにでも無事を知らせたかったのだ。
返事が来ないと言う事は忙しいのだろう。
それならばと寝ることにし、涼しい気持ち良さの中でグッスリと眠ったその頃――。
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