第4話 お仕事の合間に折角『テイマー』があるので、ペットが欲しい!!
化粧落としでまず化粧を落とし、人の気配がない事を何となく理解して、タライの上で着物と下着を脱いで、水風呂だが頭からペットボトルの水を被って洗っていく。
お気に入りのシャンプーにコンディショナーで髪を整え、頭にタオルを巻いたら次は身体だ。
此方もお気に入りのボディーソープで垢スリを使って身体を洗い、ペットボトルの水で軽く流して今度は顔を洗顔フォームで洗う。
アチラの世界の商品はよく汚れが落ちるのか、沢山汚れが落ちて凄かった。
こんなに汚れていたのかと驚いたくらいだ。
一旦タライの中の水を排水溝に流しもう一度タライの上に立ってペットボトルの水で全身を洗い流す。
スッキリしたところでバスタオルを使い身体を拭き、下着を着けて寝る用の着物に着替え、タライを生活魔法で乾燥させ、その他のタオルやバスタオル、着物はお取り寄せで買った洗剤と柔軟剤を使って洗う。
丸い水の中でじゃぶじゃぶと揺れる洗濯物。
汚れが落ちたのがスキルのお陰で分かり、終わったら次は脱水させて風魔法で乾かしていく。
温風や熱湯で洗う事も出来るが、着物なのでそれは出来ない。
綺麗に洗い終わり、乾燥もしっかり出来ると机の上に畳んでおいて下駄も洗って乾燥させる。
後は朝使ったら乾燥させてアイテムボックスに入れればOKだ。
「ふう……身体が綺麗になると気持ちがいい。明日も入って次の日は5日お風呂入れないから気を付けなきゃ」
無論生活魔法で身体を洗う事は可能だが、やはり垢スリで身体を洗いたい。
宿屋にはシャワーはついていたが、お風呂はついていなかった。
お風呂には入りたいなぁ……稼ごう。
稼いで何時かは一軒家!! それを目標にしよう!!
そう心に決めてグッスリと眠った次の日、着替えと軽い化粧を済ませるとダンさんがやって来た。
今日もプラチナ鉱石が欲しいらしいので頑張って生成しようと思う。
「明日にはいなくなっちまうんだよなぁ」
「そうですよ」
「他にどんなスキルがあるんだ?」
「色々ありますけど、調理スキル10に生活魔法スキル9に幸運6が無難なとこですかね」
「いやいや、スキル10ってカンストだぞ」
「そうなんですね」
「は――……やっぱ嫁に来ないか?」
「嫌です」
「むう……しかし23歳だろう? この世界では22から28までは女性も男性も婚期って言われていて、早く相手見つけておかねーと、直ぐプロポーズされるぞ?」
「う……そうなんですね」
結婚適齢期って奴なのか。何て面倒な。
ちなみに王太子とノヴァ様には婚約者がいないらしく、貴族の女性たちはこぞってアプローチを掛けているのだとか。
王太子は理想が高い為、大体の貴族女性たちは去って行っているらしいが……。
「あの御面相で理想が高いんですか、最悪ですね」
「ははは!」
そう言いつつ只管プラチナ鉱石を作っていると、ダンさんは戦争をしている国の事を教えてくれた。
なんでも【鉱石の国ノシュマン王国】と、鉱石を巡っての戦争らしく、鉱山のある山を独占しているノシュマン王国に対し、その鉱山を渡せと喧嘩を吹っかけたのがこの国である【金の国シャース王国】らしい。
【鉄の国サカマル帝国】は戦争をやめるようにシャース王国に何度も言いに来ているらしいが、プライドの高いシャース王家はそれを拒否。勝つまで戦うと言っているらしく、現在は負け戦と言われる程やられているらしい。
「金じゃ勝てないってことだな」
「お金は大事なんですけどね」
「ははは! 確かにな!」
「私、ダイヤ王国の首都についたら、何時か一軒家を買うんです。お風呂にゆっくり入りたい!」
「普通の家ならどこにでも風呂はあるからな。ダイヤの国は水も豊富だし色々豊富だ。人柄もいい奴も多いが、たまにどす黒い奴もいる。まぁ人間ならどこでもそうだろうが」
「そうですね。そう言えばテイマースキルを持っているんですが、簡単に捕まえられて楽なのって何かいます?」
「そりゃスライムだろう」
「スライムかー……欲しいなぁ」
「魔法が使えるスライムは高いが、生活魔法くらいのスライムなら安いぞ。水を出すとかしかできねぇが」
「おおおお、ダンさん、何処で買えます?」
「魔物協会に行けば自分にあった魔物を選べるが」
「スライムで良いです」
「そ、そうか。なら今から行くか? スライムも愛情込めて育てれば喋るっていうし」
「おお、今から行きましょう! でも金貨100枚で買えるかな。手切れ金って言って渡されたんですけど」
「クソ王太子……100枚もあれば大丈夫だ。明日には作って貰った鉱石の金も入る。よし、今から行こう」
こうしてキリが良いとこまで鉱石を入れてから一緒に行くことになり、案内された魔物協会は外にあった。何でも匂いが強いらしい。
そこで魔物協会のお姉さんに、スライムが飼いたいと伝えると「一度どの魔物と相性がいいかだけチェックしましょうね?」と笑顔で言われ、渋々通路の中へ入り、魔物たちが並ぶ中を歩いて行く。
反応するのはスライムや鳥系、なんとなく群れを成して生活する魔物が多い気がする。
そんな事を考えつつ最後に何やら弱っている魔物と出会った。
「この子は?」
「もうお爺ちゃんドラゴンなんですが……フェアリードラゴンって知りません?」
「知らないです」
「強さは余り無いんですが、貴族の護衛として連れている方は多いです。この子はお爺ちゃんのフェアリードラゴンで、力はあるんですがこの通りで……」
その言葉に簡単に鑑定を使うと【レジェンドフェアリードラゴン:性格は穏やか・人語を話せる・外に出たい(衰弱)・推定年齢400歳】と出て来てたので――。
「この子は産まれてからずっとここですか?」
「森で捕まってからもう100年? くらいかなぁ。フェアリードラゴンの入れ替えをしようって話になってて、でもこの子お爺ちゃんでしょう?」
「フェアリードラゴンの寿命って幾つです?」
「500年だと聞いています。でも大体そこまで生きませんね」
後100年もあるじゃない!! それにそこまで生きられない理由って何!?
と思っていると、やはり護衛として外に出る事はあっても、家の中にずっといると衰弱してしまうらしく、それで死ぬことが多いらしい。
「あの、このお爺ちゃん外に出たくて衰弱中なんです。入れ替えするなら飼っても良いですか?」
「まぁ……この子もう動きませんよ?」
「最後くらいは外でと思って……」
「お優しいテイマーさんですね。この子なら金貨1枚で良いです」
「ありがとう御座います。お爺ちゃん、一緒に外に出ようね?」
そう伝えると虚ろな目の燃えるように赤いドラゴンは顔を上げ私を見た。
すると脳に声が届く。
『お前さん、異世界人じゃな?』
『お? テレパシー?』
『いかにも。ふむ、ワシをレジェンドドラゴンだと教えんかったのは何故じゃ』
『お外に出たいんでしょう?』
『だからか?』
『そうだけど……それ以上に理由っている?』
『ふぉっふぉっふぉ……お前さん可愛いのう。良かろう、ついて行って護衛してやろう。契約じゃ』
そう言うと目の前に魔法陣が現れ、お姉さんは驚いていたけれど「手をかざしてください」との事だったので手をかざし、魔法陣に触れると身体の何処かがビリッと震えた。
「はい、これにて契約完了です。このお爺ちゃんはユリさんの従魔です」
「ありがとう御座います」
「後はスライムが欲しいんでしたね。ベビースライムが昨日生まれたばかりで見てみます?」
「みたいです! 選んでいいですか!?」
「どうぞー」
そう言うと籠を開き、衰弱しているお爺ちゃんを抱っこするとスリスリと顔を寄せて来て可愛くてギュッと抱きしめてから一緒にベビースライムのケースまで向かう。
目の前には小さなスライムが沢山いて、思わず「わぁ!!」と声が出てしまった。
すると、一匹のベビースライムが私に近寄ってくる。
『オネエチャン ボクト ケイヤクシヨ?』
『ほほう……こ奴もワシと同じレジェンドモンスターだぞ』
『え!』
『これで成体じゃ。鑑定は多分されまいが連れていけ。色々役に立つぞ』
『お爺ちゃん、了解です!』
「この近づいてきた子にします」
「その子ですね。ベビちゃんなので気を付けて育ててあげてくださいね」
「はい、契約はどうしましょうか」
「こっちから手をかざして【テイム】って言えば良いですよ。相手が応じたら仲間になります」
「分かりました。【テイム】」
そう言うと魔法陣が現れてから消え、身体にビリッと何かが走ると掌サイズのベビースライムの姿をした成体のレジェンドスライムを手に入れた。
「此処で従魔として登録できるので、名前を決めてあげてください」
「はい、えーっと……どうしよう」
「ユリや、ワシはお爺ちゃんでええぞ?」
「「わ!」」
行き成り喋り出したお爺ちゃんに驚いていると、「それは名前ではありません」とお姉さんに言われ、考えた末【ホムラ】と名付けた。
真っ赤な色が燃える炎のようだったからだ。
スライムの方は【タキ】と名付けた。
滝の色というか、そんなイメージが浮かんだからだ。
「ホムラにタキですね。登録しました。全て合わせて金貨50枚となります」
「うう、高い……でも我慢!」
こうして二匹の魔物を従魔にする事になり、ホムラは抱っこされたまま、タキは頭に乗ったまま外に出てダンさんの元へと向かう。
二匹も連れて来たので驚かれたが、事情を説明すると「外に出たかったのか」と言われ、「ユリは優しいな」と微笑むと一緒にまた倉庫まで歩いて帰った。
そして――。
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